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100 魔人
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「ずいぶんと話が大きくて、まだピンと来ていないよ」
預言者様はくたびれて横になりたいそうなので、波動についての事実確認が終わったら俺とサーシャは部屋から追い出された。せっかく王城にまで来たので、ラドヴィッツ領への招致の報告をしようと王妃への面談を求めたら、忙しいので別室で待機していてくれとのことだった。この部屋は最初に俺にあてがわれて、サーシャと寝た部屋だな。勝手の分かっている部屋を融通してくれたのだろう。
「魔人も魔物もいない世界なんですね、アラヒト様のお国って」
「お話としてはあるけれどね。空想の産物だよ」
なんだか朝から疲れた気分でお茶をすする。魔人ねぇ。
「魔人ってことは、人なの?」
文字の中に人って入ってるし。
「人のかたちをした魔物を魔人と呼びます」
「へぇー。じゃぁ魔王っているの?」
「魔人や魔物の王が魔王ですね。魔物や魔人を支配し、人間や他の動物を襲う厄災です」
いるのか。軽い気持ちで魔王とか言ってみたら、この世界では常識みたいな言い方をされた。精霊がいるだけでもファンタジーなのに、そんな危なっかしいものまでいるんだ。
「もし、魔人・・・じゃなかった。魔王がこの世界に来たらどうなるの?」
「精霊の力を借りた勇者によって退治されると言われていますが・・・実際のところ分かりません」
へぇ・・・ん?あれ?じゃあ前に聞いた通りの話だと、魔人が来るほどにこの大陸が暴力に満ちていたってことか。
「魔人がこちらに来そうになった理由ってなにか思いつくか?」
「おそらくリザの工作の結果かと思われます。タージの内戦が激化しているとの報告を受けていますので。リザが見事としか言いようがありませんね」
魔人が降臨しかけるほどの血みどろの内戦って、タージ国内はどれほどえげつないことになっているんだろう。・・・うん?
じゃぁリザの仕事がきっかけで魔人が降臨しそうになって、リザとのセックスで魔人が別の世界に引っ込んだのか?・・・分かったような分からないような話だな。
「人間同士で戦争したら、魔人が来ちゃったりしちゃうのかもしれないのか・・・よく人間同士で戦争ができるな・・・」
魔王とか魔人とかよく分からないものだけに怖い。俺が居た世界の知識でどうにかなりそうな相手じゃないからなぁ。別世界から来た厄災相手に、高質量兵器とか使いものになるのかな?
「そうは仰っても簡単に人の争いなど消えませんから 。預言者様が人の世のことは人が決めろ、というのはそういう意味も含まれているのだと思います」
預言者様って高度な天災予防システムだと思っていたんだけれど、それ以上の意味があったんだな。高次元な別世界での戦争に介入する窓口か。
「魔物や魔人を見た人っているのか?」
「いえ。大陸から外に出るほどの能力がいまのところ人間には無いとされています。私たちが預言者様の言葉を信じているだけです」
うーん。預言者様やサーシャの態度を見るに、どうやらそういう魔物やら魔人やらが大陸の外に居る、というのは間違いが無いみたいだ。まぁ俺が生きているあいだに見られるかどうかも分からない相手だな。一目見る前に速攻で殺されそうだ。
それに波動か。
「さっきの話って魔物の一人を別の世界に追い返したってことだよな?」
「そうなりますね。ですがアラヒト様との営みを考えると、そういったことが起きたところで特に驚きはしませんよ」
ちんこで世界を救ったなんて言われてもピンと来ないんだよな。楽しくセックスしただけだし。
ノックして王妃付きの侍女が部屋に入ってきた。別室で王女が待っているそうだ。
「待たせたな。先に預言者様に呼ばれたようだったが、何かあったのか?」
「なんでも波動が大きかったことの確認でした」
「波動?」
王妃ですら知らない話のようだ。かいつまんでさっき預言者様から聞いた話を説明した。王妃の口角が上がり、途中から爆笑し始めた。俺も苦笑するしかない。
「浄化のさらに上があるなど、初めて聞いたぞ!」
まだ腹を抱えて笑っている。
性行為と別世界がここまで密接に繋がっているとか、どういう仕組みなんだろうなぁ?
まぁ前に居た世界でも愛は地球を救う的なことを言っていた人たちが居たし、わりとセックスの気持ち良さと世界平和って近いものなのかもしれないな。
「私がこちらの世界に呼ばれた理由って、これだったりしますかね?」
「いやいや。転移者は偶然によって選ばれると聞いている。精霊と魔物の聖戦に影響を与えるような人間を選べるということは無いだろう」
そうだよなぁ。昨日のリザとのセックスだって偶然うまいことできたものだ。選んでこちらの世界に転移させられるのであれば、とっくに俺よりもセックスが上手い人間を異世界から引っ張ってきているだろうしな。
「ここまで腹を抱えて笑ったのは久しぶりだな。魔人だのがこの世界に降りて来たとなれば、今のような国のかたちなど吹っ飛ぶぞ」
人の時代の終わり、魔物の時代となってしまうか。
「聖戦だの魔人だのといった話は終わりだ。まずは目の前の脅威と問題を片づけねば為政者とは呼べぬ。ラドヴィッツの領地へ行ったのだろう?なにを得たのか聞かせてくれまいか?」
預言者様はくたびれて横になりたいそうなので、波動についての事実確認が終わったら俺とサーシャは部屋から追い出された。せっかく王城にまで来たので、ラドヴィッツ領への招致の報告をしようと王妃への面談を求めたら、忙しいので別室で待機していてくれとのことだった。この部屋は最初に俺にあてがわれて、サーシャと寝た部屋だな。勝手の分かっている部屋を融通してくれたのだろう。
「魔人も魔物もいない世界なんですね、アラヒト様のお国って」
「お話としてはあるけれどね。空想の産物だよ」
なんだか朝から疲れた気分でお茶をすする。魔人ねぇ。
「魔人ってことは、人なの?」
文字の中に人って入ってるし。
「人のかたちをした魔物を魔人と呼びます」
「へぇー。じゃぁ魔王っているの?」
「魔人や魔物の王が魔王ですね。魔物や魔人を支配し、人間や他の動物を襲う厄災です」
いるのか。軽い気持ちで魔王とか言ってみたら、この世界では常識みたいな言い方をされた。精霊がいるだけでもファンタジーなのに、そんな危なっかしいものまでいるんだ。
「もし、魔人・・・じゃなかった。魔王がこの世界に来たらどうなるの?」
「精霊の力を借りた勇者によって退治されると言われていますが・・・実際のところ分かりません」
へぇ・・・ん?あれ?じゃあ前に聞いた通りの話だと、魔人が来るほどにこの大陸が暴力に満ちていたってことか。
「魔人がこちらに来そうになった理由ってなにか思いつくか?」
「おそらくリザの工作の結果かと思われます。タージの内戦が激化しているとの報告を受けていますので。リザが見事としか言いようがありませんね」
魔人が降臨しかけるほどの血みどろの内戦って、タージ国内はどれほどえげつないことになっているんだろう。・・・うん?
じゃぁリザの仕事がきっかけで魔人が降臨しそうになって、リザとのセックスで魔人が別の世界に引っ込んだのか?・・・分かったような分からないような話だな。
「人間同士で戦争したら、魔人が来ちゃったりしちゃうのかもしれないのか・・・よく人間同士で戦争ができるな・・・」
魔王とか魔人とかよく分からないものだけに怖い。俺が居た世界の知識でどうにかなりそうな相手じゃないからなぁ。別世界から来た厄災相手に、高質量兵器とか使いものになるのかな?
「そうは仰っても簡単に人の争いなど消えませんから 。預言者様が人の世のことは人が決めろ、というのはそういう意味も含まれているのだと思います」
預言者様って高度な天災予防システムだと思っていたんだけれど、それ以上の意味があったんだな。高次元な別世界での戦争に介入する窓口か。
「魔物や魔人を見た人っているのか?」
「いえ。大陸から外に出るほどの能力がいまのところ人間には無いとされています。私たちが預言者様の言葉を信じているだけです」
うーん。預言者様やサーシャの態度を見るに、どうやらそういう魔物やら魔人やらが大陸の外に居る、というのは間違いが無いみたいだ。まぁ俺が生きているあいだに見られるかどうかも分からない相手だな。一目見る前に速攻で殺されそうだ。
それに波動か。
「さっきの話って魔物の一人を別の世界に追い返したってことだよな?」
「そうなりますね。ですがアラヒト様との営みを考えると、そういったことが起きたところで特に驚きはしませんよ」
ちんこで世界を救ったなんて言われてもピンと来ないんだよな。楽しくセックスしただけだし。
ノックして王妃付きの侍女が部屋に入ってきた。別室で王女が待っているそうだ。
「待たせたな。先に預言者様に呼ばれたようだったが、何かあったのか?」
「なんでも波動が大きかったことの確認でした」
「波動?」
王妃ですら知らない話のようだ。かいつまんでさっき預言者様から聞いた話を説明した。王妃の口角が上がり、途中から爆笑し始めた。俺も苦笑するしかない。
「浄化のさらに上があるなど、初めて聞いたぞ!」
まだ腹を抱えて笑っている。
性行為と別世界がここまで密接に繋がっているとか、どういう仕組みなんだろうなぁ?
まぁ前に居た世界でも愛は地球を救う的なことを言っていた人たちが居たし、わりとセックスの気持ち良さと世界平和って近いものなのかもしれないな。
「私がこちらの世界に呼ばれた理由って、これだったりしますかね?」
「いやいや。転移者は偶然によって選ばれると聞いている。精霊と魔物の聖戦に影響を与えるような人間を選べるということは無いだろう」
そうだよなぁ。昨日のリザとのセックスだって偶然うまいことできたものだ。選んでこちらの世界に転移させられるのであれば、とっくに俺よりもセックスが上手い人間を異世界から引っ張ってきているだろうしな。
「ここまで腹を抱えて笑ったのは久しぶりだな。魔人だのがこの世界に降りて来たとなれば、今のような国のかたちなど吹っ飛ぶぞ」
人の時代の終わり、魔物の時代となってしまうか。
「聖戦だの魔人だのといった話は終わりだ。まずは目の前の脅威と問題を片づけねば為政者とは呼べぬ。ラドヴィッツの領地へ行ったのだろう?なにを得たのか聞かせてくれまいか?」
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