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73話 世界樹の巫女の本性。
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「こらー! 待ちなさいそこの悪戯者!」
私から果物を奪った鳥は、私を煽りながら城内を飛び回っている。全く、人の好物奪っといて、何してんのよこのぉ。
『ふっはっはー! そんなへなちょこ足で私に追いつけるものかー!』
「くっ……うりゃあ!」
ド根性で鳥を捕まえ、アップルマンゴーも取り返す。こんにゃろ、よくも私をおちょくってくれたなぁ。
「さぁて、どうしてくれようか……こんがりと焼鳥にしてくってやろうかしら」
『や、やめい! 私を食べたら恐ろしいぞ、腹を下すぞ!』
「あいにくサキュバスに食中毒は効かないのよ。さぁ、年貢の納め時!」
どうだ、これが四天王シラヌイの底力よ。
なんて勝ち誇っている内に、だんだんと我に返ってくる。
……私、どうしてこの鳥を追いかけていたんだろう。
考えてみると、妙ね。ディックの声も届かないくらい追いかけるのに熱中するなんて、今までの私を考えると変よ。
「あんた、何かした?」
『ほぉ、私の幻術に気付いたか。ただのスカではなさそうだな』
言うなり、鳥は私の手から逃れた。
そういや、私と鳥がこれだけ暴れたのに、城の中は落ち着いている。普通なら憲兵とかが来てもおかしくないのに。
『周囲の認知を書き換えた。私と貴様が暴れても大した事はない、そう思うようにな』
「認知の操作? ちょ、それ魔法?」
つーか、考えてみたらこの鳥……しゃべってない?
念話を使って明確に会話をしている。どうしてこんな不可思議な事に気づかなかったの? それにどうしてディックがついて来ていない? あいつは気配察知で私をすぐに見つけられる、あれだけ暴走していたら、すぐに止めてくれるはずじゃ?
まさかこいつが、認知を書き換えたから?
「あんた、何者なの? 認知を変えるなんて、高度な魔法じゃない」
『そいつは自分で調べてみる事だな。ただ、そうだな。楽しませてくれた礼だ。名前くらいは教えてやろう。私の名はシルフィ、幻魔、シルフィなり』
「幻魔?」
聞いた事がない。名前の印象だけ聞くと、幻を扱う存在のようだけど。
『ふふ、またいずれ会えるさ。貴様が妙に面白い物を持っているからな』
「何よそれ、ねぇちょっと! 待ちなさい!」
『待てと言われて誰が待つ? ではさーらばー!』
シルフィは溶けるように消えてしまった。
なんだったの、あれ……幻魔なんて聞いた事がないけど。
「あれ? 四天王さんだ」
「このような場所で、何をしている?」
後ろから声をかけられ、ハッとする。振り返ればそこに居たのは、世界樹の巫女姉妹。ラピスとラズリだ。
なんて言うか、世界樹の巫女ってもっと厳格な生活を送っているのかと思ったけど、結構自由に過ごしているみたいね。ラズリの方も巫女でありながら軍属だし、意外とエルフの社会って自由なのかな。
「巫女様……その、ちょっと道に迷ってしまいまして」
「そうか、エルフ城は入り組んでいるからな。彼とははぐれてしまったのか」
「ええ、お恥ずかしい限りです」
「大丈夫だよー、私達もよく道に迷っちゃうし。私なんかこの間、足滑らせて階段から転げ落ちたもんね」
「道に迷う以上の大事故!? お怪我は!?」
「平気平気、鼻の骨折れただけだから」
「重傷ですよ!?」
この子の頭も重症じゃない!? 大丈夫なの世界樹の巫女って!?
