99 / 111
99 波動
しおりを挟む
朝食後に部屋で一服していたら、馬車が屋敷の近くまでやって来る音が聞こえた。
俺に客人かな?珍しい。
ノックをしてサーシャが仕事部屋へ入ってきた。
「ご休憩のところ失礼します。預言者様がアラヒト様をお召しだそうです」
まだラドヴィッツ領の報告すらやってないんだけれどもな。
「王妃にラドヴィッツとの会談内容の報告も済ませてないんだけれど、預言者様の要件を先にした方がいいのか?」
「預言者様が人を呼ぶ、ということは滅多にございません。王妃様への報告は後にしてよろしいかと思われます」
そんなに珍しいことなのか。前にサーシャと一緒に呼び出されたけれどもな。ってことは、たぶん昨日のリザとの一戦の件だろう。朝になってもまだ余韻に浸れるくらい、スゲー気持ち良かったからなぁ。
「コイツを吸い終わったら王城に行こうか」
まだ食後の一服の途中だ。預言者様が人のセックスを見ているというよりも、内容がいいと勝手に伝わるんだろうな。
預言者様の部屋に入ると、挨拶も抜きで預言者様がつかつかと俺に近づいてきた。
「なんですの?昨夜の波動は・・・」
ハドウ?
「ハドウって何でしょうか?」
「性の悦びの感覚が、他の世界へまで影響することです。アラヒト、あなたとの性行為ってそんなに凄いのですか?」
ん?
預言者様の詰め寄り方が凄くて気づかなかったが・・・この肌の血色に瞳のにじませ方・・・これって少し発情していないか?
「・・・凄いですよ。それはもう・・・自分がこれほど乱れるとは思えないほどに・・・」
サーシャが勝手に答えてくれた。
「サーシャが言うのであればそうなのでしょうね。お相手ですもの」
サーシャは自分の言葉で赤くなり、預言者様は事実確認ができたという具合で少し落ち着いた。
「・・・少し羨ましいわね。人の身を半分捨てた者としては」
この深紅の瞳の奥に性欲なんてあったのか。精霊と交わって半分人間じゃなくなったら、神秘じみた美しさと若さと引き換えに、人間性みたいなものは残っていないんじゃないかと思っていた。預言者様がため息をつく。
「まだ昨日のほてりが醒めないで身体の奥に残ってしまっているわ。間違いなく他の国の預言者もこうなっているわよ・・・」
「なんだか申し訳ありません」
よく分からないが俺のせいみたいなので謝っておいた。サーシャの浄化の時にはこういう反応はしなかったけれどなぁ。
「まぁいいわ。少し説明をしてあげましょう」
「以前に精霊と魔物の話を少ししたわね。ふたつはずっと戦い続けていて、暴力がこの大陸に満ちれば魔物が力を増して、性の悦びが大きいほどに精霊は力を増すの」
なんかそういう話を聞いたな。戦争をしているとかナントカ。
「性的な悦びの力は預言者の身体を媒介にして、その戦争をしている世界の精霊へと力を送っているのよ。それが波動。多くの人間たちがふつうの性行為をしたところで私にはどうということはありません。しかし、あまりに大きい波動がやって来ると私にも影響が出るのです・・・その・・・快感を人間と同じくしてしまうの」
つまり、昨日の夜にイキまくっていたリザの快感が、預言者様に伝わってしまったというわけだ。
・・・あれ?なんで今も苦しそうなんだ?
「昨日の夜の事ですよ?」
「昨日の夜からこの状態なのよ・・・送る力が大きすぎて時間もかかるし、腰が抜けるかと思ったわよ・・・」
まさかセックスが良すぎて人に迷惑をかけるとは思わなかった。
「少し自重したほうがいいんでしょうか?」
なんだか少し辛そうなんだよなぁ。
「逆よ。やれるならやってみなさい。その分だけ精霊の力が増すようになるわ」
ああいうセックスができるものなら喜んでやってみるけれど・・・内容のいいセックスってだいたいマグレ当たりなんだよな。マグレを再現できるかどうかは、何度も試してみないことには分からない。
「・・・この大陸のはるか遠く、この世界に魔人が降臨することを阻止できたわ」
「・・・はい?」
なにを言っているんだ?
「だから昨日の波動で魔人降臨が阻止できたのよ。お相手はサーシャじゃないわね?昨日のお相手をした子は大丈夫なの?」
「寝ているみたいだったので起こさずに寝かしています」
俺の相手をする女性は翌日の仕事を免除されている。サーシャだけは働きたがるので近くに置いているけれど。
「・・・まぁそうよね。アレだけの大きさを人の身で受け止めて、次の日の朝には何事も無かったみたいに動けるなんて信じられない・・・」
預言者様はなにか信じられない事が起こったような口ぶりだけれど、俺にはもっと気になる話があった。
「魔人ってこの世界にいるんですか?」
「いるわよ。この大陸にはいないけれど。アラヒトが居た世界にはいないの?」
「物語には出てきますけれど・・・見た人は居ないですね」
まだぜんぜんピンと来ていないが、昨日リザと寝たら預言者様が一晩中快感で身悶えて、ついでに軽く世界が救われたという話のようだ。そりゃ世界を救ったんなら朝一で呼び出されるよな。
俺に客人かな?珍しい。
ノックをしてサーシャが仕事部屋へ入ってきた。
「ご休憩のところ失礼します。預言者様がアラヒト様をお召しだそうです」
まだラドヴィッツ領の報告すらやってないんだけれどもな。
「王妃にラドヴィッツとの会談内容の報告も済ませてないんだけれど、預言者様の要件を先にした方がいいのか?」
「預言者様が人を呼ぶ、ということは滅多にございません。王妃様への報告は後にしてよろしいかと思われます」
そんなに珍しいことなのか。前にサーシャと一緒に呼び出されたけれどもな。ってことは、たぶん昨日のリザとの一戦の件だろう。朝になってもまだ余韻に浸れるくらい、スゲー気持ち良かったからなぁ。
「コイツを吸い終わったら王城に行こうか」
まだ食後の一服の途中だ。預言者様が人のセックスを見ているというよりも、内容がいいと勝手に伝わるんだろうな。
預言者様の部屋に入ると、挨拶も抜きで預言者様がつかつかと俺に近づいてきた。
「なんですの?昨夜の波動は・・・」
ハドウ?
「ハドウって何でしょうか?」
「性の悦びの感覚が、他の世界へまで影響することです。アラヒト、あなたとの性行為ってそんなに凄いのですか?」
ん?
預言者様の詰め寄り方が凄くて気づかなかったが・・・この肌の血色に瞳のにじませ方・・・これって少し発情していないか?
「・・・凄いですよ。それはもう・・・自分がこれほど乱れるとは思えないほどに・・・」
サーシャが勝手に答えてくれた。
「サーシャが言うのであればそうなのでしょうね。お相手ですもの」
サーシャは自分の言葉で赤くなり、預言者様は事実確認ができたという具合で少し落ち着いた。
「・・・少し羨ましいわね。人の身を半分捨てた者としては」
この深紅の瞳の奥に性欲なんてあったのか。精霊と交わって半分人間じゃなくなったら、神秘じみた美しさと若さと引き換えに、人間性みたいなものは残っていないんじゃないかと思っていた。預言者様がため息をつく。
「まだ昨日のほてりが醒めないで身体の奥に残ってしまっているわ。間違いなく他の国の預言者もこうなっているわよ・・・」
「なんだか申し訳ありません」
よく分からないが俺のせいみたいなので謝っておいた。サーシャの浄化の時にはこういう反応はしなかったけれどなぁ。
「まぁいいわ。少し説明をしてあげましょう」
「以前に精霊と魔物の話を少ししたわね。ふたつはずっと戦い続けていて、暴力がこの大陸に満ちれば魔物が力を増して、性の悦びが大きいほどに精霊は力を増すの」
なんかそういう話を聞いたな。戦争をしているとかナントカ。
「性的な悦びの力は預言者の身体を媒介にして、その戦争をしている世界の精霊へと力を送っているのよ。それが波動。多くの人間たちがふつうの性行為をしたところで私にはどうということはありません。しかし、あまりに大きい波動がやって来ると私にも影響が出るのです・・・その・・・快感を人間と同じくしてしまうの」
つまり、昨日の夜にイキまくっていたリザの快感が、預言者様に伝わってしまったというわけだ。
・・・あれ?なんで今も苦しそうなんだ?
「昨日の夜の事ですよ?」
「昨日の夜からこの状態なのよ・・・送る力が大きすぎて時間もかかるし、腰が抜けるかと思ったわよ・・・」
まさかセックスが良すぎて人に迷惑をかけるとは思わなかった。
「少し自重したほうがいいんでしょうか?」
なんだか少し辛そうなんだよなぁ。
「逆よ。やれるならやってみなさい。その分だけ精霊の力が増すようになるわ」
ああいうセックスができるものなら喜んでやってみるけれど・・・内容のいいセックスってだいたいマグレ当たりなんだよな。マグレを再現できるかどうかは、何度も試してみないことには分からない。
「・・・この大陸のはるか遠く、この世界に魔人が降臨することを阻止できたわ」
「・・・はい?」
なにを言っているんだ?
「だから昨日の波動で魔人降臨が阻止できたのよ。お相手はサーシャじゃないわね?昨日のお相手をした子は大丈夫なの?」
「寝ているみたいだったので起こさずに寝かしています」
俺の相手をする女性は翌日の仕事を免除されている。サーシャだけは働きたがるので近くに置いているけれど。
「・・・まぁそうよね。アレだけの大きさを人の身で受け止めて、次の日の朝には何事も無かったみたいに動けるなんて信じられない・・・」
預言者様はなにか信じられない事が起こったような口ぶりだけれど、俺にはもっと気になる話があった。
「魔人ってこの世界にいるんですか?」
「いるわよ。この大陸にはいないけれど。アラヒトが居た世界にはいないの?」
「物語には出てきますけれど・・・見た人は居ないですね」
まだぜんぜんピンと来ていないが、昨日リザと寝たら預言者様が一晩中快感で身悶えて、ついでに軽く世界が救われたという話のようだ。そりゃ世界を救ったんなら朝一で呼び出されるよな。
0
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
↓
PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる