ブラック企業「勇者パーティ」をクビになったら、魔王四天王が嫁になりました。~転職先はホワイト企業な魔王軍〜

歩く、歩く。

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58話 バカンスに到着。

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「見えてきた、妖怪リゾートだ」

 ディックが言うなり、私は身を乗り出した。
 眼下にはオアシスを中心に広がる、巨大な温泉施設が見える。ひと月半前に来たばかりなのに、すごく久しぶりにきた気がするわ。
 それによく見ると、新しい区画が出来ている。そこには、空を飛ぶ翼を持った人達の姿が見られた。

 ウィンディア人だわ。ドレカー先輩が彼らのために、居住区を作ってくれたみたい。
 ポルカが居るのはあそこね、会うのがもう待ちきれないわ。
 ペガサス便が妖怪リゾートに着陸する。直後、

『いらっしゃいませー! 魔王四天王様と英雄ディック様!』

 妖怪達が一斉に現れて、私達を熱烈歓迎してくれた。

『やあやあ そこに居りますは 我らを救った勇者様♪』
『待っていました 会える日を 巨人の脅威はもういない♪』
『此度はなんなり申してください どんな我儘聞きますよ♪』
『再びようこそ! 妖怪リッゾォートへ!』

 相変わらずの歓迎ぶりだわ。前来た時はディックのイップスや魔導具の事があって受け入れられなかったけど、余裕があると歓迎されているのがわかって嬉しくなるわね。

「はっはっは! よく来てくれたな諸君、宇宙一いつもどおりの男! イン・ドレカーが代表して歓迎しようじゃないか!」

 それでもって来た来た、妖怪達のボス、ドレカー先輩が。また神輿に乗ってのパフォーマンスでも見せてくれるのかしら……!?

「え、ちょ、ディックあれ……!」
「……ダイダラボッチ!?」

 そう、五メートルサイズに小さくなってるけど、ダイダラボッチがドレカー先輩を背負ってのしあるいてきたのだ。
 でもってドレカー先輩は高笑い。もしかして、ダイダラボッチを使役しているのかしら。

「どうかね二人とも! 君達が倒した後、ちょっと蘇生させて我が従僕にしてみたのだ。魔導具の力を受けていないから従順その物、頼りになる従業員だよ!」
「妖怪達が怯えるんじゃないのか?」
「大丈夫! 君がぶった切った奴より小さいからむしろ人気者になっているよ」

 どんな感覚してんのこの妖怪達。いや、怯えてないならいいんだけどさ……。
 ダイダラボッチを初めて見る他の四天王達は興味津々だ。確かに客寄せとしてはいいマスコットかもしれない。……いいのかしら?

「あれがダイダラボッチか? 随分小さいな」
「ドレカーが小さくしているんだ、実際はあれの百倍は大きいんだよ」
「一国を滅ぼす程の力を持った危険な化け物だったんだから。ハヌマーンが無かったら、私達でも倒せないような怪物よ」

 でもそんな奴を、ディックは刀一本でぶった切ったのよね。
 ディックは筋肉質だけど痩せ型で、とても巨人を倒すような男には思えない。でもディックは山のような化け物は勿論、凶悪な勇者でさえも倒す逞しい男だ。

 そんな男が彼氏か、なんだか自慢したくなるな。私の男は最高に強い男なんだって。

「シラヌイちゃーん、なんでそんなドヤ顔してんのぉ?」
「してない」
「……尻尾を揺らしながら言うセリフでもあるまい」

 うぐ……いいでしょ別に。自分の男自慢するくらいさぁ……。
 けど言おうとすると恥ずかしくなって言い出せない自分が居る。私って変なところでいくじなしだなぁ。

「二泊三日の間、沢山楽しんでくれ。特にディックとシラヌイは前回バイトさせてしまったものな」
「母さんを呼ぶためだったんだ、かまわないよ。それに旅館の仕事も楽しかったし」
「そうかそうか! 実は君の料理は好評でね、また食べたいとリピートの声が多かったんだよ。もし魔王軍を辞めたらぜひうちに来てくれ、破格の待遇で雇わせてもらおう」
「シラヌイも一緒なら、考えようかな」
「……ぜひ式場もご検討ください」

 先輩の背後からクミン奥様がひょっこり現れた。無言で出てくるとやっぱ恐いなこの人。
 改めて先輩が奥様を紹介すると、リージョン達は酷く驚いた。でもって退職の理由も聞いて、男らしい心意気に皆納得していた。

「では先輩、先月のようにまた魔王軍に戻ってこられては? 怪物が居ない今、復帰しない理由はないかと……皆喜びますよ」
「すまないなリージョン、この地に愛着を持ってしまってね、ダイダラボッチ無き後も私の頭にあるのは、リゾートの経営だけだ。それに今更元四天王が戻っても邪魔なだけだろう。残りの人生は大勢の人々を笑顔にする事だけに集中しようと思うよ」
「そうですか……失礼しました、差し出がましい事を」
「気にするな! 私は宇宙一器の大きい男、イン・ドレカー! 謝罪など不要さ!」

 ドレカー先輩は笑ってそう答えると、ぽんと手を叩いた。

「そうそう! ディックにシラヌイ、君達を待っている者が東地区に居る、早く会いに行ってやるといい。ガラン、マサラ!」
「はいよ!」
「参上だな!」

 ガランとマサラが現れて、私達に手招きしている。案内してくれるのかな?

「私や四天王のような奴が一緒ではムードが無いだろう? さぁ、行きたまえ」
「ありがとう、ドレカー。行こうシラヌイ」
「ええ!」

 私達を待っていてくれる人、もう一人しかいないじゃない。
 ガランとマサラをせかして、目的地に到着する。そこは背の高い南国の木が生えた場所で、樹上に家が作られている。

 頭上を行き来しているのは、ウィンディア人達だ。
 皆私達を見るなり、大喜びで降りてくる。代わる代わる握手されて、感謝の言葉をかけられた。
 勇者フェイスから救ってくれてありがとう! そう口々に言われて、胸が温かくなった。

「お兄ちゃん? お姉ちゃん?」

 そしたら、ずっと会いたかった女の子が出てきた。
 一週間だけだったけど、私達の娘になってくれた、とても可愛い女の子。小さな翼と大きな勇気を持った女の子。

「ポルカ! 会いたかった、ポルカ!」
「お姉ちゃん! お姉ちゃんだ!」

 私は思い切りポルカを抱きしめて、再会をおおいに喜んだ。
 やっぱり、ポルカの抱き心地は最高だわ。
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