最強ご主人様はスローライフを送りたい

卯月しろ

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十八章

幼女の正体②

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『クルルルゥ♪』
「みゅわあ~っ!フランちゃんすごいの~!」
「あっ、スゥちゃん!?あんまりはしゃぎ過ぎちゃ危ないですよ~!」


プラトスのフランに跨り爆速で草原を駆け抜けるスゥを、アイリスは慌てて追いかける。
何か器具や補助する道具などは一切ないのだ。
下手をすれば途中で投げ出されてもおかしくは無い。
一応その辺はフランも気を使っているようで、最高速度ではない&かなり安全運転にしてくれているのだが………にしてはスピードが速すぎる。


「スゥは今、風になるの~!」
『クルアアアッ!』


あわあわして見守るアイリスとは対照的に、プラトスを乗りこなすスゥの表情は満開の笑顔だ。
大人がハラハラすることほど子供が楽しそうにしてるのは、やはり万国共通らしい。


「あはは、スゥちゃん大はしゃぎですねぇ」
「ん。可愛い。あの笑顔は反則」
「ですです。なんで子供ってあんなに可愛いんでしょうね~……」


家の横に設置された水場のそばでは、イナリの太ももの上にでろんと横になったクロが、イナリによって毛繕いされていた。
さながらふてぶてしい飼い猫のように。
専用のくしでピコピコ動く耳を優しい手つきで整えていく。


「クロさん、またちょっと毛が伸びました?」
「ん。最近、抜け毛も多い。そろそろ換毛期?」
「時期的にありえますね」
「イナリはまだ来ない?」
「はい、今のところは……。ちょっと遅めなんですよ、毎年」
「そう。………じゃあ、交代」
「はいです!」


クロの毛繕いが終わったので、次はイナリの番。
いそいそと移動して今度はクロの太ももの上にイナリがうつ伏せに寝転んだ。
サイズ差のせいでかなり面白い状態になってしまっているが、そこはご愛嬌。
いつも通り押し付けられた柔らかい感触ももはや無我の境地で無視。
同じようにまずはイナリのフサフサの尻尾から毛繕いを始める。




─────そんな微笑ましい光景を眺めながら、大きめのパラソルの下で長椅子に腰掛けた俺は再び二人に問う。


「スゥが"原初の悪魔"の娘ってのは……もう確定なの?」
「うむ。気配や容姿からして、奴をそっくりそのまま小さくした感じじゃ。"レイ"とやらが他者の精神に、ご主人様が話していた精度で干渉できる技量を考えても、違いあるまい」
「まだ未覚醒ではあるが、権能もしっかりと引き継いでいるのだ。ワタシ達"原初"の目は誤魔化せないのだ」
「そうか……」


原初の悪魔。
名はレイラ。
猫又であるセンリの能力、〈千里眼〉で過去を覗いた時に彼女についても少し知った。
彼女こそ聖魔戦争の引き金であり、ノエルや原初の魔王であるエルムと敵対し世界を支配しようとした諸悪の根源。
己の眷属や国民さえも手にかけた残虐非道な悪魔の王。

世間での認識はこんなものだ。
実際に過去を見た俺としても否定できる要素はあまりない。
国民を想い戦う優しい女王レイラと、長年使えた眷属を冷酷に殺した狂気の王レイラ。
彼女の本心は一体どちらだったのだろう。

……本当にレイとレイラが同一人物だと言うのなら、俺はあの時のレイが演技をしているようには思えなかった。
だから、前者がレイ……レイラの本質だと信じたい。


「………この件なんじゃが、どうやら妾達は重大な勘違いをしておったようじゃ」
「勘違い?」
「うむ。あそこまで豹変した時点で気付くべきだったのだ。……マシロ、マシロはレイラを信じているか?」


二人が何に納得しているのかは分からないが、俺の胸によりかかり逆さまで俺を見上げるノエルの問いには迷うことなく答えられる。


「信じてるさ。あのレイが悪人なもんか……」
「ふふ。ならそれを貫けば良い。何があってもマシロにはワタシがついてるのだ」
「ああ。頼もしいよ、ノエル」
「わはは、当たり前なのだ!」
「これっ、妾を忘れてもらっては困るぞ!」



原初の悪魔レイラについて、二人にも何らかの考えがあるらしい。
それは、あれだけ敵対したラスボスの娘を引き取り、家族として迎え入れるくらいには重要なことのようだ。
俺にはまだそれは分からない。

しかしいずれレイに合えば、これらの謎は全て解けるだろう。
約束だってしたしな。


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