ち○○で楽しむ異世界生活

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24 召集

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 カラシフ宰相にリーベリへの木材輸出の継続を提案し、戦争を回避するように進言した。値上げはせずギリギリ払える範囲で抑える。リーベリから金貨が消えたら戦争になるかもしれないが、それまで延命できたら十分だろう。金貨が消えたら鉄を提供してくるかもしれない。
 軍の方の根回しはムサエフ将軍にやってもらった。もともとリーベリが攻めてくるという話自体が軍では少数派だった。木材輸出で戦争回避ができるのであればチュノスとの防衛戦に集中できる。悪くは無い話だろう。

 カラシフと話していると次から次へと質問やら問題が湧いて来る。
 片っ端から話し合い、片っ端から解決策を示す。文字の普及も想像以上だったようだ。記憶官が居ないような会合でも記録が残るという点が、特にカラシフのお気に入りだった。
 内政は本当に時間がかかる。数年で普及するものもあれば、数世代をかけて作るしかないようなものもあるだろう。だが防衛力を上げて国土を守っているあいだに内政が充実し、国内経済が発展すれば、ペテルグは山に囲まれた土地を活かして防衛戦に勝利し続け他国と比するだけの力を持つようになるだろう。

 とっぷりと暮れた王宮だ。いつもカラシフと話していると深夜になるな。虫の音が変わってきた。もうすぐ秋か。
 邸宅に帰ろうかと思っていたら神官らしき人が近づいてきて、預言者様が呼んでいると伝えられた。
 「こんな深夜にですか?」
 「預言者様は眠りません。できるだけ早くお話がしたいそうです」
 うーん。今までやってきた話の中で、なにか天災の引き金になりそうなものはあったかな。
 「サーシャ。行ってくる。今夜は王宮に泊まるだろうから、宿泊室で待っていてくれ」
 「承知しました」
 なんの用だろうなぁ。

 「久しぶりですね、アラヒト」
 「そんなに経ちましたか。お久しぶりです、預言者様」
 王宮に来たら内政に関する話ばかりをしている。結果として預言者様とは疎遠になっているし、王妃や王とも疎遠になっている。まぁ実務者同士で話し合っているのだから、トップと話す時など結果を出したときだけでいいだろう。勝手に会いに行ったり話に行ったりしてもいいものか分からないしなぁ。
 「王宮に来たらたまには私に会いに来なさい」
 「今後はそうさせてもらいます」
 手ずから濃いめの紅茶を出してくれた。この深紅の瞳が美しくも恐ろしいんだよな。紅茶をすすりながら、なんの話で呼び出されたのか待つことにした。
 「リーベリ近くの岩山に人が入りましたが、あれはアラヒトが考えたことですか?」
 「ええ。道に石を敷けば高速で物資も軍も輸送できるようになるので」
 「山の表面で起こることは私にも精霊にも分かります。ですが山の中のことまでは精霊も知らなければ私も分からないのです。山を穿つというのはどういう結果をもたらすか私にも分かりません」
 採石について懸念しているということか。
 「私が居た世界では山を掘って資源を得るというのはわりと普通のことでした。安全第一に石を掘っていけば問題ないかと思います」
 「精霊たちが嫌がるようでしたら早めに教えましょう。いまは調査だけの段階のようですが、本格的な軍事行動となったら軍の担当者にも教えます」
 「そうしていただけると助かります」
 あまり岩山で採掘作業をやっている時に山自体が崩れるという話は聞いた記憶が無い。ガスが出たりはするだろうが、その辺は注意しながらやればいいことだ。

 「リーベリで思い出しましたが、あの国では預言者様はいないのですか?」
 預言者様がいたら木材を輸入するほどに燃料を使いまくるということは考えられない。
 「・・・リーベリの預言者のことばは軽んじられている、という噂だけは聞いています。土地の精霊の話すら聞けなくなるほど利を追及してしまった結果でしょうね」
 預言者様の扱いは国によって違うということか。
 天災を未然に防げるようなアドバイザーなど人知を超えた力じゃないか。国がそれを手放すほどの理由がリーベリにはあったということか。
 「リーベリの発展は予言者や精霊の教えに背いたからだと言うこともできます。昔はただの漁村でしたのに、今では大発展を遂げたと思われているのです。ですが、それは上辺だけのものですね。土地との調和無くして繁栄などありません」
 ぐうの音も出ないな。
 おそらくリーベリは死にかけている。国が滅んだあとも民が生き残るには、おそらくペテルグを吸収するかペテルグに吸収されるかのどちらかになるだろう。他の国から木材を輸入できない理由も地政学的あるいは政治的な理由があるのか。

 「あら。精霊が女性の匂いに喜んでいますね。この世界の女性を相手にするのは楽しいですか?」
 「生きていて良かったという感じですね」
 前の世界の俺は刺されて死んだと思うけれど。預言者様はツボに入ったようで微笑んでいる。
 「なにやらアラヒトには特殊な性の技術があるようですね。この世界には無いもののようです。精霊もそれを喜んでいますよ。民の喜びが精霊の力になりますからね」
 セックスで女性がイケば精霊も喜ぶのか。俄然やる気スイッチも入ってくるな。
 もう一人も仕上げの段階に入っている。これで諜報員の試験教導も終わりだ。彼女たちのケースが上手く行ったら本格的に俺が諜報員の教導に関わることになる。俺のハーレムはまだ遠いな。

 「そろそろあなたを解放してあげましょう。夜も深まりましたし」
 急いで呼ばれた理由が分からないな。岩山の件など明日明後日でも良かったはずだ。
 「なぜ急いで呼ばれたのでしょうか?」
 機嫌がよかった預言者様の顔が真剣になった。だから緋の目が怖いんだよ。なにもかも見透かされているみたいで。
 「・・・あなた、武器を作っていますね?」
 「ええ。ペテルグを外敵から守るためです」
 「それはそれで仕方がありません。人の世では精霊たちだけではまかり通らない事もあるのですから。ですが、あなたが作ったもので人の血が流れたその時から、私はあなたに会うことはもうありません。精霊たちがあなたに染みついた血の匂いを嫌いますからね」
 そうか。俺は彼女に直接会うことができなくなるのか。
 この場の緊張感は俺をたしなめるようで嫌いではなかったのだけれどもな。
 「まだ時間はあるでしょう。その間に私に会いに来なさい。私も別の世界のことを知りたいですし、精霊たちもそれを望んでいるはずです」
 「分かりました。またお茶をご馳走になります」
 精霊同様に異世界人の話もまた重要なのだろう。
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