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55話 人とあやかしの共存となる証

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 ヤマタノオロチが崩れていく様を、羽山の職員達は固唾をのんで見守っていた。
 クェーサー達は無事か、誰もが思った時、羽山のスマホに電話がかかってくる。スピーカーにして通話すると、

『救っす、サヨリヒメ救助成功、全員無事っす!』

 羽山工業の面々は歓声を上げた。カムスサはへたり込み、力なく笑った。

「……今にして思えば、伝承の時点で気づくべきだった……ヤマタノオロチは、人とあやかしの混血によって封印された……それはつまり、太古の昔から人とあやかしが共存していた証に他ならぬ……敵対する意味など、最初からなかったのだ……クェーサーの言う通り、空虚な理想を振りかざし、悪鬼羅刹を甦らすなど……愚かでしかなかったな……」

 肩を落とすカムスサに、羽山は微笑んだ。

「心ある限り、誰しもが間違えるものです。私も、ここに居る人とあやかしも、迷い間違いながら生きています」
「考え方の違い、生き方の違い、生まれの違い。色んな違いがある以上、仲たがいしてしまう事もあるでしょう。僕達はどのような形であれ、衝突してしまう生き物です」
「でもどんだけ喧嘩しても仲直り出来るし、生きていればいくらでもやり直せるもんさ。そいつは人もあやかしもおんなじだろ」
「サヨリヒメが戻ってきたら、ちゃんと謝りましょう。クェーサーがサヨリヒメを取り戻してくれたから、またやり直せますよ。きっとね」
「……すまぬ……そして、感謝する……! 羽山工業……クェーサーよ……!」

 カムスサは涙を拭った。
 最初こそがらくたと罵った心を持ったAIが、名前の通り、カムスサにとって眩いばかりの光となっていた。
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