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ピンクの琥珀石
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ギルが握った掌の中にピンクの琥珀石があった。
カーニャはギル・ビオンディがフラッツ家を襲撃した犯人の一人であり、最後に自分を庇ってくれた男だと知っていた。
「知っていたのか!?カーニャ」
外が黒から薄紫に変わってもカーニャの意識は戻らなかった、ギルとカーニャの手はずっと琥珀石を挟んで繋がっている。
「俺はエリクサーが憎かったんだ、娘を助けることなく妻を奪ったエリクサーが・・・・・・」
「カーニャに死んだ自分の娘を重ねたのか」
「そうかもしれん、愚かなことだ、許されないことだ、懺悔でも贖罪でもなんでもいい、助けたかった!今度こそは助けたかった、俺から全てを奪ったエリクサーで!そうすれば取り返せると・・・・・・」
「むちゃくちゃな理屈じゃ・・・・・・死んだ者は帰ってこない、話もしない」
「俺はどうしようもなく馬鹿だ、大馬鹿だ!この娘に罪はない、そうだろう!ただそんな境遇に生まれて世界を知る前に放り出された、不可抗力だ、それは罪じゃない!」
「許してくれ!!〇×▽・・・」その名前は聞き取れなかった。
ギルの話は支離滅裂で要領をえないが激しい慟哭が男の傷口の深さを見せている、その傷口は乾くことを知らずに未だに血を流しているのだった。
半日前の幸せなランチの時間が遠い昔のようだ、俯いて泣いているギルとベス婆はカーニャの顔を見ることができないでいた、エミーだけが黙々とタオルを替え脈を診ている、時折カーニャの顔に耳や鼻を近づけてもいた、もちろん涙など流れない、心がないのかと思えるほどに冷静だ。
その口が(死んだ)と言いそうでギルはエミーに声を掛けられなかった。
夜が明けた、カーニャの顔に朝日が白く輝いている。
「ギル・・・・・・」
「!!」俯いたギルの背中がビクリと跳ねた。
「言い難いのだが・・・・・・」
「いい・・・・・・言わないでくれ」肩を落とした。
「手を、手を放してやってくれ、痛がっている」
「へっ!?」鼻水を垂らしたまま顔を上げたギルの視界に目を開けて笑うカーニャが映った。
「強く握り過ぎだ」エミーが笑った「乗り越えた!カーニャの勝ちだ!」
「ご心配おかけしました」その声は昨日よりも力強くはっきりとしていた。
「!!!」「カーニャーっあっ!!」
鼻水と涙でグショグショの髭面が抱き着いた。
「まったく人騒がせだよ!」ベス婆はひとりで竈に向い火の世話を始める、その背中が震えていた。
もう一度エミーが脈を診る。
「心臓の鼓動が強い、昨日までと違う、体温も正常に近いと思う、指先まで暖かいだろう?」
「本当か、本当なのか!?死なないんだな!!」
「はい、思い出しました!お腹が空く感覚、そう!お腹が空きました!」
伸びをするように両手を高く上げるとその顔は痩せてはいるけれど健康な肌の色を取り戻している。
ギュルルルルルッ 盛大にお腹が鳴った。
「やだっ!ごめんなさい」広げた腕をお腹に当てて恥じらいだ顔は年相応に見えた。
「よっしゃよっしゃ、食べんしゃい、食べんしゃい、昨日の残りで悪いが手直ししたぞい、特性スープに野菜を足しただけじゃがの」
竈を見ていたベス婆はいつの間にかスープを仕込んでいた、スープの具材は溶けていない、噛んで食べるものだ。
歯で噛んで食べると味覚がより脳に伝わる、再生した細胞が食べる喜びに目覚める。
「美味しい、こんなにも美味しいものだったなんて・・・・・・」
「誰のためにも世界は平等に美しくて、そして美味しい物だ」エミーが笑う。
「ほれっ、あんたも顔を拭きな、スープが不味くなるよっ」
雑巾を貰ってもギルは奇跡を見るように動けずにいた、スプーンの先で泣いているのか笑っているのか不明なギルのグシャグシャな顔、昨日のランチ同様にその顔を生涯忘れることはできない、自分のためにこれほど悩み苦しみ喜んでくれた顔を。
「ギルさん、本当にありがとう」
カーニャの声と共にギルはその手にピンクの琥珀石と人生を取り戻した。
ダーク・エリクサーの血管投与、その効果はより効果的で残酷だった。
適正のある者はより早く竜化が現れ、適正のない者には速やかな死をもたらした。
選別の高速化がより多くの竜化人間を出現させ、竜化人間はより多くダーク・エリクサーを投与されてより深く書き換えが進むことになった。
書き換えられた血がダーク・エリクサーを更なる高みに導いていく。
ドゴォッ 「ばぎゃぁっ」 元若禿研究員トガミの鉄拳が主任の顔面を捉えた。
「このくそジジィ、人の功績を横取りしやがって、許さねぇぞ」
「ぶわわっ!ブオッ」盛大な鼻血を手で押さえながら尻もちをついて逃げ惑う。
自身に血管注射を実行して瀕死だった男はダーク・エリクサーに適合して人が変わってしまった、大人しく従順だった男は攻撃的で好戦的な人間に変わった。
人を殴ることに呵責を覚えない、我を通すことを遠慮しない、他人の感情に同調しない。
書き換えられた細胞は体内に新たなホルモンバランスを構築していた。
トガミの額には竜化の証である菱形のあざが出現している。
気弱で遠慮がちの若禿はいない、同じ肉体でもここにいる青年は積極的でパワフル、何より他人を踏みつけることができるのはリーダーにふさわしい気質だ。
「きっ、貴様、突然何をするか!?儂は上司だぞ、こんなっ、こんなことがゆるされるとっ!?」
「うっせえよ、時代遅れの老害は消えな!!」
ドゴォッ 遠慮なく蹴り飛ばすと白い歯が飛び散った。
点滴用の器具を拾い上げると唖然と見守る周囲に対してトガミは鋭い視線を送って見回す。
「いいか!エリクサーの血管投与は俺様のアイデアだ、誰であろうとこの功績を騙る奴は許さない、裏切った奴はこうだ!」
バコオッ 再び主任を蹴り上げる 「ぎゃうっ」
「みんな聞いてくれ、血管投与は半分成功している、これからアポサル様に報告するが更なる実験が必要だ、俺と一緒に時代を作りたい奴は歓迎する、一緒に未来を創ろう!」
突き上げた拳、瞳には力が漲っている、なにより額に現れたアザは神の使徒である証、新たなカリスマの誕生だった。
カーニャはギル・ビオンディがフラッツ家を襲撃した犯人の一人であり、最後に自分を庇ってくれた男だと知っていた。
「知っていたのか!?カーニャ」
外が黒から薄紫に変わってもカーニャの意識は戻らなかった、ギルとカーニャの手はずっと琥珀石を挟んで繋がっている。
「俺はエリクサーが憎かったんだ、娘を助けることなく妻を奪ったエリクサーが・・・・・・」
「カーニャに死んだ自分の娘を重ねたのか」
「そうかもしれん、愚かなことだ、許されないことだ、懺悔でも贖罪でもなんでもいい、助けたかった!今度こそは助けたかった、俺から全てを奪ったエリクサーで!そうすれば取り返せると・・・・・・」
「むちゃくちゃな理屈じゃ・・・・・・死んだ者は帰ってこない、話もしない」
「俺はどうしようもなく馬鹿だ、大馬鹿だ!この娘に罪はない、そうだろう!ただそんな境遇に生まれて世界を知る前に放り出された、不可抗力だ、それは罪じゃない!」
「許してくれ!!〇×▽・・・」その名前は聞き取れなかった。
ギルの話は支離滅裂で要領をえないが激しい慟哭が男の傷口の深さを見せている、その傷口は乾くことを知らずに未だに血を流しているのだった。
半日前の幸せなランチの時間が遠い昔のようだ、俯いて泣いているギルとベス婆はカーニャの顔を見ることができないでいた、エミーだけが黙々とタオルを替え脈を診ている、時折カーニャの顔に耳や鼻を近づけてもいた、もちろん涙など流れない、心がないのかと思えるほどに冷静だ。
その口が(死んだ)と言いそうでギルはエミーに声を掛けられなかった。
夜が明けた、カーニャの顔に朝日が白く輝いている。
「ギル・・・・・・」
「!!」俯いたギルの背中がビクリと跳ねた。
「言い難いのだが・・・・・・」
「いい・・・・・・言わないでくれ」肩を落とした。
「手を、手を放してやってくれ、痛がっている」
「へっ!?」鼻水を垂らしたまま顔を上げたギルの視界に目を開けて笑うカーニャが映った。
「強く握り過ぎだ」エミーが笑った「乗り越えた!カーニャの勝ちだ!」
「ご心配おかけしました」その声は昨日よりも力強くはっきりとしていた。
「!!!」「カーニャーっあっ!!」
鼻水と涙でグショグショの髭面が抱き着いた。
「まったく人騒がせだよ!」ベス婆はひとりで竈に向い火の世話を始める、その背中が震えていた。
もう一度エミーが脈を診る。
「心臓の鼓動が強い、昨日までと違う、体温も正常に近いと思う、指先まで暖かいだろう?」
「本当か、本当なのか!?死なないんだな!!」
「はい、思い出しました!お腹が空く感覚、そう!お腹が空きました!」
伸びをするように両手を高く上げるとその顔は痩せてはいるけれど健康な肌の色を取り戻している。
ギュルルルルルッ 盛大にお腹が鳴った。
「やだっ!ごめんなさい」広げた腕をお腹に当てて恥じらいだ顔は年相応に見えた。
「よっしゃよっしゃ、食べんしゃい、食べんしゃい、昨日の残りで悪いが手直ししたぞい、特性スープに野菜を足しただけじゃがの」
竈を見ていたベス婆はいつの間にかスープを仕込んでいた、スープの具材は溶けていない、噛んで食べるものだ。
歯で噛んで食べると味覚がより脳に伝わる、再生した細胞が食べる喜びに目覚める。
「美味しい、こんなにも美味しいものだったなんて・・・・・・」
「誰のためにも世界は平等に美しくて、そして美味しい物だ」エミーが笑う。
「ほれっ、あんたも顔を拭きな、スープが不味くなるよっ」
雑巾を貰ってもギルは奇跡を見るように動けずにいた、スプーンの先で泣いているのか笑っているのか不明なギルのグシャグシャな顔、昨日のランチ同様にその顔を生涯忘れることはできない、自分のためにこれほど悩み苦しみ喜んでくれた顔を。
「ギルさん、本当にありがとう」
カーニャの声と共にギルはその手にピンクの琥珀石と人生を取り戻した。
ダーク・エリクサーの血管投与、その効果はより効果的で残酷だった。
適正のある者はより早く竜化が現れ、適正のない者には速やかな死をもたらした。
選別の高速化がより多くの竜化人間を出現させ、竜化人間はより多くダーク・エリクサーを投与されてより深く書き換えが進むことになった。
書き換えられた血がダーク・エリクサーを更なる高みに導いていく。
ドゴォッ 「ばぎゃぁっ」 元若禿研究員トガミの鉄拳が主任の顔面を捉えた。
「このくそジジィ、人の功績を横取りしやがって、許さねぇぞ」
「ぶわわっ!ブオッ」盛大な鼻血を手で押さえながら尻もちをついて逃げ惑う。
自身に血管注射を実行して瀕死だった男はダーク・エリクサーに適合して人が変わってしまった、大人しく従順だった男は攻撃的で好戦的な人間に変わった。
人を殴ることに呵責を覚えない、我を通すことを遠慮しない、他人の感情に同調しない。
書き換えられた細胞は体内に新たなホルモンバランスを構築していた。
トガミの額には竜化の証である菱形のあざが出現している。
気弱で遠慮がちの若禿はいない、同じ肉体でもここにいる青年は積極的でパワフル、何より他人を踏みつけることができるのはリーダーにふさわしい気質だ。
「きっ、貴様、突然何をするか!?儂は上司だぞ、こんなっ、こんなことがゆるされるとっ!?」
「うっせえよ、時代遅れの老害は消えな!!」
ドゴォッ 遠慮なく蹴り飛ばすと白い歯が飛び散った。
点滴用の器具を拾い上げると唖然と見守る周囲に対してトガミは鋭い視線を送って見回す。
「いいか!エリクサーの血管投与は俺様のアイデアだ、誰であろうとこの功績を騙る奴は許さない、裏切った奴はこうだ!」
バコオッ 再び主任を蹴り上げる 「ぎゃうっ」
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