青春聖戦 24年の思い出

くらまゆうき

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第112話 そして日常へ

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地獄の様に暑い夏の合宿も最終日になり、祐輝は皆の練習を補助していた。


肩の怪我でもうボールを投げる事のできない祐輝は野球の技術向上には力を入れていなかった。


今の祐輝が興味を持っている事はチームなどの集団を率いる事の大切さだった。


合宿を終えて帰りのバスの中でも携帯で帝王学を学んでいた。


歴史に登場する様々な君主がどの様にして帝国を築いたのか。


また、何故滅んでいったのか。


祐輝が真剣な表情で読んでいるとけんせーが画面を覗き込んで「なんだそれ」と大笑いしていた。




「止めろよ真剣に読んでるから。」
「お前ガリ勉か!? こっち見ろよ。」




けんせーが画面を触って祐輝に手渡すとそこには言葉にするのも恥ずかしいほどのいかがわしい映像が流れていた。


バスの車内で響き渡る喘ぎ声に驚く仲間達。


仲間の視線の先で喘ぎ声が聞こえる携帯を持っているのは祐輝だ。


爆笑の渦に包まれると同時に祐輝は絶叫するほどけんせーに掴みかかった。



「ははははー!!!! 祐輝我慢しろよ。」
「お前ふざけんなって!!」
「ははははは!!!!」



顔を真っ赤にして画面を閉じると祐輝は仲間達にけんせーの仕業だと必死に話すが皆は笑って聞く耳を持たない。


諦めた様に座席に座り遠くを見ている祐輝は吹き出して笑った。


ふとけんせーを見ると先程まで騒いでいたのにぐっすりと眠っていた。


過酷な合宿だった。


黒く焼けたけんせーの寝顔を見ると手に持っている携帯をそっと手に取るとホーム画面をいかがわしい画像に変えて、けんせーのバッグへとしまった。


やがてバスは東京へと着くと高校へ戻ってきた。


皆の親が迎えに来ている。


けんせーはバスから降りると自分の母親に会って「疲れた」と甘えていた。


祐輝は近づくと「みんなにメール送ったから読んでな」と一言だけ言うと母親の真美の元へ向かった。


けんせーは携帯画面を開くと絶叫していた。


驚いた母親がけんせーの画面を見ようとしているのを必死に隠している。


祐輝はクスクスと笑いながら真美の車に乗って家に向かっていた。




「お疲れ様。」
「疲れたよ。」
「焼き肉でも食べて帰る?」




真美と2人で焼き肉を食べて帰ると風呂に入ってぐっすりと眠った。


翌日目を覚ますと祐輝は休日を満喫しようと起き上がった。


けんせーに邪魔された帝王学の続きを読み始めた。



「組織の崩壊は中から。 一族王政の場合、後継者争いになる。」



世界の帝国が崩壊していく理由は大半がこれだった。


祐輝は同時に戦術の勉強も始めていた。


将来、軍人になりたいわけではない。


ただの趣味だった。



「もう野球はできないし・・・好きな事を学んで生きていこう。」



一度は生きる希望を失いかけた。


しかし誰かに支えられて祐輝はこうして生きている。


高校生活も間もなく1年生が終わる。
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