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19 マッチョさん、報奨金を受け取る
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朝食を取り、トレーニングウェアを着て街に出た。
宿の主人、街の人たち、遊んでいる子ども。多くの人たちに声をかけられた。
少しずつ、私がこの街を脅威から救ったのだなという実感がじわじわと湧いてきた。わずかに感じる筋肉痛が誇らしい。しかしこの痛み方では、今日はやる事が無いな。まずは病院へ行こう。
「たいしたことは無かったようですね。」
包帯を取り、触診をして、包帯を代えてもらった。
「そうみたいです。筋肉痛も思っていたほど出なかったですし。」
「やはり食べ物かねぇ。肉を食べる宗教なのでしょう?この街の食料事情は私も気にはなっていたんですがねぇ。」
「豆はともかく、肉が高いですからね。」
「魔物が寄り付かないとなると、動物はこちらに流れてくるでしょう。お肉も多少は安くなると思うんですが、ソロウほどの規模になると狩猟だけでは賄えないですからねぇ。」
さらに安定して肉を手に入れるには、他から持ってくるか、畜産を行うか。難しい問題だ。筋肉のためとは言え、私ひとりではどうにかできる話ではないな。
「そういえば、この街には魚が無いですよね。魚はあまり好んで食べられないのですか?」
「海から遠いですから運んでいる途中で痛んじゃいますね。川魚なら少し出回りますけれども、魔物が出てからは見かけなくなりましたねぇ。まぁ、食べ物にも困っていた時期に比べたらマシですが、やはり肉魚は必要なものですからねぇ。」
話が分かる人だ。診察が終わった。
「ありがとうございました。」
「今日一日包帯を巻いておけば、もう病院に来なくても大丈夫です。フェイスさんには病院に来るように伝えてくださいますか?あの人、来ないんですよ。」
「分かりました。言っておきます。」
「ああ、それとこれ。」
棒を渡された。
「いちおうね。転ばないように、杖がわりに使ってください。」
やはり冒険者には棒が必要なのか。
装備が気になるので、武器屋さんにも寄った。
「こんにちはー。」
「あ、マッチョさん、昨日はお疲れ様でした!凄かったらしいですね!」
「ええ。少し筋肉痛が残りました。」
この痛みは次なる筋肉へのステップだ。
「私の装備のメンテナンス、どのくらいかかるものなんでしょうか?」
「斧の方は三日もあればお渡しできるかと思います。あんなデカい魔物相手でもたいしたダメージも無さそうですから。鎧はバラしてみないと分かりませんね。」
よかった。何度も筋トレに使った道具なので、少し愛着が湧いていた。武器として使えなくなったら、筋トレの道具に作り直してもらおうと思っていたくらいだ。
「兜の方は新しいのを買った方が安くなりますね。既製品ですし。」
「では兜は新しいものをください。」
「しかしそのう、マッチョさん、皮の防具ばかりでいいんですか?いや、金属の鎧となると高くはなりますが、防御力は上がりますよ。重量もありますが、マッチョさんなら大丈夫じゃないですか?」
フェイスさんのような鎧か。うーん。軽さを取るか、防御力を取るか。昨日は酷い息切れになるまで追い込んだからなぁ。継戦能力という意味では軽さの方がいいような気もする。
「ちょっと私だけでは判断つかないですね。ギルドに行って相談してみます。」
「では鎧のメンテナンスより先に、斧の方に手をつけますね。」
ギルドに入ったら、意外と閑散としていた。
話を聞くと、深夜まで飲み食いをしていて冒険者の人たちはまだ寝ているらしい。もうすぐお昼になるのに。
「マッチョさん、昨日はお疲れ様でした。」
ルリさんは最後まで飲み続けていたらしいのだが、まったく普通で笑顔だ。普通なところが怖い。適当なタイミングで席を外して良かった。
「ルリさんもお疲れ様でした。そういえば村長は昨日どうしたんでしょう?」
「いろんな人に話を聞いて、今朝早く王都へ向かったそうですよ。なんでもソロウでは無いものが欲しかったらしくて。」
なにが欲しかったんだろうなぁ。簡単な挨拶しかしてなかった。
「ギルマスからお話があるそうです。ギルマスの執務室の場所は分かりますよね?」
「ああはい。以前連れて行ってもらったところですね。」
「昨夜何人か潰れてしまって、カウンター業務はいま私ひとりなんですよ。すみませんが、一人で行ってもらえますか?」
昨夜なにがあったんだ。
聞かないほうがいいだろうなぁ・・・
コンコン。
「失礼します。」
「おう、入れ。」
フェイスさんはまだあちこち痛そうだ。
「ドクターがちゃんと病院に来いって言ってましたよ。」
「病院は苦手なんだよなぁ。まぁ用事が済んだら行くよ。ほれ、今回の報奨金。金貨400だ。」
テーブルの上にどかんと革袋を置かれた。家が買えるじゃないか。
「こんなにもらっていいんですか?」
「ギルドと折半してこれだ。軍隊で倒せない相手を倒したんだ。少ないくらいだろう。魔石だけで金貨1000とか2000くらいの価値はあるもんだぞ。魔石の鑑定や魔物の解剖が終わったら、あとで追加の報奨金も出るかもな。」
そうなのか。
「ああ、カネともうひとつ。言った気がするが、三日後に俺と一緒にお前も王都に行くぞ。ギルドのグランドマスターに報告に行く。体調を整えて、装備も整えておけ。あとお前たぶん帰って来てもやる事が無いだろうから、世話になった街の人間に挨拶もしておけ。」
「やる事が無い?」
「大物を倒したからなぁ。しばらく魔物退治の依頼はないだろう。お前、なんか知らないが肉を食わないといけない宗教なんだろう?ソロウに帰って来ても肉を食い続けられるほどウチのギルドでは稼げなくなる。ほかの連中の食い扶持の分、お前が働いたらアイツらが食えなくなる。」
私は魔物を倒したことで、別の土地に行かなくてはいけないのか。なんだか理不尽だなぁ。
「そんな顔するな。お前ならどこの街に行っても大丈夫だ。それになぁ、俺たちは冒険者だぞ。旅くらい経験しておけ。お前ならたぶんどこかでなんか面白いことを見つけると思う。」
すごい雑な言い方をされた。
旅。
うーん。筋トレをするのであれば、できれば定住した方がいいのだけれども、タンパク質が足りない状況に身を置いていても仕方が無い。
「けっこうこの街に愛着が湧いてきていたんですけれどもねぇ。フェイスさんの指導もまだ受けている途中でしたし。」
「あっ、あー、それなら、たぶん、グランドマスターがなんとかしてくれると思う・・・」
どうやらフェイスさんはグランドマスターが苦手らしい。けっこう顔に出ちゃう人だよなぁ。
宿の主人、街の人たち、遊んでいる子ども。多くの人たちに声をかけられた。
少しずつ、私がこの街を脅威から救ったのだなという実感がじわじわと湧いてきた。わずかに感じる筋肉痛が誇らしい。しかしこの痛み方では、今日はやる事が無いな。まずは病院へ行こう。
「たいしたことは無かったようですね。」
包帯を取り、触診をして、包帯を代えてもらった。
「そうみたいです。筋肉痛も思っていたほど出なかったですし。」
「やはり食べ物かねぇ。肉を食べる宗教なのでしょう?この街の食料事情は私も気にはなっていたんですがねぇ。」
「豆はともかく、肉が高いですからね。」
「魔物が寄り付かないとなると、動物はこちらに流れてくるでしょう。お肉も多少は安くなると思うんですが、ソロウほどの規模になると狩猟だけでは賄えないですからねぇ。」
さらに安定して肉を手に入れるには、他から持ってくるか、畜産を行うか。難しい問題だ。筋肉のためとは言え、私ひとりではどうにかできる話ではないな。
「そういえば、この街には魚が無いですよね。魚はあまり好んで食べられないのですか?」
「海から遠いですから運んでいる途中で痛んじゃいますね。川魚なら少し出回りますけれども、魔物が出てからは見かけなくなりましたねぇ。まぁ、食べ物にも困っていた時期に比べたらマシですが、やはり肉魚は必要なものですからねぇ。」
話が分かる人だ。診察が終わった。
「ありがとうございました。」
「今日一日包帯を巻いておけば、もう病院に来なくても大丈夫です。フェイスさんには病院に来るように伝えてくださいますか?あの人、来ないんですよ。」
「分かりました。言っておきます。」
「ああ、それとこれ。」
棒を渡された。
「いちおうね。転ばないように、杖がわりに使ってください。」
やはり冒険者には棒が必要なのか。
装備が気になるので、武器屋さんにも寄った。
「こんにちはー。」
「あ、マッチョさん、昨日はお疲れ様でした!凄かったらしいですね!」
「ええ。少し筋肉痛が残りました。」
この痛みは次なる筋肉へのステップだ。
「私の装備のメンテナンス、どのくらいかかるものなんでしょうか?」
「斧の方は三日もあればお渡しできるかと思います。あんなデカい魔物相手でもたいしたダメージも無さそうですから。鎧はバラしてみないと分かりませんね。」
よかった。何度も筋トレに使った道具なので、少し愛着が湧いていた。武器として使えなくなったら、筋トレの道具に作り直してもらおうと思っていたくらいだ。
「兜の方は新しいのを買った方が安くなりますね。既製品ですし。」
「では兜は新しいものをください。」
「しかしそのう、マッチョさん、皮の防具ばかりでいいんですか?いや、金属の鎧となると高くはなりますが、防御力は上がりますよ。重量もありますが、マッチョさんなら大丈夫じゃないですか?」
フェイスさんのような鎧か。うーん。軽さを取るか、防御力を取るか。昨日は酷い息切れになるまで追い込んだからなぁ。継戦能力という意味では軽さの方がいいような気もする。
「ちょっと私だけでは判断つかないですね。ギルドに行って相談してみます。」
「では鎧のメンテナンスより先に、斧の方に手をつけますね。」
ギルドに入ったら、意外と閑散としていた。
話を聞くと、深夜まで飲み食いをしていて冒険者の人たちはまだ寝ているらしい。もうすぐお昼になるのに。
「マッチョさん、昨日はお疲れ様でした。」
ルリさんは最後まで飲み続けていたらしいのだが、まったく普通で笑顔だ。普通なところが怖い。適当なタイミングで席を外して良かった。
「ルリさんもお疲れ様でした。そういえば村長は昨日どうしたんでしょう?」
「いろんな人に話を聞いて、今朝早く王都へ向かったそうですよ。なんでもソロウでは無いものが欲しかったらしくて。」
なにが欲しかったんだろうなぁ。簡単な挨拶しかしてなかった。
「ギルマスからお話があるそうです。ギルマスの執務室の場所は分かりますよね?」
「ああはい。以前連れて行ってもらったところですね。」
「昨夜何人か潰れてしまって、カウンター業務はいま私ひとりなんですよ。すみませんが、一人で行ってもらえますか?」
昨夜なにがあったんだ。
聞かないほうがいいだろうなぁ・・・
コンコン。
「失礼します。」
「おう、入れ。」
フェイスさんはまだあちこち痛そうだ。
「ドクターがちゃんと病院に来いって言ってましたよ。」
「病院は苦手なんだよなぁ。まぁ用事が済んだら行くよ。ほれ、今回の報奨金。金貨400だ。」
テーブルの上にどかんと革袋を置かれた。家が買えるじゃないか。
「こんなにもらっていいんですか?」
「ギルドと折半してこれだ。軍隊で倒せない相手を倒したんだ。少ないくらいだろう。魔石だけで金貨1000とか2000くらいの価値はあるもんだぞ。魔石の鑑定や魔物の解剖が終わったら、あとで追加の報奨金も出るかもな。」
そうなのか。
「ああ、カネともうひとつ。言った気がするが、三日後に俺と一緒にお前も王都に行くぞ。ギルドのグランドマスターに報告に行く。体調を整えて、装備も整えておけ。あとお前たぶん帰って来てもやる事が無いだろうから、世話になった街の人間に挨拶もしておけ。」
「やる事が無い?」
「大物を倒したからなぁ。しばらく魔物退治の依頼はないだろう。お前、なんか知らないが肉を食わないといけない宗教なんだろう?ソロウに帰って来ても肉を食い続けられるほどウチのギルドでは稼げなくなる。ほかの連中の食い扶持の分、お前が働いたらアイツらが食えなくなる。」
私は魔物を倒したことで、別の土地に行かなくてはいけないのか。なんだか理不尽だなぁ。
「そんな顔するな。お前ならどこの街に行っても大丈夫だ。それになぁ、俺たちは冒険者だぞ。旅くらい経験しておけ。お前ならたぶんどこかでなんか面白いことを見つけると思う。」
すごい雑な言い方をされた。
旅。
うーん。筋トレをするのであれば、できれば定住した方がいいのだけれども、タンパク質が足りない状況に身を置いていても仕方が無い。
「けっこうこの街に愛着が湧いてきていたんですけれどもねぇ。フェイスさんの指導もまだ受けている途中でしたし。」
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