60 / 140
第60話 そして夏がくる
しおりを挟む
平凡な学校生活とパワハラを極める週末の日々。
気がつけば梅雨も終わり、蝉の鳴き声が街で響き渡り始めていた。
「もう夏か。」と一言だけつぶやいて学校を出るといつもの様にミズキが隠している自転車置き場へ向かった。
しかし今日はいつもと違った。
ミズキは自転車置き場で男子生徒と話をしている。
祐輝は会話が終わるまで物陰に潜んで待っていた。
「何してんだ俺は・・・」
まるで浮気調査の探偵にでもなったかの様に離れた場所からミズキの会話の様子を見ている。
小学生の頃から仲の良かったミズキの表情は見るだけで直ぐにわかる。
笑っているがどこか困った様子だった。
数分すると会話を終えたミズキは自転車にまたがって祐輝を待っているが、ソワソワした様子で落ち着きがない。
祐輝は小走りでミズキの元へ行った。
「遅かったねえ。」
「ちょっとね。 現代文の津田先生と話してた。」
「そっかあ。 タイミング悪いのー。」
「どうした?」
唇を尖らせて下を向くミズキは不満げな表情で自転車を漕ぎ始める。
祐輝は何があったのか尋ねたが、なかなか口を開こうとしなかった。
やがていつもの公園に着くと祐輝はストレッチを始めた。
するとミズキが隣に来て閉ざしていた口をそっと開いた。
「こ、告白されちゃった・・・」
「マジか。」
「私どうすればいいのかな・・・」
「・・・・・・」
俺がいるから安心しろ。
本来ならそう言ってハグの一つでもしてやれるのがカッコいい男だが、祐輝は言葉に詰まって何も返さずにいた。
初めての真剣な告白に動揺が隠せないミズキは困った表情をして下を向いている。
今こそ祐輝がミズキに寄り添ってやるべきだが、しばらくの沈黙が2人を包んだ。
蝉達がヤジでも入れるかの様に激しく鳴いている。
祐輝は苦し紛れに口を開いた。
「ミズキはどうしたい?」
「それは決まってるよ・・・」
「俺なんかでいいの? ずっと野球やってるだけだし。」
「祐輝君がいいよお・・・修也君はずっと待ってるって言ってたけど私は祐輝君が好き・・・」
先程ミズキに告白した修也という男子生徒はミズキに惚れ込み時間が経っても待っていると言い放った。
そんな真剣な想いを断る事にミズキは申し訳なさと譲れない想いが交差して今にも倒れそうなほどに赤面していた。
祐輝は入道雲が青空を美しくも優雅に覆っている夏の空を見上げている。
「そっか。 俺の事をそこまで応援してくれるのはミズキだけだしね。」
「付き合ってくれる?」
「もうすぐ夏の大会が始まるんだよね。 3年生はそれが最後の大会。 俺にはもう一年あるけど越田と戦うかもしれない。 それが終わるまで待ってくれよ。」
ミズキは静かにうなずいた。
どうしても野球に集中したかったが、ここまで一途に想ってくれるミズキをこれ以上苦しめられなかった。
ミズキは祐輝の顔をじっと見つめている。
だが祐輝は立ち上がると壁に向かってボールを投げ始めた。
「野球は頑張る。 でもミズキの事だって大事だよ。 ずっと言えなかったけど・・・本当に感謝しているよ。」
「嬉しいよ・・・」
ここまで健気で祐輝の都合を聞いてくれるミズキを大切にできなければ男としての名折れだと祐輝は感じた。
蝉が奏でる夏の音色。
気がつけば梅雨も終わり、蝉の鳴き声が街で響き渡り始めていた。
「もう夏か。」と一言だけつぶやいて学校を出るといつもの様にミズキが隠している自転車置き場へ向かった。
しかし今日はいつもと違った。
ミズキは自転車置き場で男子生徒と話をしている。
祐輝は会話が終わるまで物陰に潜んで待っていた。
「何してんだ俺は・・・」
まるで浮気調査の探偵にでもなったかの様に離れた場所からミズキの会話の様子を見ている。
小学生の頃から仲の良かったミズキの表情は見るだけで直ぐにわかる。
笑っているがどこか困った様子だった。
数分すると会話を終えたミズキは自転車にまたがって祐輝を待っているが、ソワソワした様子で落ち着きがない。
祐輝は小走りでミズキの元へ行った。
「遅かったねえ。」
「ちょっとね。 現代文の津田先生と話してた。」
「そっかあ。 タイミング悪いのー。」
「どうした?」
唇を尖らせて下を向くミズキは不満げな表情で自転車を漕ぎ始める。
祐輝は何があったのか尋ねたが、なかなか口を開こうとしなかった。
やがていつもの公園に着くと祐輝はストレッチを始めた。
するとミズキが隣に来て閉ざしていた口をそっと開いた。
「こ、告白されちゃった・・・」
「マジか。」
「私どうすればいいのかな・・・」
「・・・・・・」
俺がいるから安心しろ。
本来ならそう言ってハグの一つでもしてやれるのがカッコいい男だが、祐輝は言葉に詰まって何も返さずにいた。
初めての真剣な告白に動揺が隠せないミズキは困った表情をして下を向いている。
今こそ祐輝がミズキに寄り添ってやるべきだが、しばらくの沈黙が2人を包んだ。
蝉達がヤジでも入れるかの様に激しく鳴いている。
祐輝は苦し紛れに口を開いた。
「ミズキはどうしたい?」
「それは決まってるよ・・・」
「俺なんかでいいの? ずっと野球やってるだけだし。」
「祐輝君がいいよお・・・修也君はずっと待ってるって言ってたけど私は祐輝君が好き・・・」
先程ミズキに告白した修也という男子生徒はミズキに惚れ込み時間が経っても待っていると言い放った。
そんな真剣な想いを断る事にミズキは申し訳なさと譲れない想いが交差して今にも倒れそうなほどに赤面していた。
祐輝は入道雲が青空を美しくも優雅に覆っている夏の空を見上げている。
「そっか。 俺の事をそこまで応援してくれるのはミズキだけだしね。」
「付き合ってくれる?」
「もうすぐ夏の大会が始まるんだよね。 3年生はそれが最後の大会。 俺にはもう一年あるけど越田と戦うかもしれない。 それが終わるまで待ってくれよ。」
ミズキは静かにうなずいた。
どうしても野球に集中したかったが、ここまで一途に想ってくれるミズキをこれ以上苦しめられなかった。
ミズキは祐輝の顔をじっと見つめている。
だが祐輝は立ち上がると壁に向かってボールを投げ始めた。
「野球は頑張る。 でもミズキの事だって大事だよ。 ずっと言えなかったけど・・・本当に感謝しているよ。」
「嬉しいよ・・・」
ここまで健気で祐輝の都合を聞いてくれるミズキを大切にできなければ男としての名折れだと祐輝は感じた。
蝉が奏でる夏の音色。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる