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シーズン2 犠牲の果ての天上界
第2ー1話 虎白という男の正体
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対峙する虎白と、宝剣を持った男。長い髭を風になびかせて、睨み合っている両者の間には、殺伐とした空気が流れている。
「本当に、人間の体へ封印されるのか?」
「ああ......仲間を失った俺にもう生きる資格はねえ......」
「眼の前に最後の一人がいるが、俺はもう仲間じゃないのか?」
「............」
これ以上、会話をすることはなかった。両者は、激しく刀と宝剣をぶつけ合い、男が倒れると、虎白は旅立っていった。
眩い光と頭痛に悶える虎白が、ペガサスの馬車の中で思い出した記憶だ。やがて激痛のせいか、虎白が意識を失うと、竹子達も眠るように意識を失った。
それからどれほどの時間が経ったのだろうか。
「起きなさい」
意識を失う前に聞いた声だ。そうだ、この声は、天空から舞い降りた美女の声ではないか。
竹子が、眉間にしわを寄せながら、静かに目を開けると、視界に広がっていたのは、今までに見たことのない景色であった。純白の建造物に、豊かな平原、大広間で目を覚ました一同は、立ち上がり絶景に息を呑んだ。
「ここは、私の神殿だ」
「し、神殿? あなたは?」
「私はアテナだ。 名前ぐらい聞いたことあるだろう?」
「ギリシャの......」
天空から舞い降りた美女の名は、アテナだ。戦術の神として軍神と呼ばれる彼女は、戦いの才能に溢れながらも、慈悲深い感情を持っていることでも知られている。だが、性格は厳格で、法の裁きを行う守護者としても有名だ。
そんな偉大なるアテナが、虎白を助けに来たというわけだ。驚きを隠せずにいる竹子は、口に手を当てたまま、言葉を失っている。
「驚くのも無理ない。 ここは、『天上界』だ。 天王にして我が父であるゼウスの治める国だ」
アテナはそう自慢気に話すと、倒れている虎白に膝枕をして、頬を叩き始めた。それを竹子は、複雑そうな表情で見ている。
やがて目を覚ました虎白は、アテナの顔を間近で見て目を見開いていた。
「久しいな鞍馬」
「あ、アテナか......」
「覚えていてくれたなんて、感激よ。 人間としての生活はどうだった?」
「俺が望んで行ったことだったのか......」
虎白は、その衝撃をどうすることもできなかった。元は天上界で暮らしていた自分が、仲間の死を機に人間の体へと逃げたのだ。
そのせいで、祐輝や新納を始めとする多くの犠牲を出す結果となった。虎白はただ、罪悪感で言葉を失っていた。しばらく愕然としてから、我に返ったようにアテナへ問いかけた。
「霊界で死んだ者はどうなる!? 天上界へは来ないのか?」
「あの世界で死んだ者は、消滅する。 これは父が決めたことではないわ。 元からそうなっているのよ。 人間の仲間は今頃もう......」
その言葉を聞いた虎白は、頭を抱えて再び言葉を失った。彼らの死は全て自分のせいだった。虎白は、笹子の顔を見ることができなかった。
「す、すまねえ......なんで俺......」
「まあ気に病むな鞍馬。 元はと言えば、襲ってきた鬼のせいではないか。 そして叔父上のせいだ......」
「叔父上?」
「我が父ゼウスの兄であり、冥府の王ハデス叔父上よ」
アテナの父が天王にして、天上界の最高神ゼウスだ。そして彼らは三兄弟である。長男のハデスは、冥府の王となり、次男のポセイドンは末弟のゼウスを支える補佐官として、天上界にいるのだ。
そしてハデスの命令により、虎白は命を狙われ続け、多くの仲間を失う結果となった。
「ハデスは鬼まで従えているのか......」
「酒呑童子しゅてんどうしを覚えている? 鞍馬達を襲ったのは、鬼の総大将である彼の兵よ」
「なんで俺がそんな狙われるんだ......」
「霊界なんて場所に行くからよ......あなたが天上界から消えたことで、あなたの兵も霊界から撤収したのよ」
竹子はアテナの言葉に首をかしげた。どうして虎白が霊界に行ったことで、仲間の皇国武士は消えたのだろうか。
疑問を投げかける竹子の顔を見たアテナは、クスクスと小さく笑った。
「そうだったな。 霊界に降りた何よりもの理由は、記憶が消えるからだったな。 鞍馬は、消したい記憶が多すぎて、霊界に逃げたのよ」
「そ、それで、虎白と皇国武士になんの繋がりが!?」
「彼こそが、その皇国武士の皇帝だからよ。 主が天上界から消えて、霊界を守る命令が失われたからよ」
アテナの言葉を聞いた竹子は、めまいがした。恋人になりかけていた神族は、誰もが尊敬して、頼りにしていた狐の神の軍隊である皇国武士の皇帝だったのだ。
「し、神族様ってだけでも恋仲なんて恐れ多いと思っていたけれど......ま、まさか皇国武士の皇帝陛下だったなんて......」
