青春聖戦 24年の思い出

くらまゆうき

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第14話 野球なんて拷問だ

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小学校で仲間を増やしている祐輝だったが週末になれば祐輝は四面楚歌となる。


タイガースの全てが自分の敵。


チームメイトも監督、コーチも祐輝の退部を願っていた。


それから3年も経ち、祐輝もいよいよ小学校6年生になった。


皮肉な事にタイガースは新宿では無敗となった。


小学校4年生から区大会では無敗という前代未聞の記録を打ち立てた。


その栄光の舞台に祐輝は影響していなかった。


毎度表彰式でメダルを貰っていたが何も誇れる事はなかった。


何よりも耐え難い事は小学校でも表彰されていた事だ。


家に飾られるメダルは金ばかり。


しかし自分は何もしていない。


地獄の様なタイガース生活も残す所あと数ヶ月。


子供達は次の進路について考えていた。


祐輝が次に行くのは新宿西中学校。


因縁の勝は四谷南中学校。


そして。


大切な親友一輝は中野十三中学校。


みんながバラバラになる。


それでいいのかもしれない。


彼らは一緒には歩めなかった。


一輝がいなくなったタイガースは祐輝にとって拷問の毎日。


学校で作った多くの仲間も別の学校へと進む。


そんなある日、不登校気味になっていたゲーオに出会った。




「おお祐輝!! 新宿西に行くんしょ? 俺もー。 よろしくな。」




小学生のゲーオはタバコを咥えてガラの悪い友達を連れて歩いていた。


祐輝は少し目をそらしてうなずいた。


タバコを道端に捨てるとニヤけた表情で祐輝の肩に手を置く。




「勝にはヤキ入れておいたから。 これからはあいつもいねえし楽しくなるな!」
「ダセえ。」
「は?」
「別に。 じゃあ。」




祐輝は1人で家に帰っている。


大親友だった一輝とも疎遠がちになっていた。


親の不仲が一番の原因だったが、中学も異なりクラスも違う。


互いに親友と思っていたが現実は2人を引き裂いていった。


一輝が中野十三中学に進学したのも祐輝と違う中学に行かせるためだった。


こうして祐輝が6年もの時間をかけて作った仲間達はあっという間に崩壊した。




「中学では1人でいよう。 友達作ってもどうせいなくなる。」




卒業式の練習が進む冬が終わり、少しずつ暖かくなってきた日の事だった。


気温は暖かくなってきたが、祐輝の心は冷え切っていた。


そしてここに来て、祐輝にはある選択があった。


中学でも野球をやるかどうかという選択だった。


家に帰ると母の真美がクラブチームの入部届を持っていた。




「どうするの?」
「・・・野球なんて拷問だ。 結局まともに試合も出られなかったし。 何も楽しくない。」
「もう辞める?」
「母ちゃんはどう思う?」




真美は少し浮かない顔をしている。


祐輝には何が言いたいのかわかっていた。


続けてほしい。


しかし父の祐一や勝の様な存在が野球をつまらなくしていた。


だから中学では新しい仲間を見つけてほしい。




「お母さんは祐輝に野球頑張ってほしい。」
「でも親父がいるかぎり野球なんてやりたくないね。 追い出されるならそれでもいいよ。」
「お母さんが何とかする。 もうパパは来ないから野球やろう。」





すると祐一が仕事を終えて帰って来た。


何か言うわけもなく、入部届に祐輝の名前を書き始めた。


ちなみに祐一は小学校の6年間は非常に充実していた。


監督やコーチ陣もかつての後輩。


飲みに出かけては思い出話に浸っていた。


祐輝の6年間で耐えられない要因の1つがある。


それは祐一が試合の前日に言う言葉だった。


「明日は試合出してやる。」


一言だけその言葉を言われると次の日にスタメンとなっている。


実力ではなく、祐一の決定で試合に出される。


それは奴隷にも等しい。


親としての愛情とは全く感じなかった。


何よりも祐輝は試合には出たくなかった。


フィールドには天敵の勝と取り巻きがいる。


いくら活躍しても次の試合では元通り補欠。


6年間で祐輝の野球への意欲は皆無となっていた。


そして祐輝は思い切った行動に出る。




「親父。 中学の野球の事だけどさ。」
「ん? やらないなら出ていけ。」
「やるよ。 ただ。 親父はもう来ないでほしい。」




6年間で耐え忍んだ祐輝が放った言葉は祐一を唖然とさせた。
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