「ふむ、しかし貴方一人か……うん、丁度いいかもしれないな」
ラズリは急にもじもじし始める。何だろう、さっきの戦いを見ていたせいか、ギャップが凄い。
「ラズリ、もじもじしてちゃ分からないよ。ちゃんと言わないと」
「そ、それは……分かっているけれど……!」
あ、急に口調が崩れた。
……やっぱりこの子、普段のあの口調って……作ってるわね。
「ほーら、しゃんとする! 世界樹の巫女でしょ!」
「あうう……し、シラヌイさん! あなたをサキュバスと見込んで頼みがあります! わ、私に恋愛のノウハウを教えてください!」
「は、はいぃ?」
急な申し出に、私は裏返った声をあげてしまった。
◇◇◇
<ディック視点>
「紅茶はお好きですか? あいにくエルフの国ではコーヒーが流通していなくて」
「いえ、僕も紅茶は好きですので」
ワード外務大臣のオフィスに連れてこられたはいいけど、何を話すんだろうか。
オフィス内は書類で溢れかえっていて、彼の激務を物語っている。出された紅茶を頂くと、柑橘のような香りが鼻を抜けた。
「エルフは紅茶にうるさくて、何百年もかけて品種改良を重ねているんです。これはその中でも自慢の一品ですよ」
「なるほど……みかんやレモンを思わせる風味に、艶やかな後味。けど飲み込むと涼やかな甘みがある。美味しいですね」
「そこまで味が分かるなんて、嬉しくなっちゃうなぁ」
ワードははにかんだ笑顔を見せた。あどけない顔を見ると勘違いしてしまうけど、彼は僕よりもはるかに年上、四〇〇歳とか言っていたな。
僕よりもたくさんの経験をしている人が、こんな若造に何を聞こうとしているんだろうか。
「さて、ディックさん。貴方はかの四天王、シラヌイと恋人関係にあると伺いました」
外交官から話を聞いたのかな。だとしても人のプライベートをペラペラしゃべるのはどうなんだ?
「四天王と副官、サキュバスと人間……遥かな身分差があるかと思います。なのに貴方は、許されざる恋を成就させた。こちらとしては、大変興味深いお話です」
「……はぁ……?」
……なんだ、なんか妙に改まった話をしているんだけど。初対面の人間にしちゃいけない話をしようとしていないかこの人。
「それで、貴方にお伺いしたいのです。身分違いの恋を成就させる方法を教えていただけませんか!」
「それ初対面の人間にするべき相談ですかね!?」
色んな意味で頭のイカれた外務大臣に思わずツッコミを入れた僕であった。
私から果物を奪った鳥は、私を煽りながら城内を飛び回っている。全く、人の好物奪っといて、何してんのよこのぉ。
『ふっはっはー! そんなへなちょこ足で私に追いつけるものかー!』
「くっ……うりゃあ!」
ド根性で鳥を捕まえ、アップルマンゴーも取り返す。こんにゃろ、よくも私をおちょくってくれたなぁ。
「さぁて、どうしてくれようか……こんがりと焼鳥にしてくってやろうかしら」
『や、やめい! 私を食べたら恐ろしいぞ、腹を下すぞ!』
「あいにくサキュバスに食中毒は効かないのよ。さぁ、年貢の納め時!」
どうだ、これが四天王シラヌイの底力よ。
なんて勝ち誇っている内に、だんだんと我に返ってくる。
……私、どうしてこの鳥を追いかけていたんだろう。
考えてみると、妙ね。ディックの声も届かないくらい追いかけるのに熱中するなんて、今までの私を考えると変よ。
「あんた、何かした?」
『ほぉ、私の幻術に気付いたか。ただのスカではなさそうだな』
言うなり、鳥は私の手から逃れた。
そういや、私と鳥がこれだけ暴れたのに、城の中は落ち着いている。普通なら憲兵とかが来てもおかしくないのに。
『周囲の認知を書き換えた。私と貴様が暴れても大した事はない、そう思うようにな』
「認知の操作? ちょ、それ魔法?」
つーか、考えてみたらこの鳥……しゃべってない?
念話を使って明確に会話をしている。どうしてこんな不可思議な事に気づかなかったの? それにどうしてディックがついて来ていない? あいつは気配察知で私をすぐに見つけられる、あれだけ暴走していたら、すぐに止めてくれるはずじゃ?
まさかこいつが、認知を書き換えたから?
