最強ご主人様はスローライフを送りたい

卯月しろ

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第10章

VS原初④

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「ぐっ!?」


ズバッ!と胸に真一文字の閃光が走り、古代ローマ風の衣服ごと灰髪の少年の肉体に深い傷を刻む。
星が輝く夜空に赤色の鮮血が舞った。

原初の片割れたる少年はふらりとよろけたものの、何とか持ち堪えて再び体を起こした。
ギリッ、と歯を食いしばりノエルを睨む。


マシロと片翼の少女が切り結んでいる場所とは反対側の王城の上空。
こちらでもまた、原初同士が衝突していた。

少女とは対を成すような片翼を携えた少年は、同じく古代ローマ風の装束を着ており、その右手には紫色のシンプルな片手剣を握っている。

灰髪の隙間から覗く赤眼が怪しく輝いたかと思うと、あっという間に胸の傷が回復。
また懲りずに突撃を繰り返す。

"懲りずに"と言うのも、実は先程からずっとこんな感じなのだ。
斬られては回復し、また斬られては回復し。
いい加減にドMなのかとツッコミたくなるレベルである。

ノエルからすれば、なぜいつまで経ってものか不思議でならない。
なぜわざわざ、弱くなると知っていて二手に別れたのだろう。

かつての"聖魔戦争"にて、恐れられていたのはこの双子の連携だ。
まさに阿吽の呼吸と言うべき神がかった戦闘スタイルは、文字通り掛け算のように二人の戦闘能力を引き上げた。
相性の良いお互いの能力も相まって、ほか多数を押しのけてこの原初の座に君臨していた。

実際に戦った事のあるノエルだからこそ分かる。
あれはまさに強敵と呼ぶにふさわしい存在だ。

だが今はどうだろう。
色々と引っかかる点はあるし、本来の能力や姿に戻らず戦っている。
先程言ったように彼らの強みは連携にあるため、単体ではそこまで実力が発揮できないと本人達も分かっているはずだ。

……………いや、正確に言えば今は戻る必要がないのだろう。
どうやら今回の目的は戦うorマシロの抹殺ではないらしい。


何か企んでいるのかー?」
「くそっ、なんで当たらないんだよ………!」


愚痴と共に大振りで振り下ろされた剣を避け、拳の一撃でぶっ飛ばす傍らノエルは首を傾げる。
もし仮に目的が違うのではあれば、一体なんのために自分達の前に姿を現したのか。
デメリットもあったはずだ。

何かそれを帳消しにするほどのメリットが彼らにあったのか…………。
数秒の間、場を沈黙が支配した。


ポク……ポク……ポク………チーン!


「おい、何を………?」


最初は疑問符を浮かべ戸惑っていた少年だったが、これを好機と見てすぐさま攻撃を仕掛けてきた。
未だ首を傾げて動かぬノエルの首元に、剣の切っ先が吸い寄せられる─────────が。


「うむ、わからんのだぁー!」
「ぐはぁ!?」


綺麗なアッパーカットが少年の顎に炸裂。
これまた見事な放物線を描き、夜空へとカッ飛ばされた。


分からなかった。
うん、何も分からなかった。
考えすぎて頭から煙が立ち上り始めたので、ノエルは諦めた。
脳がショートしてしまったらしい。

結論、"難しいことはわからん!"
実に清々しい笑顔である。

やはり色々難しいことを考えながら行動するのは性にあわなかったようだ。

まぁ、この際理由なんてなんでも良いのだ。
最愛の人であるマシロと、自分と同じく彼をこよなく愛する少女達の幸せな生活の邪魔をした。
ぶっ飛ばすのにそれ以上の理由はいらない。

何を考えているかは分からないが、いずれにしろ大切な日常に害をなすことは確定。
ならば今のうちにボコボコにしておくに越したことはない。


片翼を羽ばたかせて復帰し、怒りを顕にしながら少年が斬りかかってくる。
振り下ろされた袈裟斬りを左手の手のひらで受け止め、そのまま引っ張って無理やりゼロ距離へ。
少年の顔が苦痛に歪んだ。

鳩尾みぞおちにノエルの拳がめり込んでいる。
さらに軽くジャンプしてからの逆回し蹴りが後頭部にクリーンヒット。
頭蓋骨からメキメキと嫌な音がした。

追い打ちをかけるように少年が落下する前に下に回りこみ、もう一度アッパーで体を浮かび上がらせ畳み掛けるように構える。


「"極滅神聖砲ゴッド・ストライク"!」


両の手のひらを向かい合わせ、そこに莫大なエネルギーが集束。
光がまたたき、次の瞬間、純白の極光が夜空目掛けて解き放たれた。

まるで霧を貫く灯台の光のように、漆黒の夜空を照らしどこまでも光は伸びる。
やがて徐々に細くなり、光の線となって消えるまで純白の光は四方で戦う者や魔物達でさえも魅了した。



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