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41 論功
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「では会議を始めます」
カラシフ宰相が司会となり今回の防衛戦の総括を行うこととなった。王と王妃、カラシフ宰相とムサエフ将軍、俺とサーシャだ。
「敵数が約2500でした。うち1000人死亡、700人を捕虜とし、残りはチュノス国へと逃げ帰ったと思われます。王が捕えた将校も怪我はしていますが捕虜交換に使えます。王家直轄軍の捕虜が生きていたら捕虜交換で1000人くらいは戻って来られる計算となりますね。チュノス国境の砦を攻め入る頃には名家の方々も駆けつけ、最終的には1000人程度の規模で戦うことができました。マハカム側に攻め入ったチュノス国本隊は推定で20000から30000ほどと考えられ、損耗の規模は不明です」
王様が頷いている。数の重要性というものを理解し始めたのだろう。戦力を理解した上で戦えるなら小さい国であっても勝算はある。
「直轄軍が復活するというのがありがたいな。これで戦い方の幅も増す」
「こちらの損失は数十人で済みました。敵にやられた数よりも内輪のケンカで数人死んでます。砦から武器防具や食料を持ち出し、国庫へと納めました。捕虜が帰ってきたらそのまま装備へと転用することが可能ですね」
「捕虜が帰ってきたときの食料や住居については?」
ムサエフ将軍が宰相に質問する。
「今年は豊作でしたので食料には余裕があります。この程度でしたら住居もどうにかなるでしょう」
久しぶりの勝利に酔っている感覚だな。
「また、マハカムからもチュノスを撤退させたことで御礼の使者が来ました。ですがマハカムの側にもあまり蓄えが無いようでしたので、御礼になにが送られてくるのかまでは分かりません。また、論功行賞なのですが、特級がアラヒトさんで他は褒賞は無しというかたちにしたいと思います」
俺の名前が出たので軽く頭を下げる。
「ありがたいのですが、将軍や王には褒賞は無いのですか?」
「他の名家の連中が成果を挙げたというなら褒賞はあってもいいが、褒賞は王家から出すものだからな。俺は王として勤めを果たしただけだし、ムサエフも将軍として仕事をしただけだ」
「王家の力を削ぐことになるので、直轄軍の兵は褒賞など求めないんですよ。まぁ配給を多少豪勢にする程度はしますがね」
「で、お前を呼んだのは褒賞の中身だ。特級となるとやはり領地程度は分け与えないと後々の褒賞が小さくなってしまうのでな。これを機会に領地を持ってみたらどうだ?」
「それについては考えがありまして・・・」
俺は孤児院兼学校について話した。
「孤児を減らしつつ人材を作るのか。面白いが・・・それでいいのか?お前はなんの得も無いではないか」
黙って話を聞いていた王妃が話し始めた。
「優秀な技術者が育ったら私にください。それに維持するための物資もけっこうな量なので、領地と大差の無いだけの価値があると思います。王家のお墨付きがあれば人も集まるでしょう」
「学校と言ったか・・・なるほど・・・人材は在野から拾うだけではなく育てるという考え方もあるのだな」
「優秀な人間は国や軍が召し抱えるのもいいでしょう」
「あい分かった。お前の言う通りにしよう。諜報部の古顔にもこれを機会に改めてもう一度仕えてみる気があるのか王家から打診しておく。式典の前に場を設けたのは正解だったな」
まったくだ。欲しくも無い領地などもらってしまったら、名家の方々にどういう目で見られるか分からない。人前で俺に領地を与えたら王様も引っ込みがつかないだろうしな。
「アラヒト。木製鎧は良かったのだが、あのクロスボウと言ったか?拠点防衛には向いているが、攻めるには向かない武器だ。高さのある場所から低い場所へは飛ばせないではないか」
クロスボウが流行らなかった理由はこれだろうな。携行しづらく、低所から角度をつけて矢をつがえなくてはいけない上に巻き上げ部分も壊れやすい。
「以前も申し上げましたが、敵国に攻め入って勝利する必要は無いと思われます」
「分かっている。だから砦を放棄したのだ。あれでチュノスは戦力や資源を分散させることになる」
「私が居た世界では王には二つの君臨の仕方というのがありました。ひとつは国を平らげて武力ですべてを手に入れる王。もうひとつは王の中の王として尊敬され信頼を勝ち得る王です。後者は盟主と呼ばれていました。私はアレクセイ王こそ盟主のような存在に相応しいと思います」
「王の中の王か・・・ふむ・・・いたずらに戦争をする王だけが王では無いのだな。戦争ばかりでは人心も離れていくだろう」
統治には向いていないなどと言わていたが、ペテルグの王は愚鈍ではない。内政などやれる者がやったらいい。君臨するだけの王、国の象徴としての王となると適材なのかもしれないな。
「しかしアラヒトさん、チュノスの王はしつこいですよ?今回は略奪だけではなく、領土拡張を狙ってのマハカム侵攻だと思います」
「あの王をいつか討たないと盟主などという考え方はただの夢想だ。武力でこの大陸をひとつにしようとしているフシがある。まぁこの大敗でしばらくは大人しくするだろうと思うがな」
現在の軍事バランスのまま経済力で勝負する方法が一番この国にとって最良だと思っていたが、チュノスだけはいつかは滅ぼさなくてはいけないかもな。
しかしそれはこの国が別の一国を統治し防衛する力を持ってからだ。
カラシフ宰相が司会となり今回の防衛戦の総括を行うこととなった。王と王妃、カラシフ宰相とムサエフ将軍、俺とサーシャだ。
「敵数が約2500でした。うち1000人死亡、700人を捕虜とし、残りはチュノス国へと逃げ帰ったと思われます。王が捕えた将校も怪我はしていますが捕虜交換に使えます。王家直轄軍の捕虜が生きていたら捕虜交換で1000人くらいは戻って来られる計算となりますね。チュノス国境の砦を攻め入る頃には名家の方々も駆けつけ、最終的には1000人程度の規模で戦うことができました。マハカム側に攻め入ったチュノス国本隊は推定で20000から30000ほどと考えられ、損耗の規模は不明です」
王様が頷いている。数の重要性というものを理解し始めたのだろう。戦力を理解した上で戦えるなら小さい国であっても勝算はある。
「直轄軍が復活するというのがありがたいな。これで戦い方の幅も増す」
「こちらの損失は数十人で済みました。敵にやられた数よりも内輪のケンカで数人死んでます。砦から武器防具や食料を持ち出し、国庫へと納めました。捕虜が帰ってきたらそのまま装備へと転用することが可能ですね」
「捕虜が帰ってきたときの食料や住居については?」
ムサエフ将軍が宰相に質問する。
「今年は豊作でしたので食料には余裕があります。この程度でしたら住居もどうにかなるでしょう」
久しぶりの勝利に酔っている感覚だな。
「また、マハカムからもチュノスを撤退させたことで御礼の使者が来ました。ですがマハカムの側にもあまり蓄えが無いようでしたので、御礼になにが送られてくるのかまでは分かりません。また、論功行賞なのですが、特級がアラヒトさんで他は褒賞は無しというかたちにしたいと思います」
俺の名前が出たので軽く頭を下げる。
「ありがたいのですが、将軍や王には褒賞は無いのですか?」
「他の名家の連中が成果を挙げたというなら褒賞はあってもいいが、褒賞は王家から出すものだからな。俺は王として勤めを果たしただけだし、ムサエフも将軍として仕事をしただけだ」
「王家の力を削ぐことになるので、直轄軍の兵は褒賞など求めないんですよ。まぁ配給を多少豪勢にする程度はしますがね」
「で、お前を呼んだのは褒賞の中身だ。特級となるとやはり領地程度は分け与えないと後々の褒賞が小さくなってしまうのでな。これを機会に領地を持ってみたらどうだ?」
「それについては考えがありまして・・・」
俺は孤児院兼学校について話した。
「孤児を減らしつつ人材を作るのか。面白いが・・・それでいいのか?お前はなんの得も無いではないか」
黙って話を聞いていた王妃が話し始めた。
「優秀な技術者が育ったら私にください。それに維持するための物資もけっこうな量なので、領地と大差の無いだけの価値があると思います。王家のお墨付きがあれば人も集まるでしょう」
「学校と言ったか・・・なるほど・・・人材は在野から拾うだけではなく育てるという考え方もあるのだな」
「優秀な人間は国や軍が召し抱えるのもいいでしょう」
「あい分かった。お前の言う通りにしよう。諜報部の古顔にもこれを機会に改めてもう一度仕えてみる気があるのか王家から打診しておく。式典の前に場を設けたのは正解だったな」
まったくだ。欲しくも無い領地などもらってしまったら、名家の方々にどういう目で見られるか分からない。人前で俺に領地を与えたら王様も引っ込みがつかないだろうしな。
「アラヒト。木製鎧は良かったのだが、あのクロスボウと言ったか?拠点防衛には向いているが、攻めるには向かない武器だ。高さのある場所から低い場所へは飛ばせないではないか」
クロスボウが流行らなかった理由はこれだろうな。携行しづらく、低所から角度をつけて矢をつがえなくてはいけない上に巻き上げ部分も壊れやすい。
「以前も申し上げましたが、敵国に攻め入って勝利する必要は無いと思われます」
「分かっている。だから砦を放棄したのだ。あれでチュノスは戦力や資源を分散させることになる」
「私が居た世界では王には二つの君臨の仕方というのがありました。ひとつは国を平らげて武力ですべてを手に入れる王。もうひとつは王の中の王として尊敬され信頼を勝ち得る王です。後者は盟主と呼ばれていました。私はアレクセイ王こそ盟主のような存在に相応しいと思います」
「王の中の王か・・・ふむ・・・いたずらに戦争をする王だけが王では無いのだな。戦争ばかりでは人心も離れていくだろう」
統治には向いていないなどと言わていたが、ペテルグの王は愚鈍ではない。内政などやれる者がやったらいい。君臨するだけの王、国の象徴としての王となると適材なのかもしれないな。
「しかしアラヒトさん、チュノスの王はしつこいですよ?今回は略奪だけではなく、領土拡張を狙ってのマハカム侵攻だと思います」
「あの王をいつか討たないと盟主などという考え方はただの夢想だ。武力でこの大陸をひとつにしようとしているフシがある。まぁこの大敗でしばらくは大人しくするだろうと思うがな」
現在の軍事バランスのまま経済力で勝負する方法が一番この国にとって最良だと思っていたが、チュノスだけはいつかは滅ぼさなくてはいけないかもな。
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