天冥聖戦 伝説への軌跡

くらまゆうき

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シーズン2 犠牲の果ての天上界

第2ー2話 怒りの矛先は

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 逃げればその分だけ、大きな惨劇となって返ってくると思い知らされた虎白は、意気消沈して口を開こうとしない。
 新たな世界である、天上界へと逃げ延びた一同は、しばらくの間軍神アテナの神殿で休息を取った。

「いつまでも、そうしていても始まらないぞ鞍馬」

 アテナが呆れた表情で、語りかけた。静かにうなずいた虎白は、神殿から一望できる天上界の絶景を眺めている。
 祐輝や新納を始めとする、多くの犠牲者を出してしまった虎白は、無気力となっていた。そこへ近づいてきたのは、笹子だ。虎白が振り返ると、強烈な平手打ちをした。

「いい加減にしてよ虎白......」
「さ、笹子?」
「自分で決めたことなんでしょ? そんな情けない虎白のために、新納は......」

 言葉に詰まったまま、泣き崩れる笹子を静かに見ている。そう、新納は虎白を信じて笹子を託したのだ。それが、今ではこの有り様というわけだ。新納が今の虎白を見れば、呆れて物も言えないだろう。笹子は、そう言いたかったのだ。
 泣き崩れている笹子の背中を優しく撫でている姉の竹子も、涙を堪えている。

「そうだ鞍馬。 では、旧友に会ってみては、どうだ?」
「旧友か......顔もぼんやりとしか覚えてねえし、名前も忘れちまった」
「行けばわかるでしょう。 過去から目を背けずに前を向きなさい」

 アテナに背中を押され、ヨロヨロと歩き始めた虎白は、旧友の元へ向かおうとしている。
 そこへ近づいてきたのは、友奈だ。赤い侍達の仲間にして、土屋が最後に託した存在だ。

「思い出せねえが、お前の顔には見覚えがある」
「......私はありませんけど?」
「そうか......記憶が消えちまっているんだ。 気にしないでくれ。 きっと他人の空似ってやつだろう」

 そう言って神殿の階段を降りていく虎白の背中を、友奈は見つめていた。いきなり天上界へ連れてこられ、見ず知らずの虎白という男が過去に犯した現実逃避の代償。
 そんなことのために、長年苦楽を共にしてきた厳三郎も土屋も赤い侍衆も、霊界に取り残された。階段を下っていく虎白の背中を見ている友奈は、抑えきれない殺意が湧いている。
 ふと、泣き崩れている笹子の刀を見ると、殺意は行動へと変わってしまった。

「し、死ねー! あんたなんかのせいで!」
「うぐっ!?」

 それは一瞬のことだった。笹子の刀を拾って、虎白の背中へ突き刺してしまったのだ。友奈の怒りは、それでも収まることなく、背中から抜き取ると、大きく振りかぶっている。
 その顔は、霊界で見た鬼が如く凄まじいものだった。

「あんたのせいでみんな!」

 やがて刀が振り下ろされると、虎白の頭部目掛けて迫ってきた。そこへ咄嗟に竹子が飛び込んできて、刀を受け止めた。
 友奈の足を引っ掛けて転ばせると、顔元に刃を突きつけている。その光景に、とんがり帽子達も集まってきて、銃口を友奈へ向けた。

「ぐ、ぐふっ」
「虎白!」

 虎白は貫かれた腹部を抑えて、しゃがみこんだ。慌てて駆け寄ってきた竹子は、傷口を見ると、驚くことに純白の血液が流れ出ていたのだ。

「こ、これは!?」
「神族の血液は白いんだ......これも馬車で思い出したぜ......それだけじゃねえ。 心配するな竹子、この程度じゃ死なねえから......痛えけどよ」

 何を言っているのか。これだけの出血をしておいて、無事なはずがない。困惑する竹子は、白く輝く血液を拭きながら傷口を抑えた。
 しかし刺されてから数分も経つと、傷口が治癒して出血も治まっているではないか。そして平然と立ち上がった。

「神族は、驚異的な治癒力を持っている。 多少の怪我では死なねえよ」

 生まれながらの体質である、治癒力によって回復した虎白は、とんがり帽子に押さえつけられている友奈の元へ近づいた。

「すまなかったな......お前に背中刺されて、目が覚めたよ」
「ふ、ふざけるな! それでも土屋達は帰って来ないから!」
「そうだな。 じゃあ殺すか?」

 その時、土屋の顔が頭の中で広がった。止めなされ友奈。そのようなことをしても、何もならぬぞ。あれは、拙者が決めたこと。貴公は、諦めずに生きなされ。
 頭の中で聞こえてくる土屋の声に、友奈はひたすら泣いている。

「今は謝ることしかできねえよ。 本当に悪かったな......同じ過ちを繰り返さないように、俺はこれから消えた記憶を戻そうと思う。 まだ回復した記憶は、ほんの一部なんだ......」
「知らないよ。 そんなことどうでもいいから」

 友奈に深々と頭を下げた虎白は、再び階段を降りていった。竹子は、友奈を警戒してか、刀に手を当てたままだ。
 アテナの神殿には、殺伐とした空気だけが流れ、軍神アテナはさぞ迷惑そうな表情をしている。
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