「あんた、何者なの? 認知を変えるなんて、高度な魔法じゃない」
『そいつは自分で調べてみる事だな。ただ、そうだな。楽しませてくれた礼だ。名前くらいは教えてやろう。私の名はシルフィ、幻魔、シルフィなり』
「幻魔?」
聞いた事がない。名前の印象だけ聞くと、幻を扱う存在のようだけど。
『ふふ、またいずれ会えるさ。貴様が妙に面白い物を持っているからな』
「何よそれ、ねぇちょっと! 待ちなさい!」
『待てと言われて誰が待つ? ではさーらばー!』
シルフィは溶けるように消えてしまった。
なんだったの、あれ……幻魔なんて聞いた事がないけど。
「あれ? 四天王さんだ」
「このような場所で、何をしている?」
後ろから声をかけられ、ハッとする。振り返ればそこに居たのは、世界樹の巫女姉妹。ラピスとラズリだ。
なんて言うか、世界樹の巫女ってもっと厳格な生活を送っているのかと思ったけど、結構自由に過ごしているみたいね。ラズリの方も巫女でありながら軍属だし、意外とエルフの社会って自由なのかな。
「巫女様……その、ちょっと道に迷ってしまいまして」
「そうか、エルフ城は入り組んでいるからな。彼とははぐれてしまったのか」
「ええ、お恥ずかしい限りです」
「大丈夫だよー、私達もよく道に迷っちゃうし。私なんかこの間、足滑らせて階段から転げ落ちたもんね」
「道に迷う以上の大事故!? お怪我は!?」
「平気平気、鼻の骨折れただけだから」
「重傷ですよ!?」
この子の頭も重症じゃない!? 大丈夫なの世界樹の巫女って!?
「ふむ、しかし貴方一人か……うん、丁度いいかもしれないな」
ラズリは急にもじもじし始める。何だろう、さっきの戦いを見ていたせいか、ギャップが凄い。
「ラズリ、もじもじしてちゃ分からないよ。ちゃんと言わないと」
「そ、それは……分かっているけれど……!」
あ、急に口調が崩れた。
……やっぱりこの子、普段のあの口調って……作ってるわね。
「ほーら、しゃんとする! 世界樹の巫女でしょ!」
「あうう……し、シラヌイさん! あなたをサキュバスと見込んで頼みがあります! わ、私に恋愛のノウハウを教えてください!」
「は、はいぃ?」
急な申し出に、私は裏返った声をあげてしまった。
◇◇◇
<ディック視点>
「紅茶はお好きですか? あいにくエルフの国ではコーヒーが流通していなくて」
「いえ、僕も紅茶は好きですので」
ワード外務大臣のオフィスに連れてこられたはいいけど、何を話すんだろうか。
オフィス内は書類で溢れかえっていて、彼の激務を物語っている。出された紅茶を頂くと、柑橘のような香りが鼻を抜けた。
「エルフは紅茶にうるさくて、何百年もかけて品種改良を重ねているんです。これはその中でも自慢の一品ですよ」
「なるほど……みかんやレモンを思わせる風味に、艶やかな後味。けど飲み込むと涼やかな甘みがある。美味しいですね」
「そこまで味が分かるなんて、嬉しくなっちゃうなぁ」
ワードははにかんだ笑顔を見せた。あどけない顔を見ると勘違いしてしまうけど、彼は僕よりもはるかに年上、四〇〇歳とか言っていたな。
僕よりもたくさんの経験をしている人が、こんな若造に何を聞こうとしているんだろうか。
「さて、ディックさん。貴方はかの四天王、シラヌイと恋人関係にあると伺いました」
外交官から話を聞いたのかな。だとしても人のプライベートをペラペラしゃべるのはどうなんだ?
「四天王と副官、サキュバスと人間……遥かな身分差があるかと思います。なのに貴方は、許されざる恋を成就させた。こちらとしては、大変興味深いお話です」
「……はぁ……?」
……なんだ、なんか妙に改まった話をしているんだけど。初対面の人間にしちゃいけない話をしようとしていないかこの人。
「それで、貴方にお伺いしたいのです。身分違いの恋を成就させる方法を教えていただけませんか!」
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