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継承
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最後の黒服に背負われフレディはザ・ノアに帰還した、しかし意識はなく背中から腹に向かっての貫通痕、内臓はさらに酷いダメージを受けている、瀕死だ。
直ちにダーク・エリクサーの血管投与がなされた、腹腔内が出血多量で膨れている、常人ならとうの昔に即死レベル。
「フレディ様が一方的にここまで蹂躙されるなど想像できません、相手は女だと聞きましたが一体どんな化け物なのですか」
モントレー男爵が青ざめている。
「見た目は細い普通の女でしたが・・・・・・ことごとく我々の攻撃は避けられて一方的にやられました、理解できません」
黒服は震えている。
「クロワ様にはお伝えしたのか?」
「はい、兵を走らせました、もうこちらへ向かわれています」
「さぞやご心配だろう、この世界にたったお二人しかいない帰還者のお一人なのだ」
医療班が腹腔に溜まった血を抜き取っている、バシャバシャと床に飛沫を上げる。
「出血はどうだ、続いていそうか?」
「まだ続いているようですが、その量は減っています、このままいけばあるいは・・・・・・」
「助かりそうかい?」
ガラッ 足音もさせずにクロワが入ってくる。
「クロワ様!」
「酷くやられたものだね、予想外だよ」
「申し訳ございません、生きているのは私とフレディ様だけです」
「ホランドとインプにもまんまと逃げられたようです、得た物はなく失うばかりとはまいったね」
「申し訳ありません、その点は私にも責任があります」モントレー男爵が頭を垂れる。
「得た物といえば・・・・・・」黒服がポケットから黄金の小瓶を取り出す。
「王宮のエリクサーです、最後にトガミが手にしていました」
「ほう、ならば上出来です、よくやりましたね」
「クロワ様、このエリクサーも使えばフレディ様の復活もあり得るのでは!」
「うん?何故だい、それは一本しかないのでしょう?」
「残念ながらそうです、しかしこのままではフレディ様は助かりません、一か八かですがダーク・エリクサーと黄金のエリクサーの混合使用、やってみる価値はあるのではないでしょうか」
黒服は直接の上司たるフレディを尊敬し敬いもしているようだった、懇願に近い提案。
「なるほど、それも面白い提案だ」
「では!」「だがやらない、試す必要はない」喜んだ顔が一瞬で凍った。
「医療班、もう救命措置はいい、ダーク・エリクサーの血管投与も中止だ、それから出血した血は基底材になる、捨てる様な事をしてはいけないよ、勿論肉体も一緒だ」
「クロワ様!」縋る黒服を横目に青白い顔で横たわるフレディの傍らにクロワは立つ。
慈しむように見下ろすと半目で焦点を結ばない目を閉じさせる。
「がんばったね、僕たちが目指した世界、君の血を受け継いだ者がきっと実現する、それは君が神の国に立つのと同じ事だ、今だけお休み、君の記憶は生き続ける」
それは葬送の言葉。
「彼という個人は戻らない、失った自我を戻す術は哀しくもない、だから我々は創るのだ、死のない世界、知識も記憶も失わない世界、我々が不死であればフレディの記憶もまた不死、彼をこれ以上失う事はない、前を向け諸君、切り替えるのだ、立ち上がるのだ、悲しみに顔を伏せる事無く神の道を辿れ」
「クロワ様!!」「教団に幸あれ!」
その場にいた者は熱い涙を流した、カレッジ・ハイは安い口上でも舞い上がる。
「君、名前は?」「私はフレディ様の黒服補佐官でミゲルと申します」神の使徒の前に膝を付く。
