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シーズン2 犠牲の果ての天上界
第2ー4話 これからのこと
しおりを挟む悲しくも、こうして再会を果たした虎白と嬴政は、再び絶品の料理を食べ、酒を浴びるように飲んだ。虎白が霊界で体験した惨劇を語り、夜が更けた。
「今日は俺の部屋に泊まっていけ」
「ありがとう。 明日また話そう」
嬴政は、自らの寝室に虎白を連れて行くと、腕を枕にして共に眠った。心的疲労のせいか、直ぐに眠った虎白の寝顔を見つめている。
「相変わらず眠っていると、女顔負けだな......」
白くて長い髪の毛を下ろして、眠っている親友を見て、変な気分になっている嬴政は、自分の下腹部を気にしている。何度も天井を見て、首を振っている。
方や虎白は、久しぶりの親友の香りに安心しているのか、さらに顔を密着させると、嬴政の頬を舌で舐めている。
「こいつは、親友だ......い、いや男だ......」
体が細く、顔立ちも狐特有で細くてキリッとしている。女に見間違えてもなんらおかしくはない。
その晩は、変な気分と戦いながら、嬴政は夜を明かした。
「おい虎白起きろ」
「ああ? もう朝か......」
「やっと男になったか」
「はあ?」
安堵の表情を浮かべる嬴政は、寝室から出ると、朝食を食べ始めた。二人は、今後のことを話し始めたのだ。
「とにかくお前は、連れている仲間達と国でも作って力をつけろ」
「国だあ!?」
「そうだ。 お前は、狐の国の皇帝だったんだ。 天上界で国を作って、皇帝としての振る舞いを思い出せ。 力がつくまでは、俺の『秦国』が手助けしてやる」
嬴政の秦国しんこくは、強大な大国だ。有する兵力は、二百万とも三百万人とも言われている。膨大な人口を有する秦国は、豊富な食料を他国に売りさばくほどだ。
その嬴政の支援の元で、虎白は建国をして、消えた記憶を緩やかに復活させていくことにした。
食事を終えた二人は、茶を飲みながら会話を続けている。
「俺はまだ消えた記憶がたくさんあるようだ......なあ、俺の故郷の話しを知らないか?」
「お前の故郷の話しか。 そのうち話してやるから建国を始めろ。 当面の間は、人員は俺から出してやる」
「すまない......」
こうして秦国の嬴政の元で、建国を始めることになった虎白は、再びアテナ神殿へと戻っていった。
神殿へ戻ると、アテナが変わらず呆れた表情で腕を組んでいる。
「はあ......お前達は、保護されている者らしくできないのか?」
「どうした?」
「あのまんまさ。 鞍馬を刺した人間が怒り、仲間達もその人間に怒っている」
友奈は、昨日と変わらず、とんがり帽子に囲まれている。竹子と笹子は、警戒した様子で、刀に手を当て、いつでも斬りかかれる状態だった。
「戻ったぞ。 おいもう友奈を離してやれ」
「で、でも危ないよ」
「おい友奈。 俺達と一緒にいるなんて嫌だろ?」
「当たり前でしょ!」
虎白が友奈を解放すると、足早に神殿を後にした。その後姿を眺めながら、今後のことを皆に話し始めた。
「ええ!? お、お国を持つの!?」
「ああ。 旧友が手助けしてくれるんだ」
「そ、そう......何か手伝えることがあったら何でも言ってね」
「何言ってる。 国はお前達と作るんだ。 俺だってもう、帰る場所なんてないからな......」
虎白は秦国を往復する旅で、気がついていた。どこを見渡しても、自分の家臣と思わしき、狐の侍の姿がないことに。嬴政の口ぶりでも、狐の侍の話しなんてものは、出てこなかった。
その上、故郷の話しを尋ねたら嬴政は、まずは国を作れと話したのだ。
「何がどうなっているのか......真相は、国を作って自分で調べろってことなのか......」
嬴政との会話を思い出すが、親友の顔色はどう考えても良いものではなかった。知りたいことを調べたいが、恐怖心すら感じていた。また何か自分のせいなのではないかと。
吐きかけた、ため息を飲み込むとアテナに深く感謝を述べて、神殿を後にした。
「じゃあ行こうぜ。 国は俺の親友の秦国の隣にある平原から作るぜ」
こうして虎白と竹子達の新たな物語サーガが始まるのだ。
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