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第65話 次は必ず勝つ!!
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「ストライクッ!! バッターアウトッ!」
球場がどよめいている。
両チームのベンチが驚いて祐輝を見ていた。
越田は三振に取られてベンチへ戻っていくが唖然としていた。
「しゃああああああああっ!!!!」
祐輝の魂の叫びは球場に轟いた。
ツーストライクに追い込んだ時に祐輝はカーブで確実に三振を取るか、ストレートで勝負するという二択に悩んだが祐輝はストレート勝負を選んだ。
越田はカーブが来るものだと予想して、何とかファールにする準備をしていたがまさかの渾身のストレート。
驚きを隠せなかった越田は思わず空振り三振をしてしまった。
しかし試合自体はその後エラーやヒットが重なりコールド負け。
整列して互いの選手が挨拶する時に祐輝の目の前には越田が立っていた。
審判の「礼!」という掛け声で互いに挨拶して相手ベンチの監督にも挨拶をするというのが野球界の礼儀だ。
ナインズメンバーはキングスの監督に挨拶をしてベンチへ戻っていく。
そして両チームの選手が交わる瞬間に祐輝と越田はホームベースの上で顔を見合わせていた。
「俺が1ホームラン。」
「俺も1三振。」
「引き分けだな。」
「またいつかやろうな。」
祐輝は越田と別れようとしたが「なあ。」と声をかけられて振り返ると越田は自分の手を見ながら首を傾げていた。
「どうしてカーブ投げなかったの?」という越田の質問を聞いた祐輝は少しだけ笑って「俺はそういう性格なんだよ。」と返した。
越田にとってストレートの三振は悔しくてたまらなかったが何よりも悔しかったのは自分がここまでカーブに対応できないことを知れたことが最大の屈辱にも感じていた。
たかが区大会でカーブとストレートに三振だなんて。
全国に行って速田と共に日本一の中学生になろうとしているのにと越田は悔しくてたまらなかったのだ。
「ナインズのエース。 次は初球からカーブを打ってやる。」
祐輝は試合を終えると佐藤コーチの前に立っていた。
「説明してもらおうか?」と冷静な口調だが表情はまるで阿修羅の様だ。
言葉に詰まる祐輝は正直に話すと覚悟を決めていた。
「す、すいませんでした…でも毎日守備練習しかやらないのでもうこれしか…」
佐藤コーチは首をかしげて黙り込んでいた。
「何言ってんだ?」と阿修羅のような顔から驚きの表情に変わっていた。
祐輝は素直に全て話した。
鈴木監督の愚行と守備練習だけの毎日でほぼ1年間を無駄にした事を吐き出すほどの勢いで話していた。
すると大きなため息で佐藤コーチは脱帽して祐輝に丁寧に一礼した。
「すまなかった。 相当苦しんだな。」
怒るどころか佐藤コーチは謝ってきた。
これには祐輝も言葉が出なかった。
佐藤コーチは悲しそうな表情で祐輝の肩を触ってはストレッチをしてこれから試合だというのに佐藤コーチ自らが氷を袋に入れて祐輝の肩をアイシングしていた。
「あ、あの。」
「カーブ投げるしかなかったんだな。 でもお前。 ちゃんとキングスの4番から三振取ったじゃねえか! 速くなったんだよお前のストレートも! だから俺はお前が努力しているってわかっているぞ。」
そしてまた「すまなかった。」と佐藤コーチは連呼している。
祐輝にはわからなかったのだ。
何を謝っているのか。
「あ、あの。 何を謝っているのですか?」
「俺が息子と最後の一年を戦うためにお前を犠牲にしたんだな。 しっかり育ててやるべきだったな。」
アイシングされる祐輝のまだ細い肩を大切そうになでると佐藤コーチはグラウンドへ入っていった。
大きな後ろ姿が丁寧にグラウンドに一礼している。
祐輝は静かにため息をつくと先輩の試合を見るためにミズキの隣に座った。
球場がどよめいている。
両チームのベンチが驚いて祐輝を見ていた。
越田は三振に取られてベンチへ戻っていくが唖然としていた。
「しゃああああああああっ!!!!」
祐輝の魂の叫びは球場に轟いた。
ツーストライクに追い込んだ時に祐輝はカーブで確実に三振を取るか、ストレートで勝負するという二択に悩んだが祐輝はストレート勝負を選んだ。
越田はカーブが来るものだと予想して、何とかファールにする準備をしていたがまさかの渾身のストレート。
驚きを隠せなかった越田は思わず空振り三振をしてしまった。
しかし試合自体はその後エラーやヒットが重なりコールド負け。
整列して互いの選手が挨拶する時に祐輝の目の前には越田が立っていた。
審判の「礼!」という掛け声で互いに挨拶して相手ベンチの監督にも挨拶をするというのが野球界の礼儀だ。
ナインズメンバーはキングスの監督に挨拶をしてベンチへ戻っていく。
そして両チームの選手が交わる瞬間に祐輝と越田はホームベースの上で顔を見合わせていた。
「俺が1ホームラン。」
「俺も1三振。」
「引き分けだな。」
「またいつかやろうな。」
祐輝は越田と別れようとしたが「なあ。」と声をかけられて振り返ると越田は自分の手を見ながら首を傾げていた。
「どうしてカーブ投げなかったの?」という越田の質問を聞いた祐輝は少しだけ笑って「俺はそういう性格なんだよ。」と返した。
越田にとってストレートの三振は悔しくてたまらなかったが何よりも悔しかったのは自分がここまでカーブに対応できないことを知れたことが最大の屈辱にも感じていた。
たかが区大会でカーブとストレートに三振だなんて。
全国に行って速田と共に日本一の中学生になろうとしているのにと越田は悔しくてたまらなかったのだ。
「ナインズのエース。 次は初球からカーブを打ってやる。」
祐輝は試合を終えると佐藤コーチの前に立っていた。
「説明してもらおうか?」と冷静な口調だが表情はまるで阿修羅の様だ。
言葉に詰まる祐輝は正直に話すと覚悟を決めていた。
「す、すいませんでした…でも毎日守備練習しかやらないのでもうこれしか…」
佐藤コーチは首をかしげて黙り込んでいた。
「何言ってんだ?」と阿修羅のような顔から驚きの表情に変わっていた。
祐輝は素直に全て話した。
鈴木監督の愚行と守備練習だけの毎日でほぼ1年間を無駄にした事を吐き出すほどの勢いで話していた。
すると大きなため息で佐藤コーチは脱帽して祐輝に丁寧に一礼した。
「すまなかった。 相当苦しんだな。」
怒るどころか佐藤コーチは謝ってきた。
これには祐輝も言葉が出なかった。
佐藤コーチは悲しそうな表情で祐輝の肩を触ってはストレッチをしてこれから試合だというのに佐藤コーチ自らが氷を袋に入れて祐輝の肩をアイシングしていた。
「あ、あの。」
「カーブ投げるしかなかったんだな。 でもお前。 ちゃんとキングスの4番から三振取ったじゃねえか! 速くなったんだよお前のストレートも! だから俺はお前が努力しているってわかっているぞ。」
そしてまた「すまなかった。」と佐藤コーチは連呼している。
祐輝にはわからなかったのだ。
何を謝っているのか。
「あ、あの。 何を謝っているのですか?」
「俺が息子と最後の一年を戦うためにお前を犠牲にしたんだな。 しっかり育ててやるべきだったな。」
アイシングされる祐輝のまだ細い肩を大切そうになでると佐藤コーチはグラウンドへ入っていった。
大きな後ろ姿が丁寧にグラウンドに一礼している。
祐輝は静かにため息をつくと先輩の試合を見るためにミズキの隣に座った。
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