ち○○で楽しむ異世界生活

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8 宰相

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 うーむ・・・この国には足りないものが多すぎるな。
 文字、数字、それに計算手法か。複式簿記でもしっかりと憶えていたら税制まで手を付けられたが、ああいうのは事務の専門家に任せていたからなぁ。
 食料、人口、希少金属などの資源。特に鉄があまり多くないというところが内政・軍事両面でよろしくない。隣接国と比較してダブルスコア・トリプルスコアではいかんともしがたい。木製武器だけで防衛戦などできないし、食糧も嗜好品の多くは他国に依存している。対等な防衛戦ができて、経済戦に持っていければ勝算もあるのだろうが。というよりも、状況を整理していくとほぼそこしか勝算が無いカンジだなぁ。
 「この国が輸出しているものはなんですか?」
 「木材、石灰、茶器ですね。石灰はこの大陸でも採れる場所が限られています」
 焼き物を特産品として出せるということは、たぶんレンガも手に入るだろうがそれは今後の話だな。なによりも先に欲しいものは防衛力。次に経済力だ。
 
 「アラヒトさん個人で欲しいものは無いんですか?」
 「甘さ控えめな強い酒とタバコですね。あと葡萄酒があれば欲しいです。酒は色んな種類のものが欲しいですね」
 「タバコを嗜まれるのですか・・・高価ですがご用意しましょう」
 この世界にあるのか。手持ちもわずかしか無かったので助かった。
 「あとはすきま風がどうにかならないでしょうかね?」
 「宮殿も相当にガタが来ていますからね。我々としてもそこまで予算を割ける状態ではないのです」
 ざっくりと財務状況を聞いたが、国家の破たんまでカウントダウン中っていうところか。次にどこかが戦争を仕掛けてきたら王室ごと解体されそうだ。属国にしづらいという地政学的な理由からかろうじて生きているだけの、もと国家というところか。
 だいたい異世界に来たら、もっとこう、魔法とかでパーッと勝算しかない勝負になるんじゃないのか?
 今のところ勝てる要素が見つからない。
 現代知識で無双しようにも、あまりに古い時代に送られてしまったな。

 ・・・ん?
 異世界か・・・
 「私がこの国に来るってなんで分かったんですか?」
 「預言者様がいますから。預言者様は精霊の声を聞くことができます。おそらくこの国を救ってくれる男性が出てくるだろうという神託でした。この大陸ではだいたい精霊を信仰していますよ」
 そういう職業の人がいるのか。
 「その預言者の方って予言以外にはなにか特別な力は無いんですか?」
 「精霊の声を聞いて、少し先の未来を予言できます。ですが精霊が教えてくれる未来だけですね」
 うーむ・・・軍事的に使えそうな感じでは無いなぁ。魔法でドカンと無双できたらラクでいいと思ったのだが、思っていたやつと違う。そもそもどこの国にも預言者と呼ばれる精霊の声が聞こえる人というのはいるそうだ。
 「遅くなりましたし、本日はこれで失礼します。興味深い話が多かったのでついつい長居してしまいました。明日は非公式会合でこの地図について話し合うことになると思います」
 「分かりました。ところでその預言者って方に会えますかね?」
 「明日の会議後に会えるように、私が手配しておきます」
 そばに居たサーシャがその辺の仕事もやってくれるようだ。
 土地、資源、労働力と思っていが、まずは人だな。どういう人がいるのか分からないと、なにが作れてなにが作れないのか分からない。
 
 カラシフが帰ってすぐに使いが来て、強めの蒸留酒をもらった。
 木製だが薄い飲み口のショットグラスまでついていた。酒飲みが考えるよい酒器というものは、だいたい世界が変わっても同じようだ。
 「入れ物はガラス製ですか。超高級品ですね・・・カラシフ様もよほどアラヒト様が気に入ったものだと思われます」
 ああそうか。こういう世界では贈り物ひとつで気持ちが推測されることもあるのか。部屋には王宮なのにガラス窓すらないのだ。ガラス自体が高級品なのだろう。
 「俺が誰かにものを送る時、なにが適切なのか教えてもらえるかな?」
 「私はこういうものはあまり向いてはいないのです・・・あとで部下を紹介します」
 専門の人間が必要になるくらい贈り物は重要だという言い方だな。となると、俺がなにを受け取るのかということも問題になってくるのか。
 「サーシャ。仮に俺が他の国からなにかをもらったとしたら、どうしたらいい?」
 「断ることはできませんね。贈り物を断ることは非常に無礼な行為に当たるので、外交問題となるかと。処分に困るようでしたら私が適切に処分します」
 特別に俺の対人スキルが低いというわけではないが、けっこう厄介な話になりそうだ。ものを貰ったら借りになってしまうし、断れないのか。

 「一人で飲んでもつまらない。サーシャ、酒はいけるか?」
 「嗜む程度でしたら」
 サーシャを椅子に座らせ、机の上にはグラスを二つ並べて酒を注いだ。
 だいたい想像していたが、ウオッカに近い香りだな。
 「麦か、ジャガイモかな」
 「麦でしょう。最高級品です」
 いい女と飲む酒というのは本当に気分がいい。
 気分がいいついでに一本だけ吸うか。
 「火に強い小皿のようなものはある?」
 「でしたらこちらで」 
 あかり用の油をいれるような小皿を出してきたので、それを灰皿にした。
 あー、落ち着く。女、酒、タバコ。これのために生きているようなもんだ。

 「さっきの預言者の話なんだけれど、他の国の預言者は俺が出てくることを予言していると思うか?」
 「・・・精霊というのは土地土地に住むものだと教えられました。ですから他の国にいる精霊が他の国で起こることを教える、というのは考えづらいです」
 なるほど。国内での出来事は教えられるが、国外のことは分からないと。
 とはいってもお触れが出てしまっているから、他の国にも俺の存在は知られてしまっているだろう。まぁお触れも出さないで他の国に異世界人を掻っ攫われるよりかはマシだったのだろうな。
 俺はグラスを空けてもう一杯注いだ。
 「まだ飲む?」
 「いえ・・・あまり強くはないので・・・」
 明日は午前に王族との会議と午後に預言者との面会か。
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