ブラック企業「勇者パーティ」をクビになったら、魔王四天王が嫁になりました。~転職先はホワイト企業な魔王軍〜

歩く、歩く。

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80話 生粋のドMエルフ

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 散々な目に遭った見学会だったな……。
 僕らはぐったりしながらエルフ城へ戻っていた。
 ラズリの暴走を止めるどころか、シラヌイまで追加で暴走してしまったし、もうめちゃくちゃだ。結局僕達が見学会を台無しにしてしまったんじゃないか?

「……今日、人生で最悪の日だわ」
「いや君が自分から失敗しに行ってるからね」
「嫌味かあんた」
「徹頭徹尾自爆しまくった君にだけは言われたくない」
「あうぅ……私を、私を見ないでぇ……!」

 ……まぁ、僕も内心嬉しかったし、強くは言えないんだけど。

「これにて見学会は終了です。ではまた後程、同盟の協定について話し合いますので、遅刻しないようお願いします」

 ワードの一声により外交官が去っていく。僕達に呆れた目を向けながら……。
 悪かった、悪かったからそんな目で見ないでくれよ。

「しかし、ディックさん。シラヌイ様ととても仲がよろしいようで、羨ましいです」
「は、ははは……いやその、ええ……まぁ……」

 ワードの生暖かい目が痛い、絶対バカップルと思われてるだろうなぁ。と思っていたら。

「ただ、本当に羨ましいです。僕がラズリ様にして欲しい事を平然としていますから。僕もあなた達のように、ラズリ様と過ごせたら……そう思います」

 意外な本人の願望が出てきた。

「しかし、ラズリ様から「あーん♡」されるなんて、思いもよりませんでした。あの感覚、まるで餌付けをされるかのような、支配される感覚。なんだかぞくぞくします」

 ……え? 今なんて言った?
 ワードは顔を赤らめて、ぞくぞくと体を震わせている。ラズリに支配される悦びに悶えているような……?
 まさかお前……。

「……一つ伺いしますが、もし彼女にプレゼントするなら何を差し上げますか?」
「僕ですか? そうですね……勇気を出して僕にリボンをつけて「どうぞ」と」

 ……は?

「……仮に、仮にですよ? ラズリ様がリボンを渡して来たらどうします?」
「その時は僕にリボンをつけて「どうぞ」と。もう、声も枯れるくらいめちゃくちゃにして、乱れた僕を存分に見てもらいたいくらいで……想像するだけで鼻血が出そうです……!」

 僕とシラヌイは顔を見合わせた。
 ……おい、なんだこいつ。なんでラズリの妄想をそのまま具現化しようとしてんの?
 まさか、まさかだけど……性癖が奇跡の合致を見せているのでは?

「あの、もしラズリ様がその……襲ってきた場合は?」
「なすがままに身を任せようかと」

 間違いない、性癖が見事に合致してやがるこいつら。
 思わずシラヌイと一緒に距離を取り、ひそひそと話し合う。

「……まさかのMかあいつ」
「嘘でしょ……なにこれ、天性のかみ合わせ? 色んな意味でばっちりじゃないのよあの二人」
「ティラノサウルス並のドSとトリケラトプス並のドMか、エルフってこんな種族だったっけ?」
「絶対違う、あの二人が特殊すぎるだけだ」
「これ、ラズリに知られたらまずくない?」
「まずいね。絶対世界樹よじ登って窓から夜這いをかけに行くだろうな」
「二十年の任期残ってんのにそんな事したらどうなんだろ」
「そりゃ、悪い事が起こるんじゃない?」
「だよねぇ……」

「二人で何をこそこそ話しているのですか?」

 件のラズリに声をかけられた。思わずびっくりして、二人でぎこちない笑顔を向ける。

「いえいえ! 別に私達はやましい事なんてなんにも」
「それよりラズリ様、いかがでしたか? ワード大臣との逢瀬は」

 シラヌイがぼろを出しそうになったのでフォローする。本当に、四天王とは思えないほど腹芸がへたくそだな君。

「あ、はい……とっても、最高でした。ワード大臣のお口にあーんが出来るなんて……思わず指を入れていじめたくなっちゃって……」

 だからそれアウトだっつってんだろエロ巫女が! ……多分、シラヌイも同じ事を考えてただろうな。
 ……けどある意味相性ばっちりだ。生粋のドSに生粋のドM、うん、申し分なさすぎるな。

「あっ、ラズリ様。先程はその……ありがとうございました」
「! ワード大臣……い、いえ! その……普段頑張っておられる貴方へのねぎらいの気持ちでして……」

 敬礼するラズリにてれてれしているワード。こうして見ている分には初々しいんだけど、その裏に見える生々しい欲望を考えると、素直に見守れない。

『主よ、我が力であの二人を繋げるか?』
「必要ないのにでしゃばるな」

 なんで急に出てきたんだハヌマーン、オチ担当はリージョンだけで充分なんだよ、お前の出る幕じゃない。と言うか余計に話がこじれるから黙ってろ。

『ふむ、一瞬だが、魔導具の気配を感じたのだがな』
「なんだって?」

 突然の発言に僕らは驚く。ハヌマーンはアンチ魔導具の性質から、近くにある魔導具を探知する事が出来るんだ。
 魔導具を持った者がエルフの国に来ている? 一体、何者だ。

「気配探知を使っても、怪しそうなやつはいないけど……」
「あら? ディック、あれ」

 シラヌイに肩を叩かれた。彼女が示す先には、呆けた様子のラピスが歩いている。
 手には見た事のない花が握られていて、大切そうに抱いていた。

「姉様、いかがされましたか? 気分でも悪いのでは?」
「んえ? あ、うーん、なんでもにゃい」

 いやなんかあっただろ、なんだその呂律が回らない感じ。

「その花、ストレリチアですか?」
「うん、そうだよー。シラヌイさん詳しいねー」

 結構花が好きだものな。にしても変わった花だ、まるで鳥の頭のようで、見た事がない。

「極楽鳥花とも呼ばれる花よ。花言葉がかなり堂々としていてね」
「どんな意味が?」
「「全てを手に入れる」、「万能」、「気取った恋」。こんな感じ」
「確かに、凄い自信満々と言うか……」

 いったい誰から貰ったんだろ、その花。城内の人間が渡した? 何かが違うな。

「えっとね、プレゼントしてくれた人が居るの。でも、秘密。私のとても大事な気持ちだから……」

 ラピスは夢見心地と言うか、ちょっと様子がおかしい。それって、城に不審者が入ったんじゃないのか?

「ラズリ様、あとでラピス様から話を聞いた方がいいですよ」
「わかっている」

 流石、防衛に関する責任者だ。
 しかし、一体誰だ? このエルフ城に忍び込んだ奴は。

  ◇◇◇

「下見はこれでOKだ。あとは、計画を実行に移すだけ」

 俺は世界樹の天辺で、エルフの国を見下ろしていた。
 たまんないねぇ、この雲の上からの景色。自分が偉くなったような気分になるよ。
 つか、実際俺は凄い奴なんだけどね。世界の全ては俺の物、誰にも邪魔されるもんじゃあないぜ。

「巫女様に挑戦状も渡したし、へへ、明日が楽しみだ」

 俺が持ってるこの力、使わないのは勿体ねぇ。早く試したいもんだぜ、俺の魔導具ガラハッド!

「さぁ、ショータイムだ。世界にまた、ワイル・D・スワンの名前が轟くぜ!」
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