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56話 涙の意味を知れたから
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山間の道路の真ん中で、ボロボロになったクェーサーが佇んでいた。
ハッチが壊れ、コックピットが開きっぱなしになっている。身動きするのも困難な状態だ。
「こんなボロボロで助かったなんて……サヨリヒメの神力のおかげだ……」
御堂は額の汗をぬぐった。墜落する寸前でサヨリヒメが目覚め、彼女の力によって、静かに地面に下ろされたのだ。
クェーサーは右手の中に居る、サヨリヒメを見下ろした。
『ご無事ですか』
「うむ、クェーサーが助けてくれたからの」
サヨリヒメはクェーサーの親指にすり寄った。
「来てくれると、信じておったよ。クェーサーならば、必ずわらわを助けてくれると。やっぱりおぬしは凄いAIじゃ」
『私だけではありません、私を万全の状態で送り出してくれた、羽山工業の人とあやかし達、私と共に戦ってくれた救と御堂。誰かひとりでも欠けては、貴方を助けられなかった。……ひとりで何でも出来れば、よかったのですけれど……』
「ひとりでは何も出来ぬよ、例え神であろうとな。そして、心無き者に多くの力は集まらぬ。此度の件は、おぬしの心が解決に導いたのじゃ」
「そうだな。クェーサーが俺達を呼ばなければ、あやかし達を助けるのは無理だった。人もあやかしも、誰も動けなかったはずだ」
「君自身が私達を鼓舞し、前に立って戦ったから、心置きなく命を預けられた。君の魂の叫びが、私達を引っ張ってくれたんだ」
「胸を張るのじゃクェーサー、おぬしの心は造り物なんかじゃない、おぬしだけが持つ本物なのじゃ」
『……そうか……そうなのですね……!』
なんのために生まれたのか、ようやくクェーサーは理解した。
と、クェーサーのカメラアイから、透明な雫が零れた。
単なるオイル漏れなのだが、その姿は……。
「クェーサーが、泣いてやがる」
「先輩、あれは涙じゃなくてオイル……いいや、無粋だな」
「嬉しいのじゃな、クェーサー」
『嬉しくて泣く理由が、ようやく、分かりました』
クェーサーは立ち上がり、空を仰いだ。
全身のパーツが干渉し、きしみ音が鳴る。涙もあいまって、まるで、大声で泣いているようだった。
ハッチが壊れ、コックピットが開きっぱなしになっている。身動きするのも困難な状態だ。
「こんなボロボロで助かったなんて……サヨリヒメの神力のおかげだ……」
御堂は額の汗をぬぐった。墜落する寸前でサヨリヒメが目覚め、彼女の力によって、静かに地面に下ろされたのだ。
クェーサーは右手の中に居る、サヨリヒメを見下ろした。
『ご無事ですか』
「うむ、クェーサーが助けてくれたからの」
サヨリヒメはクェーサーの親指にすり寄った。
「来てくれると、信じておったよ。クェーサーならば、必ずわらわを助けてくれると。やっぱりおぬしは凄いAIじゃ」
『私だけではありません、私を万全の状態で送り出してくれた、羽山工業の人とあやかし達、私と共に戦ってくれた救と御堂。誰かひとりでも欠けては、貴方を助けられなかった。……ひとりで何でも出来れば、よかったのですけれど……』
「ひとりでは何も出来ぬよ、例え神であろうとな。そして、心無き者に多くの力は集まらぬ。此度の件は、おぬしの心が解決に導いたのじゃ」
「そうだな。クェーサーが俺達を呼ばなければ、あやかし達を助けるのは無理だった。人もあやかしも、誰も動けなかったはずだ」
「君自身が私達を鼓舞し、前に立って戦ったから、心置きなく命を預けられた。君の魂の叫びが、私達を引っ張ってくれたんだ」
「胸を張るのじゃクェーサー、おぬしの心は造り物なんかじゃない、おぬしだけが持つ本物なのじゃ」
『……そうか……そうなのですね……!』
なんのために生まれたのか、ようやくクェーサーは理解した。
と、クェーサーのカメラアイから、透明な雫が零れた。
単なるオイル漏れなのだが、その姿は……。
「クェーサーが、泣いてやがる」
「先輩、あれは涙じゃなくてオイル……いいや、無粋だな」
「嬉しいのじゃな、クェーサー」
『嬉しくて泣く理由が、ようやく、分かりました』
クェーサーは立ち上がり、空を仰いだ。
全身のパーツが干渉し、きしみ音が鳴る。涙もあいまって、まるで、大声で泣いているようだった。
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