異世界転生させてくれないんですか?では魔王達と共に復讐させて頂きます。

歩く、歩く。

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16話 神達にとっては予想外

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 神々の異世界ビジネスは、アルテミスのせいで崩壊寸前に陥っていた。
 荒らしに荒らされた我々の領域はもはや修復不可能、無能な運営は当てにならず、私達の聖域は地獄と化していた。
 こうなったら、あの方へ直訴し、事を収めてもらうしかない。
 被害者の会を統率し、創造神様の下へ向かった。あの方ならば、異世界のシステムを作ったあの方ならば、此度の騒動を収めてくれるはずだ。

「謁見よろしいでしょうか、先日連絡を入れたアテナですが」
「入りたまえ」

 扉の向こうには、厳格な面立ちをされた男性が居た。我々の世界のトップに立つ神、創造神様だ。
 創造神様は異世界を覗きこみ、深刻な顔をされている。かのお方も此度の騒動を耳にされている、必ず助けてくれるはずだ。

「事の説明は必要ない。異世界で起こっている以上に関してだが」
「そうなのです! 異世界ハンターアルテミスとやらを、このまま野放しにしてはいられません! 即刻対処して頂けませんか!」

 被害者の会総出で訴えれば、アルテミスなんてすぐに排除してくれる。だって我々のトップなのだから。
 そう思っていた私達だが、創造神様はため息を吐いた。

「君達は、なぜ此度の件が起こったのか、理解しているのかな?」
「異世界の住民ごときが、我々に不満を訴えるためにデモを起こしているのです。神々に歯向かうなど無礼千万! このような事を許しては」
「住民ごとき、か。では君達の生活を支えているのはどこの誰なのだろうね」
「えっ?」

 思わぬ一言に我々は固まってしまった。

「元は、君達が人の魂を救う方法を作ってくれと訴えたのが始まりだった。君達の意志に賛同し作ってみたが……蓋を開けてみれば、君達の私利私欲を満たすために異世界を利用するばかり。こうなるなら、こんな仕組みなど作りたくなかったよ。だが、ついつい君達を甘やかしてしまい、異世界を歪んだシステムにしてしまった。これは私にとって最大の汚点だ。私のせいで、多くの人が不幸になっている……それを見て見ぬふりをし続けたのは、決して許される事ではない」

 なんだか雲行きが怪しくなり、私達は顔を見合わせた。

「しかし、中には異世界を正しく使っている者も居る。不幸な死を遂げた人間を平和な異世界へ送り、穏やかな生活を送らせる者も少なくない。アルテミスもそれを理解しているようで、そうした異世界は襲撃していない。我々と違い、ある程度の分別は付けているようだ」
「あ、あの、それでアルテミスの処理は……」

 私が切り出した時、にっくき異世界ハンターがまた犯行をしていた。
 惨たらしい方法で転移者を倒しているが、気になるのは魔王や他の登場人物も混ざって暴れている点。異世界そのものが、アルテミスに味方をしているのだ。

「この短期間で、あれほどの支持を集めるカリスマ性。彼とは一度話してみたくてね」
「! ま、まさか創造神様……あんな奴に肩入れすると言うのですか!?」
「私は理由を知りたいのさ、彼らがなぜあんなにも抗議しているのか、聞いてみなくては始まらない」

 そう言うなり創造神様は、異世界の運営へと向かわれた。
 あ、アルテミスを駆除してもらえるかと思ったら……なんだか雲行きが怪しいぞ……?
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