「フレディの遺体を持ち帰ると同時に黄金のエリクサーを奪取した功績を評価します、今日より貴方をクロワ公爵家執事に任命します、ミゲルの名を捨て貴方がフレディの名を継承してください」
「!!ははっ」
「出来ますか?」
「謹んで御受けいたします、この身を捧げ忠臣することをお誓いいたします」
「よろしく頼みましたよ、フレディ」
「それでは早速ザ・ノアを出港させます、みなさん用意はよろしいですか」
「御意!!」
「よろしい、艦橋へ戻りましょう」
「モントレー卿、軍曹はどうしました?」
「彼らは陸路で向かうそうです、やはり船は苦手だと言っていました」
「困った人たちです、陸路でたどり着けるかどうかは分からないというのに」
「彼の地が存在するのが事実なら、またそれとは違う世界があっても不思議はありません、いずれにしろ神の御業、彼らが我々の味方であるうちは好きにさせてあげましょう」
「ダーク・エリクサーはやはり?」
「はい、持っては行きませんでした、そんなに長生きするつもりはないそうです」
「復讐に取りつかれた兵士、野垂れ死んでくれた方が好都合、彼らの武器は高度過ぎます、今は再現不可能なものばかり、吸収すべきものはありません」
「はい、私も好きにはなれません、正直この船から降りてくれて安堵しているところです」
「彼らが死ぬまでに何百人を道ずれにするかは知れないが永久の時の前には塵となる存在、到底選民にはなれはしない人種だ」
クロワ侯爵と初代執事フレディが彼の地から持ち帰ったのはエリクサーと拳銃などの武器だけでは無かった。
ボオオォォォォォッ 再び汽笛が鳴る、参集は締め切られた、撒かれた種は回収され次の繁殖地へと旅立つ時が来た。
青の巨大洞窟から鋼鉄の白い船体がゆっくりと姿を現してくる、主たる推進機関は蒸気による二軸スクリュー、補助に三本のマストが並び純白の帆が張られていく。
神の船に相応しい優雅な船体、しかし船首、船尾に大型の大砲が鎮座し、他にもハリネズミの様に銃口が伸びている、両舷には機関砲らしきものまで見える。
ノスフェラトゥ教団の弩級戦艦、ザ・ノアが出航した!
ニースへ向かう街道の途中でティアの匂いを追っていたカールとアフガンちゃんに追いついた、魔狼の姿のルイスを見てカールは驚きアフガンちゃんは尻尾をお腹に隠したが、ルイスが人の心を保ったままなのを分かると直ぐに受け入れてくれた、若者は順応が早い。
黒花火と共に街道にはニースを目指す早馬が溢れた、ティアの匂いは馬の蹄で壊され霧散したが人の流れの先にティアたちはいると確信できた。
「カール、君たちは一度王宮へ戻れ、この異変をみんなに伝えるんだ!」
「ルイスさんはどうするのですか?」
「僕はティアたちを迎えに行くよ、絶対に無事だから」
「王宮へ戻ってきますよね」
「・・・・・・多分いけない」
「ええっ、どうしてですか、王妃さまもみなさん悲しまれますよ!」
「僕のこの姿を見られた、もう戻れないよ」
「そんなぁ、みなさんは王妃様を助けた英雄です、少し毛深いくらいで気にする必要ないですよ」
「いいんだ、もう十分に良くして貰った、あっ、フローラ様とした約束破っちゃうな、謝っていたと伝えてくれないか」
「ルイスさん・・・・・・」
「さあ、この街道は危険だ、脇道にそれて王宮に戻ってこの事を伝えるんだ、頼んだぞ」
魔狼はその脚力を解放して走り出した、その足は馬を越えて道なき草原に消えた。
「ルイスさん」カールはその優しい魔狼の後ろ姿を生涯忘れなかった。
ニースの大洞窟の手前、海岸と闘技場を見下ろす位置にある丘で白と黒の煙を背にこちらに走ってくる三人と一人の姿が目に入った。
肩車のティアが最初に目に飛び込んできた、無事だった!
「ティアーッ!!」大声で叫ぶ、潮風が声を運ぶ、影が手を振った。
我を忘れてルイスは走った、拉致されていたのはほんの一日だ、その時間が永久の耐え難い苦痛だった、神獣レヴィアタンのマヒメを母に、義賊デル・トウローと魔狼ルイス・イカールを父にこの世に孵った神獣、大事な娘、ティア。
二人が走ってくる、また目指せる、マヒメのいる漂流島を、帰る、春愁の迷路に。
その島に、幻の島に手を伸ばした。
パアァンッ 遠くで銃声がした・・・・・・足が縺れた。
直ちにダーク・エリクサーの血管投与がなされた、腹腔内が出血多量で膨れている、常人ならとうの昔に即死レベル。
「フレディ様が一方的にここまで蹂躙されるなど想像できません、相手は女だと聞きましたが一体どんな化け物なのですか」
モントレー男爵が青ざめている。
「見た目は細い普通の女でしたが・・・・・・ことごとく我々の攻撃は避けられて一方的にやられました、理解できません」
黒服は震えている。
「クロワ様にはお伝えしたのか?」
「はい、兵を走らせました、もうこちらへ向かわれています」
「さぞやご心配だろう、この世界にたったお二人しかいない帰還者のお一人なのだ」
医療班が腹腔に溜まった血を抜き取っている、バシャバシャと床に飛沫を上げる。
「出血はどうだ、続いていそうか?」
「まだ続いているようですが、その量は減っています、このままいけばあるいは・・・・・・」
「助かりそうかい?」
ガラッ 足音もさせずにクロワが入ってくる。
「クロワ様!」
「酷くやられたものだね、予想外だよ」
「申し訳ございません、生きているのは私とフレディ様だけです」
「ホランドとインプにもまんまと逃げられたようです、得た物はなく失うばかりとはまいったね」
「申し訳ありません、その点は私にも責任があります」モントレー男爵が頭を垂れる。
「得た物といえば・・・・・・」黒服がポケットから黄金の小瓶を取り出す。
「王宮のエリクサーです、最後にトガミが手にしていました」
「ほう、ならば上出来です、よくやりましたね」
「クロワ様、このエリクサーも使えばフレディ様の復活もあり得るのでは!」
「うん?何故だい、それは一本しかないのでしょう?」
「残念ながらそうです、しかしこのままではフレディ様は助かりません、一か八かですがダーク・エリクサーと黄金のエリクサーの混合使用、やってみる価値はあるのではないでしょうか」
黒服は直接の上司たるフレディを尊敬し敬いもしているようだった、懇願に近い提案。
「なるほど、それも面白い提案だ」
「では!」「だがやらない、試す必要はない」喜んだ顔が一瞬で凍った。
「医療班、もう救命措置はいい、ダーク・エリクサーの血管投与も中止だ、それから出血した血は基底材になる、捨てる様な事をしてはいけないよ、勿論肉体も一緒だ」
「クロワ様!」縋る黒服を横目に青白い顔で横たわるフレディの傍らにクロワは立つ。
慈しむように見下ろすと半目で焦点を結ばない目を閉じさせる。
「がんばったね、僕たちが目指した世界、君の血を受け継いだ者がきっと実現する、それは君が神の国に立つのと同じ事だ、今だけお休み、君の記憶は生き続ける」
それは葬送の言葉。
「彼という個人は戻らない、失った自我を戻す術は哀しくもない、だから我々は創るのだ、死のない世界、知識も記憶も失わない世界、我々が不死であればフレディの記憶もまた不死、彼をこれ以上失う事はない、前を向け諸君、切り替えるのだ、立ち上がるのだ、悲しみに顔を伏せる事無く神の道を辿れ」
「クロワ様!!」「教団に幸あれ!」
その場にいた者は熱い涙を流した、カレッジ・ハイは安い口上でも舞い上がる。
「君、名前は?」「私はフレディ様の黒服補佐官でミゲルと申します」神の使徒の前に膝を付く。
「フレディの遺体を持ち帰ると同時に黄金のエリクサーを奪取した功績を評価します、今日より貴方をクロワ公爵家執事に任命します、ミゲルの名を捨て貴方がフレディの名を継承してください」
「!!ははっ」
「出来ますか?」
「謹んで御受けいたします、この身を捧げ忠臣することをお誓いいたします」
「よろしく頼みましたよ、フレディ」
「それでは早速ザ・ノアを出港させます、みなさん用意はよろしいですか」
「御意!!」
「よろしい、艦橋へ戻りましょう」
「モントレー卿、軍曹はどうしました?」
「彼らは陸路で向かうそうです、やはり船は苦手だと言っていました」
「困った人たちです、陸路でたどり着けるかどうかは分からないというのに」
「彼の地が存在するのが事実なら、またそれとは違う世界があっても不思議はありません、いずれにしろ神の御業、彼らが我々の味方であるうちは好きにさせてあげましょう」
「ダーク・エリクサーはやはり?」
「はい、持っては行きませんでした、そんなに長生きするつもりはないそうです」
「復讐に取りつかれた兵士、野垂れ死んでくれた方が好都合、彼らの武器は高度過ぎます、今は再現不可能なものばかり、吸収すべきものはありません」
「はい、私も好きにはなれません、正直この船から降りてくれて安堵しているところです」
「彼らが死ぬまでに何百人を道ずれにするかは知れないが永久の時の前には塵となる存在、到底選民にはなれはしない人種だ」
クロワ侯爵と初代執事フレディが彼の地から持ち帰ったのはエリクサーと拳銃などの武器だけでは無かった。
ボオオォォォォォッ 再び汽笛が鳴る、参集は締め切られた、撒かれた種は回収され次の繁殖地へと旅立つ時が来た。
青の巨大洞窟から鋼鉄の白い船体がゆっくりと姿を現してくる、主たる推進機関は蒸気による二軸スクリュー、補助に三本のマストが並び純白の帆が張られていく。
神の船に相応しい優雅な船体、しかし船首、船尾に大型の大砲が鎮座し、他にもハリネズミの様に銃口が伸びている、両舷には機関砲らしきものまで見える。
ノスフェラトゥ教団の弩級戦艦、ザ・ノアが出航した!
ニースへ向かう街道の途中でティアの匂いを追っていたカールとアフガンちゃんに追いついた、魔狼の姿のルイスを見てカールは驚きアフガンちゃんは尻尾をお腹に隠したが、ルイスが人の心を保ったままなのを分かると直ぐに受け入れてくれた、若者は順応が早い。
黒花火と共に街道にはニースを目指す早馬が溢れた、ティアの匂いは馬の蹄で壊され霧散したが人の流れの先にティアたちはいると確信できた。
「カール、君たちは一度王宮へ戻れ、この異変をみんなに伝えるんだ!」
「ルイスさんはどうするのですか?」
「僕はティアたちを迎えに行くよ、絶対に無事だから」
「王宮へ戻ってきますよね」
「・・・・・・多分いけない」
「ええっ、どうしてですか、王妃さまもみなさん悲しまれますよ!」
「僕のこの姿を見られた、もう戻れないよ」
「そんなぁ、みなさんは王妃様を助けた英雄です、少し毛深いくらいで気にする必要ないですよ」
「いいんだ、もう十分に良くして貰った、あっ、フローラ様とした約束破っちゃうな、謝っていたと伝えてくれないか」
「ルイスさん・・・・・・」
「さあ、この街道は危険だ、脇道にそれて王宮に戻ってこの事を伝えるんだ、頼んだぞ」
魔狼はその脚力を解放して走り出した、その足は馬を越えて道なき草原に消えた。
「ルイスさん」カールはその優しい魔狼の後ろ姿を生涯忘れなかった。
ニースの大洞窟の手前、海岸と闘技場を見下ろす位置にある丘で白と黒の煙を背にこちらに走ってくる三人と一人の姿が目に入った。
肩車のティアが最初に目に飛び込んできた、無事だった!
「ティアーッ!!」大声で叫ぶ、潮風が声を運ぶ、影が手を振った。
我を忘れてルイスは走った、拉致されていたのはほんの一日だ、その時間が永久の耐え難い苦痛だった、神獣レヴィアタンのマヒメを母に、義賊デル・トウローと魔狼ルイス・イカールを父にこの世に孵った神獣、大事な娘、ティア。
二人が走ってくる、また目指せる、マヒメのいる漂流島を、帰る、春愁の迷路に。
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