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『物語』
君が僕にくれたのは、思い出が透けて見える金平糖でした。
「はい、あげる!」
そう言って渡されたのは空にある星をそのまま小さくしたような可愛らしい金平糖。
「なんだよ。」
突然の事で、それしか言えなかった。それでも彼女は負けじと言う。
「金平糖だよ!君、もうすぐ誕生日じゃん!」
「誕生日って言っても、あと一ヶ月も先な。というか、なんで金平糖なんだよ。」
俺の誕生日は一ヶ月も先。そしてなぜ金平糖なのか…。
「教えてあげよう!なぜ金平糖なのか。」
「それはね、金平糖は思い出が透けて見えるんだよ!」
彼女は自慢げにそう言った。思い出が透けて見える…ねぇ。
彼女は付け足すようにまた言う。
「ひとつ食べれば、思い出がひとつ。もうひとつ食べれば思い出がもうひとつ。食べれば食べるだけ、思い出が透けて見えるんだよ!」
透けて見えるというのはどうなのだろうか。思い出ははっきり鮮明に覚えているからこそ、思い出というのではないだろうか。
例えば、昔あの子はこう言ってたな。と思っていても、他の人が違うといえば、それはもう、うろ覚えであり『思い出』ではないのではないか。そういったことをぐるぐると考え続けていた時に彼女は言った。
「ほんとだよ。透けて見えるんだよ。悲しいくらい、幸せな思い出が。」
そう言う彼女は、どこか悲しそうで、でもどこか幸せそうな笑みを浮かべていた。
「じゃあね!またいつか!」
「おう。」
そう言われた時に、疑問に思うべきだった。『またいつか』いつもなら、『またあした』と言うのに。
翌週から、彼女は学校に来る頻度が愕然と減った。理由を聞くと
「体調がおかしいんだよね」
と、ヘラヘラして言う。
その次の週には、ぱったり来なくなった。俺は、彼女の家に見舞いに行った。でも、彼女は家にはいなかった。彼女の母親が言うには彼女は、病気なのだと言う。それも、治るか治らないかも分からない病気。俺は言葉を失ってしまった。彼女の母親に教えてもらい、彼女のいる病院に行く。病室の扉を開けると彼女はこういった。
「…見つかっちゃった…。」
また、どこか悲しそうで、どこか幸せそうな笑みを浮かべて。また彼女は言った。
「隠すつもりはなかったんだよ!?ただ、いつ言えばいいのかわかんなくて、言えなくなっちゃって…。」
あぁ、俺は気づいてやれなかったんだ。気づかなかった俺が悪いんだ。
「いつから…いつからだったんだ。」
そう問いかけると彼女はバツが悪そうに
「えっと…ね。一年ぐらい前から、かなぁ…。」
一年前までは、病気の進行はそれほどでもなく、なんなら、治ってしまっているのではないか、という程だったらしい。
「あの、ね。ずっと、言いたいことがあって…!」
彼女は少し頬を赤らめて言う。
「あの、ね!ずっと友達でいてくれてありがとう!君がいたから、毎日頑張って生きようと思えた。君がいたから、死にたいと思った日も、苦しい日も、乗り越えられた。」
…俺は…
「俺は、そんなに凄い奴じゃないよ…」
そう。俺は…そんなに凄い奴じゃない。彼女の方が…よっぽど凄い。どんなに苦しい日も、笑顔をで苦しそうな顔を見せない。それに比べたら俺は…
「ううん。私にとっては、ヒーローだよ。君の笑顔が、君の言葉が全部、私を救ってくれた。だから、ありがとう。」
彼女は、悲しそうで、でもどこか幸せそうな笑みを浮かべて言った。なんだよ、それ。まるで死ぬことが前提みたいじゃないか。ふざけるな。
「ふざけるな…。俺は、お前とこれからも毎日を共に過ごすんだ。そんな死ぬことが前提みたいなこと言うな。」
俺はハッとして彼女を見る。案の定、彼女は目を見開いて驚いている。
「えっ、あ、いや…!」
なにか弁解を、と思ったが突如、彼女が笑い始めた。
「ほんとに!君、そういうところだよ!」
唖然とする俺に、彼女は言った。
「確かにそうだね!生きる希望を持たなくちゃね!」
俺と彼女は笑い合う。
こんな時が、ずっと続くと思っていた。彼女は、1週間もせずこの世界からいなくなってしまった。この世界から、またひとつ命が消えてしまった。
彼女がいなくなってからの俺は、何をするにもやる気が出ず、気づけば
「…だよな。あ…。」
そうだ、彼女はもういないんだ。俺の隣にも、どこにもいない。
「大好きだったよ。」
そう呟いて、今日も重い足を
「『家へと運んでいく。』ねぇ。へー。」
「ちょ、ちょっと!やめてよ、恥ずかしいから!」
《俺》は、本を頭上に上げ、《彼女》はぴょんぴょんと飛び跳ね本を取り返そうとする。
「ったく。なんでお前が死んだ設定で、しかも俺も登場してんだよ。」
そう、これは俺と彼女の『昔』の物語だ。
「…いいじゃん別に!それよりも、賞とったんだから、褒めてよ!」
そう。彼女はこの『昔』の話をアレンジして書いた話が賞をとったのだ。
「この物語の死んだ『彼女』と、ひとりじゃない『俺』は結婚しちゃってますけどねぇ。」
そう、彼女の病気は治ることが判明し、最新の治療を受けるためアメリカに行き。完治して帰ってきたのだ。
帰ってきた彼女に、俺は想いを伝えはれて結ばれたのだ。
「…でも、治ってよかったよ。ほんとに。」
「…うん。ありがとう。愛してる!」
そう。俺たちの物語は、まだまだこれからなのだ。
「はい、あげる!」
そう言って渡されたのは空にある星をそのまま小さくしたような可愛らしい金平糖。
「なんだよ。」
突然の事で、それしか言えなかった。それでも彼女は負けじと言う。
「金平糖だよ!君、もうすぐ誕生日じゃん!」
「誕生日って言っても、あと一ヶ月も先な。というか、なんで金平糖なんだよ。」
俺の誕生日は一ヶ月も先。そしてなぜ金平糖なのか…。
「教えてあげよう!なぜ金平糖なのか。」
「それはね、金平糖は思い出が透けて見えるんだよ!」
彼女は自慢げにそう言った。思い出が透けて見える…ねぇ。
彼女は付け足すようにまた言う。
「ひとつ食べれば、思い出がひとつ。もうひとつ食べれば思い出がもうひとつ。食べれば食べるだけ、思い出が透けて見えるんだよ!」
透けて見えるというのはどうなのだろうか。思い出ははっきり鮮明に覚えているからこそ、思い出というのではないだろうか。
例えば、昔あの子はこう言ってたな。と思っていても、他の人が違うといえば、それはもう、うろ覚えであり『思い出』ではないのではないか。そういったことをぐるぐると考え続けていた時に彼女は言った。
「ほんとだよ。透けて見えるんだよ。悲しいくらい、幸せな思い出が。」
そう言う彼女は、どこか悲しそうで、でもどこか幸せそうな笑みを浮かべていた。
「じゃあね!またいつか!」
「おう。」
そう言われた時に、疑問に思うべきだった。『またいつか』いつもなら、『またあした』と言うのに。
翌週から、彼女は学校に来る頻度が愕然と減った。理由を聞くと
「体調がおかしいんだよね」
と、ヘラヘラして言う。
その次の週には、ぱったり来なくなった。俺は、彼女の家に見舞いに行った。でも、彼女は家にはいなかった。彼女の母親が言うには彼女は、病気なのだと言う。それも、治るか治らないかも分からない病気。俺は言葉を失ってしまった。彼女の母親に教えてもらい、彼女のいる病院に行く。病室の扉を開けると彼女はこういった。
「…見つかっちゃった…。」
また、どこか悲しそうで、どこか幸せそうな笑みを浮かべて。また彼女は言った。
「隠すつもりはなかったんだよ!?ただ、いつ言えばいいのかわかんなくて、言えなくなっちゃって…。」
あぁ、俺は気づいてやれなかったんだ。気づかなかった俺が悪いんだ。
「いつから…いつからだったんだ。」
そう問いかけると彼女はバツが悪そうに
「えっと…ね。一年ぐらい前から、かなぁ…。」
一年前までは、病気の進行はそれほどでもなく、なんなら、治ってしまっているのではないか、という程だったらしい。
「あの、ね。ずっと、言いたいことがあって…!」
彼女は少し頬を赤らめて言う。
「あの、ね!ずっと友達でいてくれてありがとう!君がいたから、毎日頑張って生きようと思えた。君がいたから、死にたいと思った日も、苦しい日も、乗り越えられた。」
…俺は…
「俺は、そんなに凄い奴じゃないよ…」
そう。俺は…そんなに凄い奴じゃない。彼女の方が…よっぽど凄い。どんなに苦しい日も、笑顔をで苦しそうな顔を見せない。それに比べたら俺は…
「ううん。私にとっては、ヒーローだよ。君の笑顔が、君の言葉が全部、私を救ってくれた。だから、ありがとう。」
彼女は、悲しそうで、でもどこか幸せそうな笑みを浮かべて言った。なんだよ、それ。まるで死ぬことが前提みたいじゃないか。ふざけるな。
「ふざけるな…。俺は、お前とこれからも毎日を共に過ごすんだ。そんな死ぬことが前提みたいなこと言うな。」
俺はハッとして彼女を見る。案の定、彼女は目を見開いて驚いている。
「えっ、あ、いや…!」
なにか弁解を、と思ったが突如、彼女が笑い始めた。
「ほんとに!君、そういうところだよ!」
唖然とする俺に、彼女は言った。
「確かにそうだね!生きる希望を持たなくちゃね!」
俺と彼女は笑い合う。
こんな時が、ずっと続くと思っていた。彼女は、1週間もせずこの世界からいなくなってしまった。この世界から、またひとつ命が消えてしまった。
彼女がいなくなってからの俺は、何をするにもやる気が出ず、気づけば
「…だよな。あ…。」
そうだ、彼女はもういないんだ。俺の隣にも、どこにもいない。
「大好きだったよ。」
そう呟いて、今日も重い足を
「『家へと運んでいく。』ねぇ。へー。」
「ちょ、ちょっと!やめてよ、恥ずかしいから!」
《俺》は、本を頭上に上げ、《彼女》はぴょんぴょんと飛び跳ね本を取り返そうとする。
「ったく。なんでお前が死んだ設定で、しかも俺も登場してんだよ。」
そう、これは俺と彼女の『昔』の物語だ。
「…いいじゃん別に!それよりも、賞とったんだから、褒めてよ!」
そう。彼女はこの『昔』の話をアレンジして書いた話が賞をとったのだ。
「この物語の死んだ『彼女』と、ひとりじゃない『俺』は結婚しちゃってますけどねぇ。」
そう、彼女の病気は治ることが判明し、最新の治療を受けるためアメリカに行き。完治して帰ってきたのだ。
帰ってきた彼女に、俺は想いを伝えはれて結ばれたのだ。
「…でも、治ってよかったよ。ほんとに。」
「…うん。ありがとう。愛してる!」
そう。俺たちの物語は、まだまだこれからなのだ。
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