現代文ショートショート集

文字の大きさ
2 / 4

笑顔

しおりを挟む
 僕はたまに愛想が悪いとか、冷たいとか、会話が足りないとか、あまり喋らない人だと思われることがある。
 特別嫌っているというワケでも無い。むしろそれは相手に対してニュートラルな状態だ。きちんと挨拶もするし、気が向けばちょっとした雑談もするし、話しかけられたらそれなりに話す事もある。
 
 コミュ障なのではないかとも思われがちで、オマエはよく分からないとも言われたこともある。
 でも、コミュニケーション能力の低い人が、ショップ店員と新作のジーンズのフォルムの話をしたり、さっき会ったおばあさんと相席してご飯を食べながら一時間も身の上話を聞いたりはしないと思う。
 たんに気分屋なだけなのだろうと思っている。

 ところで、世の中にはこんなアホがいるのかと感じることがある。
 例えば高速道路のSA で困っている人を助けたときに、助け方に文句を言い出した人がいた。
 こういう手合いに対して、人と認識することが僕にはできない。人間のかたちをしているけれども、なにか人間に似た別の物体だ、と思うことにしている。いや、思うことにしているというのは僕の建前だ。僕の中で自動的に目の前の対象がそういう分類に区分されるようになってしまっている。

 僕はそういう人に対して、ものすごく笑顔になる。自分より頭の良くない人を見下したいワケでは無い。余計な隙を作って余計な因果を作らないためだ。なによりこの目の前の物体と関わる時間を一秒でも少なくしたい。
 僕自身のこころの安定のためでもある。苛立ちや不満やモヤモヤは飲み込む。
 そして「うん」と「はい」と「そうですね」を多用する。この三つで意外と会話は成立する。
 
 そもそもここまで頭が良くない人というのは、話せば分かるというタイプでは無い。殴られても理解できず、逆恨みされるのが関の山だ。逆恨みされる筋合いも無いのだけれど。
 いつかどこかで誰かに殴られて服を剥かれてスマホと財布を取られて、山か海に捨てられるのだろうが、それは僕が考えることでは無い。彼の問題だ。

 日本では毎年数万人が行方不明になっていると聞くが、たぶんこういう人が消えてしまうのだろうと思う。誰も探したがらないような人は捜索願いも出ないだろうから、実際はもっと多いのかもしれない。

 こういう人と別れの時間が来ると、僕は嬉しさや安堵とともに、少しだけ寂しくなる。
 なぜ最低な出会いが寂しくなるのか。
 この問いに対して僕はまだ答えを持っていない。少なくとも行方不明者に対する感傷では無い。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

処理中です...