ブラック企業「勇者パーティ」をクビになったら、魔王四天王が嫁になりました。~転職先はホワイト企業な魔王軍〜

歩く、歩く。

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161話 気狂いなドワーフ

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「あは、あははは! いやいやいや! 申し訳ないね勇者フェイス! それとイザヨイちゃん! 君達に会えて僕ってばもう嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて! あ、そうだね僕! ちゃんと歓迎の意を示さないと。僕とした事がほんと、申し訳ないね」

 コープは見えない何かと会話しながら、私達に歩み寄ってきた。
 さっきからこいつは誰と話してるの? 耳に手を当てては、明後日の方向に話しかけ、大喜びしている。

「おい……俺達を無視して、誰と話している……」
「あやややや、君達には見えないのかい? 僕の隣に居るじゃないか、もう一人の僕が! いいや隣だけじゃない、後ろにも、右にも左にも、ましてや君達の周りにも! 沢山の僕が囲っているじゃあないかぁ!」

 コープはけたけた笑い、首を時折九〇度に曲げながら、奇怪な動きで駆け回っている。
 奴に言われて周りを見ても、やっぱり何もない。幻術の類いを使っていれば、今の私なら感知できるけど、あいつはそれを使っている感じもない。

 ……つまり、コープは幻覚を見ているの?

 斜視の目は左右を同時に見て、カメレオンのように独立して動いている。長い舌を伸ばし、狂ったように笑い続ける姿は、ドワーフというより得体のしれないクリーチャーだ。

「こいつが、コープ……アプサラスを人形の魔女に変えた、ドワーフ……」
「……この、野郎……! てめぇが、アプサラスを……あんな目に、げほっ!」

「おやおやおや、僕の作った病気にかかっているようだねぇ。いい気持ちだろう? 僕も試したけど、胸が刺すように痛んですっごく苦しいんだよねぇ。苦しくて苦しくて、その痛みに興奮しちゃって僕ぅ、もうギンギンに勃っちゃったんだよねぇぇぇぇぇ!」

 試した? 自分で作った病気を、自分に試した? しかもそれで気持ちがいい?
 し、思考回路が全く理解できない。なんのために、そんな事をしたの? というよりどうしてそんな事が出来るの?
 常人の思考じゃない、こいつ、日記の通りの男だ!

「というか、人形の魔女って何? 僕そんなの作ったかなぁ?」
「しらばっくれんな……孤島の監獄に女閉じ込めて、人体実験繰り返しただろうがっ……!」

「孤島の監獄? ……あー、あったなぁそんなの。僕の夢のために色んな事やった場所。あーそうそう思い出したよぉ。で? それがどうかしたかなぁ。僕は別に悪い事をしてないじゃない。ただ女の子を誘拐して、僕の夢をかなえるために切り刻んで、人形に人格を移して捨てただけだよ? これのどこが悪い事なのかなぁ」
「あんた、それ本気で言ってるんじゃないでしょうね……?」

「勿論本気だよ? だって僕がやった事だよ? そんなの正しい事に決まっているじゃないか! 僕がやった事は全てが善! 僕の行動全てが全! 僕に愛されている僕は、何をしても許される特別な存在なのさ! ほら、僕の周りの僕もそう言っているだろう?」

 見えもしない幻影の同意を受け、コープのボルテージがより一層あがる。こうして会話しているだけでも虫唾が走る、こんな奴と一緒に居ること自体がもう、耐えられない。

「……何が目的よ、あんたは、病気を広めて、一体何をするつもりなの?」
「いい質問だよイザヨイ、君に試したこの肺の病こそが僕の計画を実現させるキーパーツ! そして君を選んだこの僕の先見の明を誉めてくれたまえ!」

 ……さっきからこいつ、私を義母さんと間違えている。そのせいか、一番腹の底に来る事を、平気で叫んでいた。
 義母さんに試した病気、つまり、私の義母さんは、こいつに病気を掛けられた。
 こいつのせいで苦しんで、悲しんで、ディックと離れ離れになった……!
 プロフェッサー・コープ……あんた、義母さんの!

「イザヨイの……仇か、この野郎ぉっ!」

 フェイスが、血を吐きながら叫んだ。

「うふふふふ。イザヨイの仇? 何を言っているのさフェイス、僕が一目惚れしたイザヨイは目の前にいるじゃないか。昔と変わらない、綺麗な顔をしているよねぇ。そして君も、彼から聞いた通り凄くかっこいい顔をしているよねぇ。ああもうたまらない、君達が欲しくてたまんない! 僕はこの時のためにずっと! 君達を欲してやまなかった! 僕の目的を知りたいだろう? 知りたいだろう! 勿論教えてあげるとも、僕はね、君達の体が欲しいんだ。その体が欲しくてほしくてもう、辛抱たまらなかったんだ!」
「……私達の体に、あんたの魂でも埋め込むつもり?」

「あっははは! そうしたいところだけど、無理なんだ。あの……なんだっけあの子? まぁいいか。モルモットで試したんだけど、元々魂のある肉体に魂を移植しても、拒絶反応が出て上手く行かないんだ。でも、魂のないまっさらな肉体だったらぁ? 邪魔になる魂が無いから素直になじむだろう! 何度も何度も実験した結果、僕はようやく答えを見つけたのさ! ……なんだい僕? ああそうそう、肝心な事を話すの、忘れてたねぇ」

 コープはまた幻影の自分と会話した。もう、こいつと話すのがきつくて辛すぎる……。

「肉体の量産は出来ても、魂の量産は出来なくてねぇ。どうやっても、コピーした魂が維持できなくて、すぐに壊れてしまったんだ。けど! この魔導具が来てくれたおかげで僕は! 念願の魂の量産に成功したのさ! 見せてあげよう、僕の夢を後押ししてくれた、最高のパートナーを!」

 コープが両手を広げると、床が割れて、台座がせりあがってきた。
 その台座に乗っている物を見て、私とフェイスは目を見張った。
 それは、つい最近までフェイスが使っていたはずの聖剣……エンディミオンだったから。
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