207 / 405
第10章
10章エピローグ
しおりを挟む「マシロ殿、今回の件は本当に助かった。改めて礼を言わせてくれ」
庭園の一角に並べられた椅子に腰を下ろし、ルイスは紅茶を一口含んでから頭を下げた。
原初による王都襲撃から三日が経った。
死者約三十名、中央区の建物の一部が破壊、その他様々な被害を生んだ今回の事件。
あれだけの魔物が攻めてきたにも関わらず、この被害数はかなり少ないと言って良いだろう。
皆の努力があってこその結果だ。
……………しかし、それでも守りきれないものがあった。
"もっと早く対処していれば"。
そんな後悔が心にへばりつく。
ちなみに事件の首謀者たるバルガンの一族は爵位を剥奪され、そのままあっという間に没落したそうだ。
計画に加担したとして彼の父と母、弟は犯罪奴隷として未開地送り。
他にも関係者が複数人捕まった。
彼らは今も処罰を待って牢に閉じ込められている。
国のお金に手をつけた挙句、国家転覆まで計ったのだから当然の報いだろう。
これで一件落着…………………とは中々行かない。
と言うのも、実は肝心の動機が未だ不明のままなのだ。
何せ父母弟の証言はどれも的を得ず、どれだけ問いただそうが嘘が分かる魔法を使おうが、一切まともな事を喋らない。
どうも高位の存在によって記憶が改ざんされているらしい。
また使用人達も精神操作系の魔法で操られており、記憶は無く、おまけに首謀者は既に死んでしまったときた。
これはもう知りようがないだろう。
クロとイナリ曰く、バルガンは召喚したドラゴンに踏まれて死んだそうだ。
若干不憫と言いたくなるが、同情はしない。
館に何か残っていないかと探したものの、ご丁寧に痕跡は全て消されて何も残っていなかった。
それは荒野に現れた魔物達も同じで、残っていたやつらだけでなく死体も消えていたそうだ。
徹底してこちらに情報を与えないつもりらしい。
"立つ鳥跡を濁さず"の最悪なパターンだ。
唯一の成果と言えば、クロが討伐した古代種ドラゴンくらいだろう。
俺達が戦っている間、クロは時を同じくして漆黒のドラゴンを相手にし、その後はせっせと各地を回ってサポートに徹していたのだ。
街に甚大な被害が出なかったのはクロのおかげという訳だ。
まったく、普通の街中に古代種のドラゴンをぽんと置いてくなんて、何考えてんだあの原初達。
て言うかあいつだけ取り残されてるの、すごく可哀想なんだけど…………。
なぜに彼女らはエルダードラゴンだけ置き去りにしたのだろう。
巨大な氷塊の中で眠るように固まったドラゴンは、このまま研究対象としてここに運送されるそうだ。
ちょっと復活しないか心配ではあるが、まぁ責任者がフィーネさんらしいし、任せておいて問題ないだろう。
万が一があってもあの人なら大丈夫だと思う。
むしろ、若干………と言うかだいぶマッドサイエンティスト味がある彼女の実験とか関わりたくない。
聞かなかった事にするのが一番良い気がする。
…………それに俺達が気になっているのはそっちじゃなくて、忽然と姿を消した原初の方だ。
最後に少女を引き止めていたあの男。
ぬるっとした独特の気配……………あれはエルムに似ていた。
あの背筋がゾワッとして、変な汗が出てくる感じ。
確実にあいつは強い。
たぶんあいつも原初だ。
さらにノエルの方にも仲裁に入った人が居たらしく、その女性もまた──────。
女性は去り際に意味深な言葉を残した。
ちょっときな臭くなってきたな…………。
全く気配が追えないせいで、まだ何も行動できないのがすごく歯痒い。
「……………マシロ殿、どうかしたか?」
「ん?いや、何でもないよ」
俺がぼーっとしているのを気にかけてくれたルイスの言葉で我に返った。
おっと、申し訳ない。
まぁ出来ないものは悩んでも仕方ない。
気分を切り替え、先程から話していた話題を改めて進める。
「そうか………。それで、マシロ殿が望んでいた報酬の話なんだが………」
「ああ、どこか良さそうな場所見つかった?」
俺がこの依頼、"エイナの護衛"を受けるにあたって、ルイスがうちに来た時にとある要求をしていた。
それがあったからこそ今回引き受けた訳だが、どうやらその準備が整ったらしい。
「場所はオルメストとジパングの中間。我が王家が所有するプライベートビーチの一つだ」
37
あなたにおすすめの小説
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる