21 / 171
シーズン2 犠牲の果ての天上界
第2ー1話 虎白という男の正体
しおりを挟む
対峙する虎白と、宝剣を持った男。長い髭を風になびかせて、睨み合っている両者の間には、殺伐とした空気が流れている。
「本当に、人間の体へ封印されるのか?」
「ああ......仲間を失った俺にもう生きる資格はねえ......」
「眼の前に最後の一人がいるが、俺はもう仲間じゃないのか?」
「............」
これ以上、会話をすることはなかった。両者は、激しく刀と宝剣をぶつけ合い、男が倒れると、虎白は旅立っていった。
眩い光と頭痛に悶える虎白が、ペガサスの馬車の中で思い出した記憶だ。やがて激痛のせいか、虎白が意識を失うと、竹子達も眠るように意識を失った。
それからどれほどの時間が経ったのだろうか。
「起きなさい」
意識を失う前に聞いた声だ。そうだ、この声は、天空から舞い降りた美女の声ではないか。
竹子が、眉間にしわを寄せながら、静かに目を開けると、視界に広がっていたのは、今までに見たことのない景色であった。純白の建造物に、豊かな平原、大広間で目を覚ました一同は、立ち上がり絶景に息を呑んだ。
「ここは、私の神殿だ」
「し、神殿? あなたは?」
「私はアテナだ。 名前ぐらい聞いたことあるだろう?」
「ギリシャの......」
天空から舞い降りた美女の名は、アテナだ。戦術の神として軍神と呼ばれる彼女は、戦いの才能に溢れながらも、慈悲深い感情を持っていることでも知られている。だが、性格は厳格で、法の裁きを行う守護者としても有名だ。
そんな偉大なるアテナが、虎白を助けに来たというわけだ。驚きを隠せずにいる竹子は、口に手を当てたまま、言葉を失っている。
「驚くのも無理ない。 ここは、『天上界』だ。 天王にして我が父であるゼウスの治める国だ」
アテナはそう自慢気に話すと、倒れている虎白に膝枕をして、頬を叩き始めた。それを竹子は、複雑そうな表情で見ている。
やがて目を覚ました虎白は、アテナの顔を間近で見て目を見開いていた。
「久しいな鞍馬」
「あ、アテナか......」
「覚えていてくれたなんて、感激よ。 人間としての生活はどうだった?」
「俺が望んで行ったことだったのか......」
虎白は、その衝撃をどうすることもできなかった。元は天上界で暮らしていた自分が、仲間の死を機に人間の体へと逃げたのだ。
そのせいで、祐輝や新納を始めとする多くの犠牲を出す結果となった。虎白はただ、罪悪感で言葉を失っていた。しばらく愕然としてから、我に返ったようにアテナへ問いかけた。
「霊界で死んだ者はどうなる!? 天上界へは来ないのか?」
「あの世界で死んだ者は、消滅する。 これは父が決めたことではないわ。 元からそうなっているのよ。 人間の仲間は今頃もう......」
その言葉を聞いた虎白は、頭を抱えて再び言葉を失った。彼らの死は全て自分のせいだった。虎白は、笹子の顔を見ることができなかった。
「す、すまねえ......なんで俺......」
「まあ気に病むな鞍馬。 元はと言えば、襲ってきた鬼のせいではないか。 そして叔父上のせいだ......」
「叔父上?」
「我が父ゼウスの兄であり、冥府の王ハデス叔父上よ」
アテナの父が天王にして、天上界の最高神ゼウスだ。そして彼らは三兄弟である。長男のハデスは、冥府の王となり、次男のポセイドンは末弟のゼウスを支える補佐官として、天上界にいるのだ。
そしてハデスの命令により、虎白は命を狙われ続け、多くの仲間を失う結果となった。
「ハデスは鬼まで従えているのか......」
「酒呑童子しゅてんどうしを覚えている? 鞍馬達を襲ったのは、鬼の総大将である彼の兵よ」
「なんで俺がそんな狙われるんだ......」
「霊界なんて場所に行くからよ......あなたが天上界から消えたことで、あなたの兵も霊界から撤収したのよ」
竹子はアテナの言葉に首をかしげた。どうして虎白が霊界に行ったことで、仲間の皇国武士は消えたのだろうか。
疑問を投げかける竹子の顔を見たアテナは、クスクスと小さく笑った。
「そうだったな。 霊界に降りた何よりもの理由は、記憶が消えるからだったな。 鞍馬は、消したい記憶が多すぎて、霊界に逃げたのよ」
「そ、それで、虎白と皇国武士になんの繋がりが!?」
「彼こそが、その皇国武士の皇帝だからよ。 主が天上界から消えて、霊界を守る命令が失われたからよ」
アテナの言葉を聞いた竹子は、めまいがした。恋人になりかけていた神族は、誰もが尊敬して、頼りにしていた狐の神の軍隊である皇国武士の皇帝だったのだ。
「し、神族様ってだけでも恋仲なんて恐れ多いと思っていたけれど......ま、まさか皇国武士の皇帝陛下だったなんて......」
あまりの衝撃に、竹子は言葉を失った。だが、こうして竹子らは天上界という新たな土地に辿り着いたのだった。
多くの犠牲の果てに。
「本当に、人間の体へ封印されるのか?」
「ああ......仲間を失った俺にもう生きる資格はねえ......」
「眼の前に最後の一人がいるが、俺はもう仲間じゃないのか?」
「............」
これ以上、会話をすることはなかった。両者は、激しく刀と宝剣をぶつけ合い、男が倒れると、虎白は旅立っていった。
眩い光と頭痛に悶える虎白が、ペガサスの馬車の中で思い出した記憶だ。やがて激痛のせいか、虎白が意識を失うと、竹子達も眠るように意識を失った。
それからどれほどの時間が経ったのだろうか。
「起きなさい」
意識を失う前に聞いた声だ。そうだ、この声は、天空から舞い降りた美女の声ではないか。
竹子が、眉間にしわを寄せながら、静かに目を開けると、視界に広がっていたのは、今までに見たことのない景色であった。純白の建造物に、豊かな平原、大広間で目を覚ました一同は、立ち上がり絶景に息を呑んだ。
「ここは、私の神殿だ」
「し、神殿? あなたは?」
「私はアテナだ。 名前ぐらい聞いたことあるだろう?」
「ギリシャの......」
天空から舞い降りた美女の名は、アテナだ。戦術の神として軍神と呼ばれる彼女は、戦いの才能に溢れながらも、慈悲深い感情を持っていることでも知られている。だが、性格は厳格で、法の裁きを行う守護者としても有名だ。
そんな偉大なるアテナが、虎白を助けに来たというわけだ。驚きを隠せずにいる竹子は、口に手を当てたまま、言葉を失っている。
「驚くのも無理ない。 ここは、『天上界』だ。 天王にして我が父であるゼウスの治める国だ」
アテナはそう自慢気に話すと、倒れている虎白に膝枕をして、頬を叩き始めた。それを竹子は、複雑そうな表情で見ている。
やがて目を覚ました虎白は、アテナの顔を間近で見て目を見開いていた。
「久しいな鞍馬」
「あ、アテナか......」
「覚えていてくれたなんて、感激よ。 人間としての生活はどうだった?」
「俺が望んで行ったことだったのか......」
虎白は、その衝撃をどうすることもできなかった。元は天上界で暮らしていた自分が、仲間の死を機に人間の体へと逃げたのだ。
そのせいで、祐輝や新納を始めとする多くの犠牲を出す結果となった。虎白はただ、罪悪感で言葉を失っていた。しばらく愕然としてから、我に返ったようにアテナへ問いかけた。
「霊界で死んだ者はどうなる!? 天上界へは来ないのか?」
「あの世界で死んだ者は、消滅する。 これは父が決めたことではないわ。 元からそうなっているのよ。 人間の仲間は今頃もう......」
その言葉を聞いた虎白は、頭を抱えて再び言葉を失った。彼らの死は全て自分のせいだった。虎白は、笹子の顔を見ることができなかった。
「す、すまねえ......なんで俺......」
「まあ気に病むな鞍馬。 元はと言えば、襲ってきた鬼のせいではないか。 そして叔父上のせいだ......」
「叔父上?」
「我が父ゼウスの兄であり、冥府の王ハデス叔父上よ」
アテナの父が天王にして、天上界の最高神ゼウスだ。そして彼らは三兄弟である。長男のハデスは、冥府の王となり、次男のポセイドンは末弟のゼウスを支える補佐官として、天上界にいるのだ。
そしてハデスの命令により、虎白は命を狙われ続け、多くの仲間を失う結果となった。
「ハデスは鬼まで従えているのか......」
「酒呑童子しゅてんどうしを覚えている? 鞍馬達を襲ったのは、鬼の総大将である彼の兵よ」
「なんで俺がそんな狙われるんだ......」
「霊界なんて場所に行くからよ......あなたが天上界から消えたことで、あなたの兵も霊界から撤収したのよ」
竹子はアテナの言葉に首をかしげた。どうして虎白が霊界に行ったことで、仲間の皇国武士は消えたのだろうか。
疑問を投げかける竹子の顔を見たアテナは、クスクスと小さく笑った。
「そうだったな。 霊界に降りた何よりもの理由は、記憶が消えるからだったな。 鞍馬は、消したい記憶が多すぎて、霊界に逃げたのよ」
「そ、それで、虎白と皇国武士になんの繋がりが!?」
「彼こそが、その皇国武士の皇帝だからよ。 主が天上界から消えて、霊界を守る命令が失われたからよ」
アテナの言葉を聞いた竹子は、めまいがした。恋人になりかけていた神族は、誰もが尊敬して、頼りにしていた狐の神の軍隊である皇国武士の皇帝だったのだ。
「し、神族様ってだけでも恋仲なんて恐れ多いと思っていたけれど......ま、まさか皇国武士の皇帝陛下だったなんて......」
あまりの衝撃に、竹子は言葉を失った。だが、こうして竹子らは天上界という新たな土地に辿り着いたのだった。
多くの犠牲の果てに。
0
あなたにおすすめの小説
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜
来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。
自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。
「お前は俺の番だ」
番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。
一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。
執着と守護。すれ違いと絆。
――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。
甘さ控えめ、でも確かに溺愛。
異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる