ち○○で楽しむ異世界生活

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 預言者様の部屋をサーシャと共に出たら、カラシフがわざわざ外で待っていた。
 「アラヒトさん!ぶん投げられた仕事が詰まっているんです!ちょっと来てください!」
 挨拶もそこそこに手首を引っ張られ、宰相の仕事部屋へと連れ込まれた。
 貨幣の流通には玉を使う予定であったが、そもそもリーベリ金貨・銀貨が大量に貯まっている。こちらを流用したらどうなのか。玉でリーベリの貨幣に勝てるのか。負けたらどうなるのか。
 うーん・・・
 「リーベリの貨幣の発行の総量は分かりませんか?」
 「詳しくは分かりません。だいたいわが国が30%程度を保有していると推察しています」
 リーベリが貨幣の量を増やせば増えた分だけ、このペテルグの貨幣価値は減る。
 「毎年の貨幣の発行量は?」
 「その件はリタが掴みました。毎年おおよそ全体の5%程度を造っているようです」
 まだ目は赤いが、サーシャはいつも通り諜報部のトップの顔になっている。リタはリーベリの内側に入っていたのか。ざっくりだが20年で価値が半減する。
 金貨を使うような大口取引は、食糧と高級品と燃料だけだったな。
 「ジャガイモや燃料の価格はどう変化しているんですか?」
 「ジャガイモは豊作や不作で変動します。20倍になった年もありますね。木炭などはここ十年でほぼ横ばいです」
 困ったことにこの世界では物価というものがよく分からない。物価で貨幣価値が決まるというのに、数が無い世界ではすべてがどんぶり勘定だ。そのうちきちんとした指標を作ってもらわないと、どうにも意思決定までどんぶり勘定になってしまう。
 「早目に方向性を決めないと、市場など作れませんよ」
 「アラヒト様がおっしゃっていた市場らしきものが、リーベリでは既に作られ始めているようです。まだまだ庶民が手を出せるようなものではありませんが、大口取引は似たようなかたちで行われ始めています。アラヒト様が伝えた数字と文字がリーベリでも使われ始めたことが影響しているようです。商人の国ですからこの冬か春には運用方法は追い付かれるかと思われます」
 こりゃリーベリに先を越されるな。・・・発想自体を変えた方がいいか?

 「カラシフ宰相。リーベリが相対市場を完成させるまでどの程度かかると思いますか?」
 「おそらく半年でそれなりのかたちにはしてくるでしょう」
 「いっそのこと、リーベリに市場を作らせたらどうでしょうか?」
 はぁ?みたいな顔をされた。
 「我々が先に作って外交を有利に働かせるという策だったのではないのですか?」
 「市場はいくつもの失敗を積み重ねて強くなるものです。いきなり半年後にリーベリが市場を機能させられるとは思えません。そもそもペテルグが貨幣を作る・作らないという状況であるのに、リーベリの通貨に勝てるとも思えません。既にあるリーベリ金貨を用いた方が得策かもしれません」
 たぶんこちらの方が上策だ。
 「通貨の発行は諦めましょう。まずはリーベリ金貨をかき集めることです」
 カラシフの顔つきがハっと変わった。
 「リーベリに市場を作らせて、その市場自体をペテルグが金貨で介入もしくは乗っ取る、ということですか?」
 「制度が脆弱な市場ならば、リーベリの市場を乗っ取った方が早いでしょう。できればリーベリの貨幣鋳造技術と貨幣発行の権利を奪い取れるところまで行ければいいですけれどね」
 カラシフの脳みそがフル回転していることが分かる。

 「・・・勝負は来年の冬ですか?」
 さすがだな。
 「ええ。リーベリへの燃料供給を止めるか絞りましょう。中途半端に成功した市場であるなら、燃料が異常な高騰の仕方をするはずです。国内からリーベリへ燃料が出ないようにする必要もあります」
 国ごと叩き潰すデカ目の経済戦になるな。となると国内での法整備も必要になるし、他国と協力もしくは不干渉である確約も必要になるか。
 「・・・私は戦争を知らない文官ですが・・・これは・・・新しいかたちの戦争に思えます」
 原始的な市場でモノを出し渋り、カネで制圧する。この世界で初の経済戦争だ。
 「ムサエフ将軍とも話を通しておいた方がいいでしょう。リーベリの民衆が生活できなくなるとしたら、戦争になる可能性もあります。流民が出てくるとしたら国内で吸収する制度も必要になるでしょう。ラドヴィッツ家にも話だけは通しておいた方がいいでしょうね」
 「・・・内政部だけで留められる話では無いですね。内政部で検討して上奏前に将軍にも相談しておきます」
 「サーシャ。リーベリが市場を作るとして、燃料以外に市場を作る可能性があるものはあるか?」
 「そうですね・・・海産物は獲れる量によって変わるでしょうし、ジャガイモ、希少金属などが当たるかもしれません」
 「内政部と情報を共有した上で、最優先で俺に報告をくれ」
 「承知しました」
 貨幣経済と市場という内政問題、嗜好品や高級品を絞られているという外交問題。うまくいけば兵を失うことなく一気にカタがつく。
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