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第81話 こんな世界
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ある日の学校で。
クラスの皆は高校入試へ向けて勉強をしっかりしているが祐輝は外をじっと見ていた。
大好きな現代文の授業も真面目にやらずに。
津田先生は心配そうに「どうしたの?」と話しかけたが祐輝は無言で教室を出ようとした。
すると祐輝の腕を掴んで「座りなさい。」と強張った表情で見つめているが祐輝は手を振り払い教室を出た。
「待ちなさい!」
「うるせえ。」
「どうした? 様子がおかしいぞ!」
「てめえには関係ねえ。」
保健室にでも行って昼寝でもしようとする祐輝を何とかして止めようとしている。
「野球だけやっていればいいんじゃない!」と津田先生はとっさに口にしてしまった。
その言葉に祐輝は火がついて「うるせえ!!」と教室の壁を蹴っ飛ばして暴れ始めた。
隣のクラスの先生まで出てきて祐輝を止めようとしているがあまりの力の強さにたまらず大勢の先生が現れて祐輝を止めている。
「やめなさい!!」
「うるせえんだよ!!! てめえらに関係ねえだろ!!」
コンクリートでできている壁を平然と何発も殴っては津田先生にまで殴りかかろうとしていた。
体育の先生が来て取り押さえるが振りほどいて壁を殴っている。
拳からは血が出ているが気にする様子もなく、暴れ続けていた。
津田先生は真面目に授業を受けていた祐輝を可愛く思い、野球で高校に行ける実力があるのに現代文を真面目に受けていた事に感謝もしていた。
だからこそ叫んでしまった。
もう見ていられなかったのだ。
「野球できなくなるぞ!!!!」
しかしそれは祐輝には一番聞きたくない言葉だった。
「もうできねえんだよ!!!」と腹の底から叫ぶと、体育教師達に職員室へと連れて行かれた。
騒然となった学校では大切な授業すらも中断する事になってしまった。
職員室で何があったのか教師達に聞かれても一切答えなかった。
放課後になっても職員室から出る事はできずにいたが授業を終えた津田先生が入って来ると祐輝の前に座ってため息をついた。
「どうして野球できないんだ?」
「肩がぶっ壊れたんだよ。」
「そ、そうか・・・」
「現代文は生きていくのに必要だから勉強してたんだ。 でももう学ばねえ。 生きるつもりもない。」
父の祐一に無理やりやらされた野球は祐輝を苦しめたが続けた事で佐藤コーチや越田といった素晴らしい存在に出会た。
野球をやっていてよかったと思い始めた矢先の事だった。
知識もない無能な指導者がノリと勢いだけで指導するから祐輝の様に人生が台無しになる若者が出てしまう。
野球とは実に難しいスポーツで怪我のリスクも非常に高い。
だからこそしっかりとした指導が必要なのだ。
プロ野球中継が好きだからだとか昔少しやっていたなんて理由で選手に触れては絶対にいけない。
しっかり知識をつけた上で選手と触れ合うべきなのだ。
祐輝の人生を壊したのは間違いなく窪田コーチだ。
当人にはどうでもよくても祐輝の全ては終わった。
生きる理由を失った15歳の少年は職員室で津田先生と話しているがもはや生きる原動力はない。
清々しさすら感じさせる祐輝の何もか諦めた表情を見ている津田先生はゆっくりと口を開いた。
「現代文って面白いよね。 今、我々が使う言葉は日本語だけどその昔使っていた日本語は少し違ったんだ。 歴史が得意ならわかるよね?」
「どうでもいい。」
「そんな事ないさ。 言葉にだって形があるんだよ。 漢字とは中国から買った言語なんだよ。 でも我々は謝謝とは言わない。 感謝というんだ。」
突然何を話し始めたのかと祐輝は苛立った表情で遠くを見ている。
しかし津田先生は話を続けた。
漢字について話しているのか?
それとも。
「同じ漢字なのに使う者によって異なるんだ。 どうしてだろうね?」
「知らねえよ。」
「それはねえ。 人とは必ず姿形にこだわりたがるからだよ。」
「はあ?」
津田先生の言葉をまるで理解できない祐輝。
変わらず真面目な表情で話を続ける津田先生は一切目をそらさなかった。
真剣な眼差しで続けた。
「中国の漢字をそのまま使うのはかっこ悪い。 せっかく買ったなら日本らしく使おう。 そうやって常に人間は物事の形を変えたがっていたんだ。」
「歴史でも似たような事が言えるな。」
「そうだよ。 偉人達は多くの失敗をした。 それは自分が原因じゃない失敗だってあったさ。 だけどね。 そのたびに人は形を変えて新しい何かを見つけて生きてきたんだよ。」
野球に囚われる事なくもっと視野を広げてほしい。
津田先生からはそんな気持ちが伝わってくる。
先に生きると書いて先生と読むのは中国から買った物の中でもこれ上ないほど素晴らしいものだ。
長く生きた津田先生にとって祐輝の苦悩は痛いほど理解できた。
しかし死ぬほどの事ではないとも考える事ができたのだ。
「いいかい。 生きるという事は予想外の連発なんだよ。」
「野球できなくなったのも?」
「そうだよ。 それでも一生懸命に生きる事に意味があるんだ。 一所懸命という言葉が由来のこの言葉はね。 人々が一生をかけて懸命に生きてほしいという意味からできた言葉なんだ。」
祐輝の心の傷は癒えない。
しかし何かが変わった様な気もしていた。
それは津田先生からの言葉による影響は大きかった。
大好きな歴史になぞらえると良くわかった。
偉人達はどれだけ道の途中で壁にぶつかったか。
祐輝は家に帰ると1人部屋で津田先生の言葉を思い返していた。
クラスの皆は高校入試へ向けて勉強をしっかりしているが祐輝は外をじっと見ていた。
大好きな現代文の授業も真面目にやらずに。
津田先生は心配そうに「どうしたの?」と話しかけたが祐輝は無言で教室を出ようとした。
すると祐輝の腕を掴んで「座りなさい。」と強張った表情で見つめているが祐輝は手を振り払い教室を出た。
「待ちなさい!」
「うるせえ。」
「どうした? 様子がおかしいぞ!」
「てめえには関係ねえ。」
保健室にでも行って昼寝でもしようとする祐輝を何とかして止めようとしている。
「野球だけやっていればいいんじゃない!」と津田先生はとっさに口にしてしまった。
その言葉に祐輝は火がついて「うるせえ!!」と教室の壁を蹴っ飛ばして暴れ始めた。
隣のクラスの先生まで出てきて祐輝を止めようとしているがあまりの力の強さにたまらず大勢の先生が現れて祐輝を止めている。
「やめなさい!!」
「うるせえんだよ!!! てめえらに関係ねえだろ!!」
コンクリートでできている壁を平然と何発も殴っては津田先生にまで殴りかかろうとしていた。
体育の先生が来て取り押さえるが振りほどいて壁を殴っている。
拳からは血が出ているが気にする様子もなく、暴れ続けていた。
津田先生は真面目に授業を受けていた祐輝を可愛く思い、野球で高校に行ける実力があるのに現代文を真面目に受けていた事に感謝もしていた。
だからこそ叫んでしまった。
もう見ていられなかったのだ。
「野球できなくなるぞ!!!!」
しかしそれは祐輝には一番聞きたくない言葉だった。
「もうできねえんだよ!!!」と腹の底から叫ぶと、体育教師達に職員室へと連れて行かれた。
騒然となった学校では大切な授業すらも中断する事になってしまった。
職員室で何があったのか教師達に聞かれても一切答えなかった。
放課後になっても職員室から出る事はできずにいたが授業を終えた津田先生が入って来ると祐輝の前に座ってため息をついた。
「どうして野球できないんだ?」
「肩がぶっ壊れたんだよ。」
「そ、そうか・・・」
「現代文は生きていくのに必要だから勉強してたんだ。 でももう学ばねえ。 生きるつもりもない。」
父の祐一に無理やりやらされた野球は祐輝を苦しめたが続けた事で佐藤コーチや越田といった素晴らしい存在に出会た。
野球をやっていてよかったと思い始めた矢先の事だった。
知識もない無能な指導者がノリと勢いだけで指導するから祐輝の様に人生が台無しになる若者が出てしまう。
野球とは実に難しいスポーツで怪我のリスクも非常に高い。
だからこそしっかりとした指導が必要なのだ。
プロ野球中継が好きだからだとか昔少しやっていたなんて理由で選手に触れては絶対にいけない。
しっかり知識をつけた上で選手と触れ合うべきなのだ。
祐輝の人生を壊したのは間違いなく窪田コーチだ。
当人にはどうでもよくても祐輝の全ては終わった。
生きる理由を失った15歳の少年は職員室で津田先生と話しているがもはや生きる原動力はない。
清々しさすら感じさせる祐輝の何もか諦めた表情を見ている津田先生はゆっくりと口を開いた。
「現代文って面白いよね。 今、我々が使う言葉は日本語だけどその昔使っていた日本語は少し違ったんだ。 歴史が得意ならわかるよね?」
「どうでもいい。」
「そんな事ないさ。 言葉にだって形があるんだよ。 漢字とは中国から買った言語なんだよ。 でも我々は謝謝とは言わない。 感謝というんだ。」
突然何を話し始めたのかと祐輝は苛立った表情で遠くを見ている。
しかし津田先生は話を続けた。
漢字について話しているのか?
それとも。
「同じ漢字なのに使う者によって異なるんだ。 どうしてだろうね?」
「知らねえよ。」
「それはねえ。 人とは必ず姿形にこだわりたがるからだよ。」
「はあ?」
津田先生の言葉をまるで理解できない祐輝。
変わらず真面目な表情で話を続ける津田先生は一切目をそらさなかった。
真剣な眼差しで続けた。
「中国の漢字をそのまま使うのはかっこ悪い。 せっかく買ったなら日本らしく使おう。 そうやって常に人間は物事の形を変えたがっていたんだ。」
「歴史でも似たような事が言えるな。」
「そうだよ。 偉人達は多くの失敗をした。 それは自分が原因じゃない失敗だってあったさ。 だけどね。 そのたびに人は形を変えて新しい何かを見つけて生きてきたんだよ。」
野球に囚われる事なくもっと視野を広げてほしい。
津田先生からはそんな気持ちが伝わってくる。
先に生きると書いて先生と読むのは中国から買った物の中でもこれ上ないほど素晴らしいものだ。
長く生きた津田先生にとって祐輝の苦悩は痛いほど理解できた。
しかし死ぬほどの事ではないとも考える事ができたのだ。
「いいかい。 生きるという事は予想外の連発なんだよ。」
「野球できなくなったのも?」
「そうだよ。 それでも一生懸命に生きる事に意味があるんだ。 一所懸命という言葉が由来のこの言葉はね。 人々が一生をかけて懸命に生きてほしいという意味からできた言葉なんだ。」
祐輝の心の傷は癒えない。
しかし何かが変わった様な気もしていた。
それは津田先生からの言葉による影響は大きかった。
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祐輝は家に帰ると1人部屋で津田先生の言葉を思い返していた。
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