青春聖戦 24年の思い出

くらまゆうき

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第41話 東王会の父親

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黒スーツの男性が言う息子とは?



「知らない方の息子にはなれません。」
「そりゃ今はな。 俺が面倒見てやるからよ。 おお?」
「大丈夫です。 父親は形だけですがいますし、もう父親の様に面倒見てくださる方もいますので。」




祐輝は一切目を合わせる事なく下を向いていた。


見てわかる暴力団組織の人間。


強面の見た目に顔にも傷跡がある。


まともに生きていたらこんな傷はできない。




「日本はダメだよなあ。 こんな若い芽を育てないなんてなあ。」
「は、はあ・・・」
「ゆとり世代ってんだろ? お前らは。 ふざけた話だよなあ。 勝手に政府がゆとり政策をして育てられたのに上の世代からはこれだからゆとりはなんて言われんだよなあ。」





ゆとり世代と団塊世代の衝突は確かに激しいものだった。


祐輝はゆとりで父の祐一は団塊だ。


見て覚えろだの若いんだから痛い思いして覚えていくんだだのと根性論ばかり並べる事に嫌気が差している。


祐一は何も口にしない男だったが祐輝が話しかければ似たような戯言を並べていた。




「確かに・・・」
「俺はそんな若者が可愛そうでよお。 助けてやりてえんだ。 きっとお前らの年金なんて貰えないぜ。」
「良くわからないです。 俺中学生なんで。 今は野球しか興味ありません。」
「プロになれるのか? そうなったら年俸たくさんもらって良い生活できるよなあ。 美人なアナウンサーとか嫁さんにするんだろ? だがそんな上手く行くか?」




東王会の男は世の中の深刻な事情とゆとり世代に未来はないと説いている。


しかし中学生の祐輝にはいまいち理解できなかった。


それに祐一の自社ビルで暮らしている。


毎日好きなものも食べている。


貧乏といってもそこまでの自覚はなかった。


母親の真美のパート代で野球もできている。


首をかしげて黙り込む祐輝。


すると東王会の男はため息をついた。




「はあ。 所詮はボンボンだなあ。 まあ気が変わったら言ってくれよ。 俺達はいつでも見ているんだぜ。」
「・・・・・・」





新宿という街は恐ろしい。


これが中学生の会話なのだから。


祐輝は稲荷神社にお参りをして帰った。


真美には今日の事は話さない。




「ただいまー。」
「餃子作ったよ。」
「やったああ!!」



祐輝の大好物だ。


真美の手作りの餃子は絶品だった。


もちもちの皮と溢れんばかりの肉汁が最高だった。


なんと祐輝は50個も1人で食べてしまうのだ。


真美も嬉しそうに餃子を焼いている。



「俺はプロ野球選手になれるかなあ?」
「どうだろうねえ。 まだあんたは中学生だからねえ。 今から頑張ればなれるんじゃないの?」
「だよね。 頑張ろ。 そのためにはまずは越田だなあ。」




真剣に野球をやる者なら誰もが憧れるプロの世界。


何万という人に応援されて自分のプレー1つで歓声が湧く。


サラリーマンの年収の何倍もの大金で契約されて大好きな野球をする。


美人な妻に可愛い子ども。


高い家に良い車。


まさにバラ色の人生だ。


しかしそこまでいけるのはほんの一部。


仮にプロになれても結果を残せなければクビだ。


厳しい世界だが誰もが憧れる。


高い山だからこそ登りたいのだ。




「俺はいつかプロになって母ちゃんを楽させたいなあ。」
「嬉しい事言ってくれるのねえ。 でも奥さん見つけて幸せにしてあげなさい。」




大きな夢を抱く中学生。


東王会に入ってしまえば全てが消えてしまう。


人生を諦めるには早すぎる。


喧嘩は確かに強いがそんな事はどうだっていい。


大好きな野球のために頑張らなくてはならない。


そして間もなく冬休み。


1年生が終わる。
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