あまりの衝撃に、竹子は言葉を失った。だが、こうして竹子らは天上界という新たな土地に辿り着いたのだった。
多くの犠牲の果てに。
「本当に、人間の体へ封印されるのか?」
「ああ......仲間を失った俺にもう生きる資格はねえ......」
「眼の前に最後の一人がいるが、俺はもう仲間じゃないのか?」
「............」
これ以上、会話をすることはなかった。両者は、激しく刀と宝剣をぶつけ合い、男が倒れると、虎白は旅立っていった。
眩い光と頭痛に悶える虎白が、ペガサスの馬車の中で思い出した記憶だ。やがて激痛のせいか、虎白が意識を失うと、竹子達も眠るように意識を失った。
それからどれほどの時間が経ったのだろうか。
「起きなさい」
意識を失う前に聞いた声だ。そうだ、この声は、天空から舞い降りた美女の声ではないか。
竹子が、眉間にしわを寄せながら、静かに目を開けると、視界に広がっていたのは、今までに見たことのない景色であった。純白の建造物に、豊かな平原、大広間で目を覚ました一同は、立ち上がり絶景に息を呑んだ。
「ここは、私の神殿だ」
「し、神殿? あなたは?」
「私はアテナだ。 名前ぐらい聞いたことあるだろう?」
「ギリシャの......」
天空から舞い降りた美女の名は、アテナだ。戦術の神として軍神と呼ばれる彼女は、戦いの才能に溢れながらも、慈悲深い感情を持っていることでも知られている。だが、性格は厳格で、法の裁きを行う守護者としても有名だ。
そんな偉大なるアテナが、虎白を助けに来たというわけだ。驚きを隠せずにいる竹子は、口に手を当てたまま、言葉を失っている。
「驚くのも無理ない。 ここは、『天上界』だ。 天王にして我が父であるゼウスの治める国だ」
アテナはそう自慢気に話すと、倒れている虎白に膝枕をして、頬を叩き始めた。それを竹子は、複雑そうな表情で見ている。
やがて目を覚ました虎白は、アテナの顔を間近で見て目を見開いていた。
「久しいな鞍馬」
「あ、アテナか......」
「覚えていてくれたなんて、感激よ。 人間としての生活はどうだった?」
「俺が望んで行ったことだったのか......」
虎白は、その衝撃をどうすることもできなかった。元は天上界で暮らしていた自分が、仲間の死を機に人間の体へと逃げたのだ。
そのせいで、祐輝や新納を始めとする多くの犠牲を出す結果となった。虎白はただ、罪悪感で言葉を失っていた。しばらく愕然としてから、我に返ったようにアテナへ問いかけた。
「霊界で死んだ者はどうなる!? 天上界へは来ないのか?」
「あの世界で死んだ者は、消滅する。 これは父が決めたことではないわ。 元からそうなっているのよ。 人間の仲間は今頃もう......」
その言葉を聞いた虎白は、頭を抱えて再び言葉を失った。彼らの死は全て自分のせいだった。虎白は、笹子の顔を見ることができなかった。
「す、すまねえ......なんで俺......」
「まあ気に病むな鞍馬。 元はと言えば、襲ってきた鬼のせいではないか。 そして叔父上のせいだ......」
「叔父上?」
「我が父ゼウスの兄であり、冥府の王ハデス叔父上よ」
アテナの父が天王にして、天上界の最高神ゼウスだ。そして彼らは三兄弟である。長男のハデスは、冥府の王となり、次男のポセイドンは末弟のゼウスを支える補佐官として、天上界にいるのだ。
そしてハデスの命令により、虎白は命を狙われ続け、多くの仲間を失う結果となった。
「ハデスは鬼まで従えているのか......」
「酒呑童子しゅてんどうしを覚えている? 鞍馬達を襲ったのは、鬼の総大将である彼の兵よ」
「なんで俺がそんな狙われるんだ......」
「霊界なんて場所に行くからよ......あなたが天上界から消えたことで、あなたの兵も霊界から撤収したのよ」
竹子はアテナの言葉に首をかしげた。どうして虎白が霊界に行ったことで、仲間の皇国武士は消えたのだろうか。
疑問を投げかける竹子の顔を見たアテナは、クスクスと小さく笑った。
「そうだったな。 霊界に降りた何よりもの理由は、記憶が消えるからだったな。 鞍馬は、消したい記憶が多すぎて、霊界に逃げたのよ」
「そ、それで、虎白と皇国武士になんの繋がりが!?」
「彼こそが、その皇国武士の皇帝だからよ。 主が天上界から消えて、霊界を守る命令が失われたからよ」
アテナの言葉を聞いた竹子は、めまいがした。恋人になりかけていた神族は、誰もが尊敬して、頼りにしていた狐の神の軍隊である皇国武士の皇帝だったのだ。
「し、神族様ってだけでも恋仲なんて恐れ多いと思っていたけれど......ま、まさか皇国武士の皇帝陛下だったなんて......」
あまりの衝撃に、竹子は言葉を失った。だが、こうして竹子らは天上界という新たな土地に辿り着いたのだった。
多くの犠牲の果てに。
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