ち○○で楽しむ異世界生活

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60 覚悟

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 何度かムサエフ将軍と話したが、なかなかチュノスとの戦い方が定まらない。先にドワーフを受け入れて武器を作ってもらわないことには話が進まないのだ。食糧が足りないチュノスの方から再び攻めてくる可能性だってある。
 攻城戦か、野戦か。
 砦を奪取して城塞までの補給線にする事はほぼ確定している。ペテルグ王城近くからあの砦まで街道にしてしまうのもいいだろう。
 敵方の食糧が少ないことは分かっているのだから、兵の損耗率を考えると攻城戦の方がややラクになりそうな気がする。兵站戦はもともと俺の本業なのでやり易いと言えばやり易い。とすると、衝車か投石機といったものの開発も考えなくてはいけないな。仮に今回の城攻めで使わなかったとしても、後々のチュノス王城攻めに使える。諜報部がうまいこと内部関係者を籠絡できるとしたら、さらに敵兵を分散させられるかもしれない。

 考え事をしていたら、暖炉の火が弱まっていることに気づいた。
 異世界の冬は寒い。雪が降るような天候だが壁の中に断熱材すら無い。この家も来年の冬の前には少し改造した方がよさそうだな。断熱材の代わりにたっぷりの綿を入れて壁を二重にすれば、それなりに効果も出るだろう。
 上水と下水が無いというのも困りものだ。石はそれなりに獲れるのだから、国が潤ったら上水道と下水道を献策してみよう。いつでも使える水があれば、多くの人が風呂にありつけるだろう。病気で死亡する人間も各段と減る。
 せっかくだから、露天風呂も欲しいな。
 彼女たちの肉体を眺め触れつつ一緒に風呂を楽しみたい。春になったら真っ先に作ってもらおう。
 ペテルグの目先の問題は弱すぎた軍事力と経済力だった。防衛するだけならどうにかなるレベルにまでなんとか持ってきた。経済も街道による高速輸送や食料の在庫管理もうまく機能し始めていると報告を受けている。やはり流通が健全であるというのは気分がいいな。
 
 ノックに返事をすると、サーシャが紅茶と火を持ってきてくれた。
 「アンナが大切な話があるそうです。通してもよろしいでしょうか?」
 「うん。今なら大丈夫だ。通してくれ」
 クレアとアンナが仕事部屋へ入ってきた。宮廷作法の通りに礼をしたアンナの居住まいに妙な落ち着きがあるな。なんだ?
 「アラヒト様にお願いがございます。クレアをマハカムへと戻して頂きたいのです」
 クレアを?別に構わないけれど・・・
 「この冬に帰すのか?リーベリを経由するにしても大変な道のりだろうに」
 「冬のうちに、でなくてはいけません。春には戦があるのでしょう?」
 軍事機密を探ってきた?いや、マハカムもペテルグと同じ立場なのか。春になったら雪解けとともに隣国が攻めてくるのだろう。
 「戦とクレアがどういう関係があるんだ?」
 「クレアがマハカムに帰るとなると、王族としての私の仕事が失敗したということがマハカムに伝わります。マハカムは私と同程度のものをペテルグに差し出すでしょう。恩を仇で返すような真似をしたのですから」
 ・・・あー。色々忙しくて忘れていた。アンナはマハカムが俺を籠絡するための剣だったのだな。
 それにしても、ずいぶんと義理堅い国だな。というよりも、アンナこそがマハカムにとって最大の武器だったのかな。
 ・・・これ、俺の裁量だけでクレアを返していいもんなのか?
 「王室に相談してみる。たぶん大丈夫だとは思う」
 「ご厚意に感謝します」
 マハカムと軍事同盟を結んで春にチュノスに攻め入ることができれば、ペテルグ側の勝算が大きくなるな。軍事力の差がドワーフの技術で埋まれば、圧勝できるかもしれない。

 アンナと同程度の貢物か。
 「ペテルグはマハカムにどこまで要求できる?」
 「軍事同盟、山脈越えの道、マハカムの技術、金貨。なんであろうとも王女と同額以上のものが得られるでしょう」
 アンナが深くため息をついた。
 「マハカムの王女を抱いても変わらなかった殿方が居たと伝承では伝え聞いておりました。ですが、まさかアラヒト様の床の技術がマハカム王家に伝わる秘儀以上のものだとは想像もしていませんでした」
 アンナは服を脱ぎ始めた。なにをしているんだ?
 「私の首もクレアと共にマハカムへと送ってください。せめて首だけでも故郷へ・・・帰れれば・・・」
 ・・・あー、そうか。俺を狙った刺客だったら即斬首になるのか。
 「アンナの首なんかいらないよ。俺のハーレム要員になってくれればいい」
 「国を傾けるために贈られて来た人間ですよ?ペテルグ王室が納得するとは思えません」
 覚悟はもう出来ているな。でもそういう覚悟は別に欲しくないんだよな。
 「サーシャ。アンナに服を着せてやってくれ。アンナは俺が戦争好きな人間に思えるか?」
 「いえ・・・」
 「アンナも美しいけれど、この国の女性は美しいよな。俺は自分が抱く女性を守るためにペテルグを助けているんだ。結果として戦争にも加担することになっちゃったけれどね。アンナの技術は素晴らしかったし、これからもこの家で俺に尽くしてくれ。そうだなぁ・・・今夜にでも頼むよ」
 「・・・罰することもなく、ただの女性として扱っていただけるのですか?」
 「うん。王室から横やりが入ってきたら俺がなんとかしよう」
 王室の外交の不手際で俺にアンナが贈られるハメになったんだ。アンナ一人の命くらいなら代償として安いものだろう。結果として美しい女性がこうやって手に入ったワケだしな。
 これほどの美女を手放すなど、勿体なくてできるわけがない。
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