66 / 140
第66話 祐輝の叫び
しおりを挟む
「負けちゃったねー。」
「越田とは引き分けたからオッケー。」
残念そうに唇を尖らせて祐輝を見ているミズキに対して祐輝は涼しい表情で隣に座った。
先輩の試合を応援するためにナインズBチームは観客席で観戦していた。
ナインズAチームの相手は2年生だけで構成されているキングスBだった。
越田のような怪童は特別待遇でAチームにいたがほとんどの2年生はBチームに所属している。
ナインズAチームにとっては格下の相手だった。
佐藤コーチの息子の雄太にとって最後の中学野球だ。
親子で歩む野球人生の最後のプレイボールがコールされ試合は始まった。
雄太は左投げ(サウスポー)で130キロ中盤を投げる豪速球とキレのいいスライダーを武器に三振を量産していった。
そして打線もキングスBチームの2年生ピッチャーから連打を浴びせ初回で3点を獲得した。
祐輝もこの試合はさすがに勝ったとミズキと雑談まで始める始末だった。
「応援しなくていいの?」
「さすがに余裕でしょ。」
「そっかあ。 ねえねえ修学旅行の京都でどこ行く?」
「二条城は確実だな。 それに伏見稲荷だな。」
「えー? 宇治抹茶食べないのー?」
歴史好きの祐輝は京都への修学旅行を楽しみにしていた。
もはやナインズAとキングスBの試合になんて興味もなかった。
試合は5対0で6回まできた。
しかしここに来てエース雄太にも疲れが見え始めてきたのか制球が乱れてファアボールがよく見られるようになってきた。
ベンチから佐藤コーチの「頑張らんかい!」というドスの効いた声が響いている。
二者連続ファアボールで一度タイムを取ってマウンド上に仲間達が集まって話をしている。
ランナーは一、二塁だ。
タイムが終わり雄太はセットポジションから投げるとキングスBのバッターは綺麗に合わせてヒットを打つと満塁になった。
最悪の場合、満塁でホームランを打たれると一気に4点も入ってしまう。
そしてこの満塁という状況はピンチでもありチャンスでもあった。
ホームゲッツーといわれるプレーがあり内野ゴロの打球を即座にホームのキャッチャーに投げると三塁ランナーはアウトになり、キャッチャーが一塁へ送球してバッターランナーもアウトになる。
一気にツーアウトを取る事ができるプレーだ。
ワンナウト満塁という状況でホームゲッツーするかヒットを打たれるかは試合の分岐点とも言える。
ミズキと仲良く話していた祐輝もさすがに試合に集中していた。
雄太はセットポジションから投げるとバッターは突如バントの構えを見せた。
これはスクイズというプレーだ。
満塁という状況でのスクイズはかなり大胆なプレーとされている。
ピッチャーの投球に合わせて塁上の全てのランナーが走りだす。
そしてバッターは例え体に当たってしまう球であってもバントして確実にランナーをホームインさせるプレーだ。
雄太はボールを投げると直ぐにバント処理のために走り込んだがキングスのバッターはしっかりとバットに当てた。
ホームインされてしまう一点は諦めて雄太は一塁へ走るバッターランナーだけでもアウトにしようとファーストへ送球したがこれが試合の流れを変えてしまった。
なんと雄太は暴投してとんでもない方向へ投げてしまった。
歓声と悲鳴に包まれる球場でキングスランナー達は続々とホームへ帰ってくる。
ランナーは全て帰りバッターランナーも二塁に立った。
これで5対3だ。
佐藤コーチは頭を抱えて立ち上がっている。
雄太は愕然としてナインズの空気は冷たく冷え上がっていた。
そんな時だった。
「まだ終わってねえぞ!!!!」
観客席から突如叫んだのは祐輝だった。
その声は強くそして先輩達に勇気を与えた。
祐輝の声に返事をするかのように先輩達は「しゃあっ!」っと叫んで空気を一気に変えた。
まだ一点差で勝っている。
この魔の6回を凌いで攻撃して最終回に繋ぐ。
ナインズAチームの戦いはこれからだ。
「越田とは引き分けたからオッケー。」
残念そうに唇を尖らせて祐輝を見ているミズキに対して祐輝は涼しい表情で隣に座った。
先輩の試合を応援するためにナインズBチームは観客席で観戦していた。
ナインズAチームの相手は2年生だけで構成されているキングスBだった。
越田のような怪童は特別待遇でAチームにいたがほとんどの2年生はBチームに所属している。
ナインズAチームにとっては格下の相手だった。
佐藤コーチの息子の雄太にとって最後の中学野球だ。
親子で歩む野球人生の最後のプレイボールがコールされ試合は始まった。
雄太は左投げ(サウスポー)で130キロ中盤を投げる豪速球とキレのいいスライダーを武器に三振を量産していった。
そして打線もキングスBチームの2年生ピッチャーから連打を浴びせ初回で3点を獲得した。
祐輝もこの試合はさすがに勝ったとミズキと雑談まで始める始末だった。
「応援しなくていいの?」
「さすがに余裕でしょ。」
「そっかあ。 ねえねえ修学旅行の京都でどこ行く?」
「二条城は確実だな。 それに伏見稲荷だな。」
「えー? 宇治抹茶食べないのー?」
歴史好きの祐輝は京都への修学旅行を楽しみにしていた。
もはやナインズAとキングスBの試合になんて興味もなかった。
試合は5対0で6回まできた。
しかしここに来てエース雄太にも疲れが見え始めてきたのか制球が乱れてファアボールがよく見られるようになってきた。
ベンチから佐藤コーチの「頑張らんかい!」というドスの効いた声が響いている。
二者連続ファアボールで一度タイムを取ってマウンド上に仲間達が集まって話をしている。
ランナーは一、二塁だ。
タイムが終わり雄太はセットポジションから投げるとキングスBのバッターは綺麗に合わせてヒットを打つと満塁になった。
最悪の場合、満塁でホームランを打たれると一気に4点も入ってしまう。
そしてこの満塁という状況はピンチでもありチャンスでもあった。
ホームゲッツーといわれるプレーがあり内野ゴロの打球を即座にホームのキャッチャーに投げると三塁ランナーはアウトになり、キャッチャーが一塁へ送球してバッターランナーもアウトになる。
一気にツーアウトを取る事ができるプレーだ。
ワンナウト満塁という状況でホームゲッツーするかヒットを打たれるかは試合の分岐点とも言える。
ミズキと仲良く話していた祐輝もさすがに試合に集中していた。
雄太はセットポジションから投げるとバッターは突如バントの構えを見せた。
これはスクイズというプレーだ。
満塁という状況でのスクイズはかなり大胆なプレーとされている。
ピッチャーの投球に合わせて塁上の全てのランナーが走りだす。
そしてバッターは例え体に当たってしまう球であってもバントして確実にランナーをホームインさせるプレーだ。
雄太はボールを投げると直ぐにバント処理のために走り込んだがキングスのバッターはしっかりとバットに当てた。
ホームインされてしまう一点は諦めて雄太は一塁へ走るバッターランナーだけでもアウトにしようとファーストへ送球したがこれが試合の流れを変えてしまった。
なんと雄太は暴投してとんでもない方向へ投げてしまった。
歓声と悲鳴に包まれる球場でキングスランナー達は続々とホームへ帰ってくる。
ランナーは全て帰りバッターランナーも二塁に立った。
これで5対3だ。
佐藤コーチは頭を抱えて立ち上がっている。
雄太は愕然としてナインズの空気は冷たく冷え上がっていた。
そんな時だった。
「まだ終わってねえぞ!!!!」
観客席から突如叫んだのは祐輝だった。
その声は強くそして先輩達に勇気を与えた。
祐輝の声に返事をするかのように先輩達は「しゃあっ!」っと叫んで空気を一気に変えた。
まだ一点差で勝っている。
この魔の6回を凌いで攻撃して最終回に繋ぐ。
ナインズAチームの戦いはこれからだ。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる