ブラック企業「勇者パーティ」をクビになったら、魔王四天王が嫁になりました。~転職先はホワイト企業な魔王軍〜

歩く、歩く。

文字の大きさ
47 / 181

46話 シラヌイママ

しおりを挟む
 ポルカを保護して、今日で五日目になった。
 私はポルカを抱きかかえてディックの見送りをしていた。

「なるべく早く帰るよ、ポルカの面倒はよろしくね」
「任せといて。あんたこそしっかり仕事しなさいよ」

 今日は、私が休暇日だ。って事でディックが留守の間、しっかりポルカの面倒を見てあげないとね。
 最近、ポルカの相手をするのが楽しくて仕方ない。だって単純に可愛いし、素直な子だから反応が面白いし。こう言っちゃあれだけど、子育てするのがすごく楽しいの。
 それに今の状況だと、私とディックが夫婦みたいだし……それも照れ臭いながら嬉しいようなで、とても幸せな気分になれた。

「さてポルカ! とっとと家事を済ませますか!」
「はーい!」

 でもってポルカも大分慣れてきたのか、笑顔を見せる事が多くなっていた。
 まずは洗濯から済ませましょう。でかい桶に水張って、洗剤ぶち込んで、汚れた服を入れたら、

「はい踏み込めー!」
「踏み込めー!」

 ポルカと二人で桶の中で足踏みする。手でこするより、こうした方が沢山の服を洗えて楽なのよ。
 んでもって軽く伸ばして干していく。脱水してないから水が滴ってるけど、別に問題なし。
 篝火を出して、一気に蒸発させちゃえばいいんだもん。

「わぁ! お洗濯ものから雲が出て来た!」
「私の火力ならこれくらい楽勝よ。洗濯物はこれでおしまい、次は掃除!」
「掃除ーっ!」

 ディックから教わったけど、まずは高い所から埃を落として、しっかり水拭きした後、乾拭きをして仕上げる。ただこれだけの事で、部屋が見違えるように綺麗になっていく。
 後は棚の整理をして、ごみを片付けて……昼近くになる頃には、すっかり見違えた部屋になっていた。これならディックも驚くこと間違いなし!

「やりぃ!」
「やりー!」

 ポルカとハイタッチ。面倒なはずの家事が、すっごく楽しく感じられたわ。
 ってところで、ポルカのお腹が鳴った。食べ盛りだものね、そんじゃあ。

「なんか作ってあげる。あいつにゃ負けるけど、最近教えて貰ってるから色々作れるようになってきたんだから。食べたいものなんでも作ってあげる」
「じゃあポルカ、オムライス食べたい!」
「……うん、頑張ってみる(冷汗)」

 ……オムライスなんてすっげー難しくない?
 けどがんばれ私、ポルカにがっかりなんてさせられない!
 とりあえずチキンライスは簡単だからすぐ作るとして、問題は卵か……うーん、ごめんポルカ! ディックならふんわり出来るんだけど、私固い薄焼き卵しか作れないの!
 って事で、チキンライスの上に薄焼き卵を乗せただけの、あっさりしたオムライスの完成……後でディックに教えて貰わないと……。
 せめてケチャップでハートマークだけは作って、ポルカに出してみる。そしたらポルカは喜んで食べてくれた。

「美味しいよ! お姉ちゃんも料理上手なんだね」
「ポルカぁ……あんたって子は、良い子過ぎる……!」

 くそぅ、可愛すぎて涙が出てきちゃう。この子のためならなんだってやってあげたくなる。
 これが母親の気持ちなんだろうか……胸からあったかい物が湧き出て止まらない。
 以前までそんなに子供は好きじゃなかったのに、ポルカと一緒に過ごす内に、好きで好きでたまらなくなってくる。と言うか、好きが溢れて止まらない。
 ……着床薬を飲みたくなってきた。きっとディックと子供が出来たら、ポルカみたいに可愛い子が生まれるでしょうね……。

「お姉ちゃん、変な顔してる」
「へぇっ!? いやいや何でもないから、はは……」

 やっば、妄想にふけってだらしない顔になってた……ポルカの前だとガードが甘くなってしまう。
 案外子煩悩だったのかしら、私……多分際限なく甘やかしてしまうタイプねこれは……。
 食後、お腹がいっぱいになって眠くなったのか、ポルカはウトウトし始める。ベッドに運んで寝かせてやると、私の手を握って甘えてくる。

「おやしゅみなさい……」

 眠気で舌足らずになってる。ポルカの手は暖かくて、私まで眠くなってきた。
 ……なんだか、返したくないなぁ。
 ずっとこの子と一緒に居たい。でもポルカには、帰るべき居場所があるのよね……。

「ん……おと……さん……おかあ……さん……」

 寝言で両親を求め、苦しい寝顔になる。フェイスに縛られた心を解き放つには、やっぱりウィンディア人を助けないと。
 私だけが幸せになったって駄目。この子が幸せになる事こそが、私にとっての幸せよ。

「安心して、ポルカ。私達が必ず、貴方の幸せを取り戻すから」

 その後私は、ポルカが目を覚ますまで傍で見守っていた。

  ◇◇◇

 ポルカが目を覚ました後は、夕飯の買い出しに行く。ディックが帰ってくる前に、晩御飯作って待ってあげないと。
 トマトが安かったから、ズッキーニとかの野菜も合わせて買っていく。これだけじゃ味気ないからパスタも買って、ラタトゥイユでも用意してみましょうか。
 メイライトから聞いたんだけど、ラタトゥイユはパスタソースにしてもおいしいらしい。ディックにゃ足りないでしょうし、ついでにハンバーグでも作っといてあげよかな。
 夕飯の献立を考えるのって面倒だけど、うきうきしちゃうな。ディックが美味いって言ってくれるのを想像するだけで笑顔が出てきちゃう。
 なんだろ、あいつと早く結婚したくなってきた。なんの他愛ない日常のはずなのに、凄く幸せでどうにかなりそう。

「ポルカも手伝ってみる? 一緒にディックを驚かせてみようよ」
「うん! ポルカも作るー!」

 って事で一緒に調理開始。野菜を慎重に切って、ハンバーグはしっかり空気を抜いてタネを作る。ディックが帰ってきた後にでも焼き始めればいいでしょ。
 ラタトゥイユは中火でゆっくり煮込んでいく。ポルカと一緒に出来上がる様子を見ていたら、ノックの音が。

「ディック? 帰ってきた?」
「正解。丁度夕飯時かな?」
「その通り! ポルカと一緒に作ってたのよ、ねっ」
「ねっ!」
「そっか。すっかり仲良しになっちゃったね」

 そう言い、ディックは私とポルカの頭を撫でてくる。未来の旦那に褒められたと思うと、ついつい笑ってしまった。

「って違う違う違う! ポルカの前ならともかく、こいつの前でんな事考えるな!」
「どうしたんだろ、お姉ちゃん」
「幸せ慣れしてないせいでオーバーフローしたんだと思う、大丈夫だよ」

 そりゃ、こんだけ幸せ感じた事ないんだもの。仕事以外に自分の居場所が出来るのがこれだけ嬉しい事なんて、思ってもなかったな。
 ディックに今日一日の事を伝えながらの夕飯は、いつものご飯以上に美味しく思えた。最後まではしゃぎながら過ごして、疲れたポルカを寝かしつける頃には、私もちょっとへばっていた。

「お疲れ。お茶でも入れようか?」
「タイムサワーのお茶でお願い」

 ディックが最初に送ってくれた物だから、思い入れのあるお茶だ。飲むと胸がすく香りがして、気分が落ち着いてくる。

「ウィンディア人の動向は?」
「ほぼ全部つかめてきた。魔王やリージョン達と作戦の確認もしてきたし、あと三日もあれば行動に移せるよ」
「凄いスピードで進んでるわね。やっぱりあの人の協力は大きいわ」

 今作戦に当たっては、バックにある人物の協力も含まれている。人間達に一泡吹かせる作戦にゃ、強力な援軍だわ。

「大規模かつギャンブルの要素もある作戦だけど、分のいい賭けだ。エンディミオンの影響下にある人間達なら、必ず飛びつくはず」
「あとの問題はフェイスか。あいつの所在さえわかればいいんだけど……」
「今の所目撃情報が無くてね。フェイスの位置が分からないだけで途端に不利になる作戦だ、ジョーカーを早く見つけないとな」
「そうね……ポルカのためにも、なんとしてもね」

 ポルカと別れる事になるのは寂しいけど、それがあの子にとって一番だものね。

「そうだ。シラヌイ、明日の夜、ポルカをちょっと連れ出そう。あの行事があるんだろ?」
「あ、いいかもしれない。年に一度の行事だし、あの子も喜ぶと思う」

 作戦前の壮行会としてもぴったりだわ。きちんと準備してあげないとね。
しおりを挟む
感想 177

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...