青春聖戦 24年の思い出

くらまゆうき

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第60話 そして夏がくる

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平凡な学校生活とパワハラを極める週末の日々。


気がつけば梅雨も終わり、蝉の鳴き声が街で響き渡り始めていた。


「もう夏か。」と一言だけつぶやいて学校を出るといつもの様にミズキが隠している自転車置き場へ向かった。


しかし今日はいつもと違った。


ミズキは自転車置き場で男子生徒と話をしている。


祐輝は会話が終わるまで物陰に潜んで待っていた。




「何してんだ俺は・・・」



まるで浮気調査の探偵にでもなったかの様に離れた場所からミズキの会話の様子を見ている。


小学生の頃から仲の良かったミズキの表情は見るだけで直ぐにわかる。


笑っているがどこか困った様子だった。


数分すると会話を終えたミズキは自転車にまたがって祐輝を待っているが、ソワソワした様子で落ち着きがない。


祐輝は小走りでミズキの元へ行った。



「遅かったねえ。」
「ちょっとね。 現代文の津田先生と話してた。」
「そっかあ。 タイミング悪いのー。」
「どうした?」



唇を尖らせて下を向くミズキは不満げな表情で自転車を漕ぎ始める。


祐輝は何があったのか尋ねたが、なかなか口を開こうとしなかった。


やがていつもの公園に着くと祐輝はストレッチを始めた。


するとミズキが隣に来て閉ざしていた口をそっと開いた。



「こ、告白されちゃった・・・」
「マジか。」
「私どうすればいいのかな・・・」
「・・・・・・」



俺がいるから安心しろ。


本来ならそう言ってハグの一つでもしてやれるのがカッコいい男だが、祐輝は言葉に詰まって何も返さずにいた。


初めての真剣な告白に動揺が隠せないミズキは困った表情をして下を向いている。


今こそ祐輝がミズキに寄り添ってやるべきだが、しばらくの沈黙が2人を包んだ。


蝉達がヤジでも入れるかの様に激しく鳴いている。


祐輝は苦し紛れに口を開いた。



「ミズキはどうしたい?」
「それは決まってるよ・・・」
「俺なんかでいいの? ずっと野球やってるだけだし。」
「祐輝君がいいよお・・・修也君はずっと待ってるって言ってたけど私は祐輝君が好き・・・」



先程ミズキに告白した修也という男子生徒はミズキに惚れ込み時間が経っても待っていると言い放った。


そんな真剣な想いを断る事にミズキは申し訳なさと譲れない想いが交差して今にも倒れそうなほどに赤面していた。


祐輝は入道雲が青空を美しくも優雅に覆っている夏の空を見上げている。



「そっか。 俺の事をそこまで応援してくれるのはミズキだけだしね。」
「付き合ってくれる?」
「もうすぐ夏の大会が始まるんだよね。 3年生はそれが最後の大会。 俺にはもう一年あるけど越田と戦うかもしれない。 それが終わるまで待ってくれよ。」



ミズキは静かにうなずいた。


どうしても野球に集中したかったが、ここまで一途に想ってくれるミズキをこれ以上苦しめられなかった。


ミズキは祐輝の顔をじっと見つめている。


だが祐輝は立ち上がると壁に向かってボールを投げ始めた。



「野球は頑張る。 でもミズキの事だって大事だよ。 ずっと言えなかったけど・・・本当に感謝しているよ。」
「嬉しいよ・・・」



ここまで健気で祐輝の都合を聞いてくれるミズキを大切にできなければ男としての名折れだと祐輝は感じた。


蝉が奏でる夏の音色。
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