ち○○で楽しむ異世界生活

文字の大きさ
3 / 111

3 情報

しおりを挟む
 手帳とペンはポケットに入っていたのでサーシャの話を聞き、必要ならメモをする。
 地図の提供は断られた。軍事情報に値するものなのかもな。
 国の特産品はジャガイモと木材に石灰。それを別の国に売って他の国から必要な物資を手に入れているそうだ。貴金属の類は発見されていない。
 鉄が見つかっていないので製鉄の技術は弱く、それゆえに国家としての軍事力も弱い。
 南北にある大きな山に囲まれていてそれらが天然の砦として機能している。
 東西南北に巨大な国家がありそれらの国家が虎視眈々と狙っているが、今のところこの国には手が出せないということらしい。どこか一国がこのペテルグを侵略したとしても(以前そういうことがあったそうだ)、他の三つの国がここを解放し、結局のところ傀儡に近いかたちでこの国は存在しているようだ。
 うーむ・・・国ガチャで思い切り残念なやつを引いたようだ。

 「あの・・・アラヒト様。ひとつ質問してもよろしいでしょうか?」
 「いいよ。どうしたの?」
 「その・・・紙に書かれている記号は何なのでしょうか?」
 「俺の居た国の文字だ」
 「・・・モジ・・・とは?」
 は?
 改めて定義を聞かれると難しいな。
 「こうやって言葉は話せるよね?」
 「はい」
 「この言葉を記号にして落とし込んだものが文字」
 俺はメモを少し暗唱した。
 「凄いものですね・・・憶えるのではなく記録するための記号があるとは」
 いや・・・ちょっと待て。
 「ペテルグでの出来事や歴史をどうやって記録しているの?」
 「耳にしたり聞いたりしたことを記憶しています。あとはわらべ歌などですね」
 文字が無いのか!いや、俺が居た世界でも文字を持たない人たちがいたが・・・あれは国という単位などではなく少数民族だったはずだ。
 「税金の徴収はどうやっているの?」
 文字もなしに。
 「物納ですから、獲れた分から収められるだけ王家に納めます。あとは私のように労働力でお仕えすることもあります」
 ザル過ぎるだろう。国が弱まるワケだ。
 「他の国でもそうなのか?」
 「書き言葉というものがあるそうですが、それがアラヒト様が言う文字に当たるかもしれません」
 
 少しずつ分かってきた。この国は外敵によって教育機会を奪われたのか。
 国を弱体化させるには無知な人間を量産すればいい。
 「7足す8は分かるか?」
 「15ですよね。」
 「78引く65は?」
 「10より大きな数字は・・・専門家でないと分からないかと」
 「それは他の国でもそうなのか?」
 「貿易国家であるリーベリではそういう計算も民間人ができるとは聞いております」
 文字・・・それに数字か・・・数学・・・
 「サーシャ。今から俺は異世界の道具を使う。集中力が必要になるから、ちょっと外に出ていてもらえないか?」
 「一人にならないと使えないもの、ということでしょうか?」
 「議論している時間も惜しい。この道具はあと数日のうちに使えなくなってしまう」
 不満げだが、承知しましたと言ってサーシャは出ていった。なにかしらこの部屋を監視する目はあるだろう。にしてもやっておくことがある。

 俺はスマホの電源を入れた。残りのバッテリーは60%。使いどころはここしか無いな。
 電卓アプリを起動してスマホを横にすると関数電卓になる。
 俺は片っ端から数字を入れていき、関数表を作り出していった。
 三角関数の値が分かれば、回転する機械類の製作もできるだろう。正確な測量も可能だ。投擲武器も作れるかもしれない。
 俺は時間を忘れて関数表を作り出した。バッテリーはもう残っていない。
 これで俺のスマホはただのガラクタになったわけだ。
 
 おそらく諜報員として高度な教育を受けて来たであろうサーシャでさえ文字を知らない。
 文字と数字が無い国家、ペテルグか。
 ざっくり俺が居た時代から千年前というところか。
 関数表ができたところで俺は服を脱ぎ、疲れて寝てしまった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...