161 / 207
3部
162話 二つの魂
しおりを挟む
聖剣が輝いているのを見て、オクトは苦笑した。
ハローに話しかけているのだろう、所有者だから分かるのだ。
「今のマスターは、私なんだけれどな」
柄を突き、オクトは古書を開いた。
聖剣の真実を知ってから、彼女はシェリーを解放する術を探っていた。
この剣は、人の生きた魂を利用した禁断の兵器である。そんな物を使い続けるのは、さしものオクトとて気分が悪い。
それに、バランサーたる魔剣を失った事で、聖剣の力が暴発する可能性があるのだ。
現に聖剣の力は日に日に増している。魔剣に流していた余剰魔力が溜まっているのだ。聖剣に収まらなくなるのも、時間の問題か。
「アルターの時みたいに、また変な怪物が出ても困るしなぁ……」
……アルターに関してだが、オクトはある疑問を抱いていた。
ハローの激しい怒りによって、魔剣にアルター化が発生した。それがずっと引っかかっているのだ。
いくらハローの怒りが凄まじかったとしても、一人分の怒りや憎悪だけで、あれほどの怪物が産まれるものだろうか。特に聖剣と魔剣は完成品、アルター化を抑える仕組みが備わっていると考えるべきだ。
その仕組みを破壊するならば、少なくとも複数人の感情が必要ではないだろうか。
「シェリーの怒りが加わったとしても、力が強大すぎる気もするし。まぁ、考えてもしょうがないか」
それにしても、なんて楽しそうに光っているのやら。シェリーはハローとオクトを介し、外の世界を見ている。シェリーが楽しそうにしているのだから、きっとハローは、幸せな時を過ごしているのだろうな。
ハローの息災を知り安堵する一方、ナルガへの嫉妬も沸く。先代を独り占めして、狡い女だ。
「……ねぇシェリー、貴方はなんで、私を勇者に選んだの?」
机に突っ伏し、オクトは尋ねた。ハローが選ばれたのは分かるけど、自分がシェリーに選ばれる理由が分からない。
だって私、嫉妬深いし、陰湿だし……そう自嘲すると、
―でもハローが大好きなんでしょ?
「シェリー?」
―キグナス島から戻って、ハローはずっと泣いてた。誰かが守らないといけなかった。オクトがハローが好きだって、ずっと知ってたから。勇者になればハローを守ってくれるって思って、貴方を選んだんだ。
いつも一方的にしか話せないシェリーと、初めて会話した。
オクトは目をぱちぱちさせてから、苦笑して聖剣を突いた。
「私が先代を好きだったから選んだの? もう、理由が単純すぎるじゃない」
でも仕方ないか、シェリーは八歳だ。聖剣に封じられた瞬間から、肉体と精神は成長しなくなる。聖剣の思考は子供でしかなく、完全な欠陥品だ。
だからこそ、正しく使われたとも言える。シェリーは五百年間、悪人を自分に触らせなかった。子供は悪意を持った人間に敏感だから、そうした人物を避けてこれたのだ。
「ありがと、私を選んでくれて。貴方が居てくれたから、先代との繋がりを保ってこれたんだもの」
―どういたしまして。ナルガとも仲良くしてあげてね、私と一緒に居るおじさんからも、お願いされたから。
「やっぱり……貴方が私を止めていたのね」
ナルガと交戦していた時、聖剣は明らかに力が弱まっていた。本気のオクトと戦って、ナルガが死なずに済むはずがない。
結果的に、ナルガが生きていたから先代の心は治った。そういう意味では、シェリーに感謝しないといけないな。
「ん? おじさんって、誰?」
シェリーのこぼした一言に首を傾げ、オクトは尋ねた。
でもシェリーは、答えてくれなかった。
ハローに話しかけているのだろう、所有者だから分かるのだ。
「今のマスターは、私なんだけれどな」
柄を突き、オクトは古書を開いた。
聖剣の真実を知ってから、彼女はシェリーを解放する術を探っていた。
この剣は、人の生きた魂を利用した禁断の兵器である。そんな物を使い続けるのは、さしものオクトとて気分が悪い。
それに、バランサーたる魔剣を失った事で、聖剣の力が暴発する可能性があるのだ。
現に聖剣の力は日に日に増している。魔剣に流していた余剰魔力が溜まっているのだ。聖剣に収まらなくなるのも、時間の問題か。
「アルターの時みたいに、また変な怪物が出ても困るしなぁ……」
……アルターに関してだが、オクトはある疑問を抱いていた。
ハローの激しい怒りによって、魔剣にアルター化が発生した。それがずっと引っかかっているのだ。
いくらハローの怒りが凄まじかったとしても、一人分の怒りや憎悪だけで、あれほどの怪物が産まれるものだろうか。特に聖剣と魔剣は完成品、アルター化を抑える仕組みが備わっていると考えるべきだ。
その仕組みを破壊するならば、少なくとも複数人の感情が必要ではないだろうか。
「シェリーの怒りが加わったとしても、力が強大すぎる気もするし。まぁ、考えてもしょうがないか」
それにしても、なんて楽しそうに光っているのやら。シェリーはハローとオクトを介し、外の世界を見ている。シェリーが楽しそうにしているのだから、きっとハローは、幸せな時を過ごしているのだろうな。
ハローの息災を知り安堵する一方、ナルガへの嫉妬も沸く。先代を独り占めして、狡い女だ。
「……ねぇシェリー、貴方はなんで、私を勇者に選んだの?」
机に突っ伏し、オクトは尋ねた。ハローが選ばれたのは分かるけど、自分がシェリーに選ばれる理由が分からない。
だって私、嫉妬深いし、陰湿だし……そう自嘲すると、
―でもハローが大好きなんでしょ?
「シェリー?」
―キグナス島から戻って、ハローはずっと泣いてた。誰かが守らないといけなかった。オクトがハローが好きだって、ずっと知ってたから。勇者になればハローを守ってくれるって思って、貴方を選んだんだ。
いつも一方的にしか話せないシェリーと、初めて会話した。
オクトは目をぱちぱちさせてから、苦笑して聖剣を突いた。
「私が先代を好きだったから選んだの? もう、理由が単純すぎるじゃない」
でも仕方ないか、シェリーは八歳だ。聖剣に封じられた瞬間から、肉体と精神は成長しなくなる。聖剣の思考は子供でしかなく、完全な欠陥品だ。
だからこそ、正しく使われたとも言える。シェリーは五百年間、悪人を自分に触らせなかった。子供は悪意を持った人間に敏感だから、そうした人物を避けてこれたのだ。
「ありがと、私を選んでくれて。貴方が居てくれたから、先代との繋がりを保ってこれたんだもの」
―どういたしまして。ナルガとも仲良くしてあげてね、私と一緒に居るおじさんからも、お願いされたから。
「やっぱり……貴方が私を止めていたのね」
ナルガと交戦していた時、聖剣は明らかに力が弱まっていた。本気のオクトと戦って、ナルガが死なずに済むはずがない。
結果的に、ナルガが生きていたから先代の心は治った。そういう意味では、シェリーに感謝しないといけないな。
「ん? おじさんって、誰?」
シェリーのこぼした一言に首を傾げ、オクトは尋ねた。
でもシェリーは、答えてくれなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる