21 / 76
森の王
しおりを挟む
良いものが手に入った、硬くて光る尖った棒、あの人間たちが持っていた物だ。
奴らが使っているのを見たことがある、刺したり切ったりできる物だ、これを持つと奴らは急に強くなる。
固い木や、もちろん俺たちの肉も切れる、切られると痛くて赤い水がでる。
とても怖い。
ただ持っていると両手が使えない、奴らはぶら下げていた、奴らを毟って剝がした布や、動物の皮は小さくて使えなかった、布を裂いて形を真似ると出来た。
俺は強い上に利口だ。
数種類の光る棒の中でも半円で幅の広い物が使いやすい、引くのは得意だが突き出すのは力が入らなくて苦手だ。
大きくて持って歩くのには邪魔だ、そうだ序列最下位に持たせよう。
持っていないときの人はとても脆い、少し強く握れば潰れて動けなくなる。
動かなくなったところで光る棒を使う、きれいに無駄なく食べられる、新鮮な肉は美味い。
ギャッギャッ 序列二番のチビが珍しそうに俺の光る棒に手を出した。
ビュンッ 横凪に一閃すると奴の腕の体毛が飛び、赤い水が飛び出た。
ギャワワワワワッ 二番のチビは転げて木の下に落ちていった。
序列が下だった連中が集まってきて怪我をした二番を袋叩きにしている、二番は今から序列最下位委だ。
ボスは俺だ、他のチビ共とは違う、大きくて強い、王様だ。
王様は大変だ、チビ共の面倒を見なきゃならない、まずは食べ物だ、葉っぱや豆なんていらない、肉だ、人の肉が一番良い、力が湧く。
昔、檻の中に居たころは奴らが持ってきてくれた、今は自由の代わりに自分たちで用意しなければならない。
簡単だ、獲物は沢山いる、食い切れやしない。
人は良く仲間割れをして同族を殺してしまう、野蛮だ、俺は同族を殺すまではしない。
奴らは馬鹿だ、食べないのに殺す。
割と大きい獲物が四つ、手下どもの分まで入れても十分腹いっぱいになった。
しかし、一匹は顔が臭かった、きっと毒だ。
毒抜きしようとぶら下げておいたら盗まれた、俺様の物を盗んだやつがいる。
この森でそんなことをするのはあいつに違いない。
灰色の毛の俺様より大きい奴、あいつしかいない。
ギャアーーースッ チビ共に命令する、行くぞ、あいつを狩る。
この森の王は俺様だ、王は二人いらない。
嗅いだことのない異臭が森の中に漂っている。
耐えがたいほどの獣臭、長年森で暮らしてきたアオギリも経験したことのない匂いだった。
「酷い匂い、なんなのこの匂いは・・・」
ムートンのマナーハウスからの帰り道、森の奥から漂う異臭に愛鹿から降りて匂いの元を辿った。
下草が踏み荒らされて黒い土が見えている、巨大な何かが暴れた跡だ。
木の幹にへばり付いている灰色の毛は熊だ、この森に生息している最大の動物、灰色熊が何かと争った跡だった。
「雄同士の縄張り争いか子熊を連れた母熊が襲われたのかしら!?これは死骸の腐敗臭?」
変だ、雄同士の縄張り争いなら弱い方が引く、殺すまではやらない、母子熊なら狙いは子熊、それこそ食べてしまうから死骸なんて残らない。
灰色熊は人を恐れる、自分からは近寄ってこない、犬の三倍鼻が利く熊は人が見つけるより早く人を嗅ぎ分け遠ざかるのが普通だ、運悪く風下から近寄ったり、穴持たずといわれる冬眠を逃した熊でもなければ滅多に危険な状態になることはない。
人が襲われた話がないわけではないが数年に一回あるかないかだ、人とは生息域が違う、人が往来する道近くに姿を現すことなど滅多にない森の神だ。
人を襲うなら集団で連携しながら狩りをするオオカミの方が余程怖い、彼らは人族と生活圏が近いだけに遭遇する危険性も高かった。
藪の中に横たわる灰色の小山があった、大量の蛆が湧き、ハエや小さな虫が音を立てて飛び回っている、死んでいることは明らかだった。
「これは・・・どういうことなの!?」
首から上がなかった、更にその胴体も中身だけがそっくり抜け落ちている。
刃物で裂かれたのだ十文字に切られた横腹から白い骨が見えた。
「ヤーヴル(森の悪魔)!男爵様を殺した魔獣の仕業!!」
背筋が凍った、体長二メートル五十センチ、体重三百キロの灰色熊を殺せる生物がこの森にいる、おまけに刃物まで使う。
「・・・」アオギリは森の神の死骸を前に恐怖に取りつかれて動けなくなった。
ガサッガサッ 「!!」 背後から草を踏み足音が近づいてくる。
絶望が森を暗くしたように視界が狭まる。
武装は・・・短刀しか持っていない、フローラに危ないから泊まれと帰るのを止められていた、そうすべきだったと後悔したが遅い。
ヤーヴルは存在したのだ、他のどんな生物が灰色熊を殺し、その頭を引き千切り内臓を取り去ることが出来るのか、神話の化け物以外考えられない。
ガサガサッ いよいよ足音は真後ろに迫った、もはやここまでだ。
短刀をそっと抜いてゴクリと喉を鳴らす、振り向きざまに一撃を加えて全力で走る、上手く愛鹿に乗れれば逃げられる可能性があるかもしれない。
「諦めてたまるか!」 顎を引いて歯を食いしばる。
ガサッ 今だ!! ブンッ 振り向きざまに小刀を振りかぶった先に見えたのは!!
「何すんだよアオギリ!声かけても気か付きもしないし・・・」
小刀を見て後ずさったのはサイゾウだ。
「はっ・・・サ、サイゾウーーーー」 思わずその胸に飛び込んだ。
「おっ、おいどうした、怪我でもしたのかアオギリ!?」
ガタガタと震えが止まらない。
「死っ、死んだかと思った、ああああっ、あれっ、あれ見てぇ!」
アオギリが指さした先をサイゾウの視界が捉えた。
「なんだ!これは!?」
そこにあったのは人々に森の王と畏怖されていた灰色熊、それは人の悪意、敵意、享楽、何を持っても創り得ない残虐なオブジェのごとく首の無い無残で異様な姿を晒していた。
奴らが使っているのを見たことがある、刺したり切ったりできる物だ、これを持つと奴らは急に強くなる。
固い木や、もちろん俺たちの肉も切れる、切られると痛くて赤い水がでる。
とても怖い。
ただ持っていると両手が使えない、奴らはぶら下げていた、奴らを毟って剝がした布や、動物の皮は小さくて使えなかった、布を裂いて形を真似ると出来た。
俺は強い上に利口だ。
数種類の光る棒の中でも半円で幅の広い物が使いやすい、引くのは得意だが突き出すのは力が入らなくて苦手だ。
大きくて持って歩くのには邪魔だ、そうだ序列最下位に持たせよう。
持っていないときの人はとても脆い、少し強く握れば潰れて動けなくなる。
動かなくなったところで光る棒を使う、きれいに無駄なく食べられる、新鮮な肉は美味い。
ギャッギャッ 序列二番のチビが珍しそうに俺の光る棒に手を出した。
ビュンッ 横凪に一閃すると奴の腕の体毛が飛び、赤い水が飛び出た。
ギャワワワワワッ 二番のチビは転げて木の下に落ちていった。
序列が下だった連中が集まってきて怪我をした二番を袋叩きにしている、二番は今から序列最下位委だ。
ボスは俺だ、他のチビ共とは違う、大きくて強い、王様だ。
王様は大変だ、チビ共の面倒を見なきゃならない、まずは食べ物だ、葉っぱや豆なんていらない、肉だ、人の肉が一番良い、力が湧く。
昔、檻の中に居たころは奴らが持ってきてくれた、今は自由の代わりに自分たちで用意しなければならない。
簡単だ、獲物は沢山いる、食い切れやしない。
人は良く仲間割れをして同族を殺してしまう、野蛮だ、俺は同族を殺すまではしない。
奴らは馬鹿だ、食べないのに殺す。
割と大きい獲物が四つ、手下どもの分まで入れても十分腹いっぱいになった。
しかし、一匹は顔が臭かった、きっと毒だ。
毒抜きしようとぶら下げておいたら盗まれた、俺様の物を盗んだやつがいる。
この森でそんなことをするのはあいつに違いない。
灰色の毛の俺様より大きい奴、あいつしかいない。
ギャアーーースッ チビ共に命令する、行くぞ、あいつを狩る。
この森の王は俺様だ、王は二人いらない。
嗅いだことのない異臭が森の中に漂っている。
耐えがたいほどの獣臭、長年森で暮らしてきたアオギリも経験したことのない匂いだった。
「酷い匂い、なんなのこの匂いは・・・」
ムートンのマナーハウスからの帰り道、森の奥から漂う異臭に愛鹿から降りて匂いの元を辿った。
下草が踏み荒らされて黒い土が見えている、巨大な何かが暴れた跡だ。
木の幹にへばり付いている灰色の毛は熊だ、この森に生息している最大の動物、灰色熊が何かと争った跡だった。
「雄同士の縄張り争いか子熊を連れた母熊が襲われたのかしら!?これは死骸の腐敗臭?」
変だ、雄同士の縄張り争いなら弱い方が引く、殺すまではやらない、母子熊なら狙いは子熊、それこそ食べてしまうから死骸なんて残らない。
灰色熊は人を恐れる、自分からは近寄ってこない、犬の三倍鼻が利く熊は人が見つけるより早く人を嗅ぎ分け遠ざかるのが普通だ、運悪く風下から近寄ったり、穴持たずといわれる冬眠を逃した熊でもなければ滅多に危険な状態になることはない。
人が襲われた話がないわけではないが数年に一回あるかないかだ、人とは生息域が違う、人が往来する道近くに姿を現すことなど滅多にない森の神だ。
人を襲うなら集団で連携しながら狩りをするオオカミの方が余程怖い、彼らは人族と生活圏が近いだけに遭遇する危険性も高かった。
藪の中に横たわる灰色の小山があった、大量の蛆が湧き、ハエや小さな虫が音を立てて飛び回っている、死んでいることは明らかだった。
「これは・・・どういうことなの!?」
首から上がなかった、更にその胴体も中身だけがそっくり抜け落ちている。
刃物で裂かれたのだ十文字に切られた横腹から白い骨が見えた。
「ヤーヴル(森の悪魔)!男爵様を殺した魔獣の仕業!!」
背筋が凍った、体長二メートル五十センチ、体重三百キロの灰色熊を殺せる生物がこの森にいる、おまけに刃物まで使う。
「・・・」アオギリは森の神の死骸を前に恐怖に取りつかれて動けなくなった。
ガサッガサッ 「!!」 背後から草を踏み足音が近づいてくる。
絶望が森を暗くしたように視界が狭まる。
武装は・・・短刀しか持っていない、フローラに危ないから泊まれと帰るのを止められていた、そうすべきだったと後悔したが遅い。
ヤーヴルは存在したのだ、他のどんな生物が灰色熊を殺し、その頭を引き千切り内臓を取り去ることが出来るのか、神話の化け物以外考えられない。
ガサガサッ いよいよ足音は真後ろに迫った、もはやここまでだ。
短刀をそっと抜いてゴクリと喉を鳴らす、振り向きざまに一撃を加えて全力で走る、上手く愛鹿に乗れれば逃げられる可能性があるかもしれない。
「諦めてたまるか!」 顎を引いて歯を食いしばる。
ガサッ 今だ!! ブンッ 振り向きざまに小刀を振りかぶった先に見えたのは!!
「何すんだよアオギリ!声かけても気か付きもしないし・・・」
小刀を見て後ずさったのはサイゾウだ。
「はっ・・・サ、サイゾウーーーー」 思わずその胸に飛び込んだ。
「おっ、おいどうした、怪我でもしたのかアオギリ!?」
ガタガタと震えが止まらない。
「死っ、死んだかと思った、ああああっ、あれっ、あれ見てぇ!」
アオギリが指さした先をサイゾウの視界が捉えた。
「なんだ!これは!?」
そこにあったのは人々に森の王と畏怖されていた灰色熊、それは人の悪意、敵意、享楽、何を持っても創り得ない残虐なオブジェのごとく首の無い無残で異様な姿を晒していた。
0
あなたにおすすめの小説
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】
藤原遊
恋愛
十八歳で、私はいつも死ぬ。
そしてなぜか、また目を覚ましてしまう。
記憶を抱えたまま、幼い頃に――。
どれほど愛されても、どれほど誰かを愛しても、
結末は変わらない。
何度生きても、十八歳のその日が、私の最後になる。
それでも私は今日も微笑む。
過去を知るのは、私だけ。
もう一度、大切な人たちと過ごすために。
もう一度、恋をするために。
「どうせ死ぬのなら、あなたにまた、恋をしたいの」
十一度目の人生。
これは、記憶を繰り返す令嬢が紡ぐ、優しくて、少しだけ残酷な物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる