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第13章
高熱②
しおりを挟む「じゃ、辛くなったら遠慮なく声かけるんだぞ」
「はい……おやすみです………」
「おやすみ」
ベットの上で力なく手を振るイナリに手を振り返してから、そっと部屋のドアを閉める。
食事やお風呂代わりの体拭きを終えたので、再びお休みタイムだ。
絶対安静であると共に、本人もその方が楽というのもあって、最近イナリは寝てる時間がとても多くなった。
それこそ食事とか細々としたことを除けば、ほとんど寝ているのではないだろうか。
それでも体調が、全くと言って良いほど良くならないんだから不思議だよなぁ………。
余程根深い疲労なのか、それとも別に理由があるのか。
なんか日が経てば経つほど症状が悪化してるし、また明日起きたら熱が上がってたとかやめて欲しい。
本当にこれ以上は俺の心臓が持たない。
既に心配すぎてはち切れそうだ。
……………ううむ、これがフラグにならない事を祈るしかあるまい。
「ご主人様、イナリさんのご様子はどうでしたか………?」
「また熱が上がってたよ。でも喋る余裕は少しあったみたい」
「そうですか………心配ですね」
リビングに戻ると、今までソワソワしていた皆が一斉に集まってきた。
皆、イナリの容態を心の底から心配してくれている。
何と言うか、嬉しいことだ。
改めてイナリの好かれっぷりと、皆の仲の良さが垣間見えた。
「イナリ、大丈夫かしら………」
「ん、大丈夫。残念キツネは強い。残念だけど」
「そこの評価は変わらないのね…………」
「当然」
そんなに断言しなくても………、と若干苦笑い気味のミリア。
クロにはどうやら譲れない何かがあるらしい。
出会ってからずっと"残念キツネ"という謎のワードを使い続けている。
一見これだけではまだイナリの実力を認めていないようにも取れるが、"強い"との発言の通り、ちゃんと認めているのだ。
実力も、もちろんそれ以外も。
だから大丈夫と断言する。
イナリがすぐに治ると確固たる確証を持って。
「主様。先程お願いされていたもの、シゼルさんからお借りしてきましたよ」
「お、ありがとう。助かった」
思い出したようにリーンから渡されたのは、一枚の紙で作られたプレートのようなもの。
学校の保護者会で親が付けてるようなやつ、って言った方が分かりやすいかな?
あんな感じの札。
ちゃんと首にかける用の紐まである。
横長の長方形の表には"Xランク冒険者マシロ・ユメサキ"の文字と、その下段に"特別閲覧許可書"と書かれていた。
Xランク冒険者の特権の一つ。
冒険者ギルドが保有し、貸出や閲覧を自由にしている大量の書物達。
魔物図鑑や神話、魔法書を始め、動物や植物の図鑑。
辞典に昔話など、多種多様ねそれらが置かれている図書館的な場所の出入り自由。
またそこには置かれていない、ギルド秘蔵の書物の閲覧などが出来る特別なパスポートだ。
秘密の秘匿と言う意味でもあまり大勢に配ることが出来ず、唯一Xランクにしか発行されていない。
ギルドへの貢献度や秘密を守る信頼性、それに伴った実力、そして今後ともギルドへ与えうる利益も考えられている。
そのためあまり不要に使うものでもないのだが…………今回は非常事態だ。
ありがたく使わせてもらうとしよう。
「じゃあ、ちょっと行ってきます。イナリを頼む」
「はい。お任せ下さい」
「マシロ、行ってらっしゃいなのだー………」
一人平常運転で眠たそうに目を擦っているノエルとアイリスに見送られ、俺は家を出た。
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