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シーズン3 ツンドラ帝国遠征編
第3−10話 民衆の大暴動
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ノバグラード。かの大帝国の首都にして、ツンドラの最大都市。ここには、数え切れないほどの民衆が暮らし、精鋭ノバガードが何万も配備されていた。
全ての都市を通過した虎白らは、遂に敵国の心臓部にまで到達したのだった。
「着きましたね虎白殿」
「ノバの宮殿にまで行かねえとな」
「作戦はありますか?」
アルデン王は心に決めていた。この戦いでは、虎白の作戦に従おうと。彼の戦い方は、奇想天外だ。スタシアにある騎士道精神とはかけ離れているが、彼の戦う理由はスタシアと同じ。
民が穏やかに暮らせる世の中こそ、真の平和である。
「そうだな作戦か。 あるぞ!」
「本当に多くの作戦を持っていらっしゃいますね虎白殿」
不敵な笑みを浮かべる虎白は、アルデン王の耳元に口を近づけた。話しを聞き終えたアルデン王は、驚きのあまり目を見開いた。
「ほ、本気ですか?」
「ああ、絶対上手く行くって!」
アルデン王は思った。もはや虎白殿は、この戦いを楽しんでおられるように見える。ご自身が考える作戦が、見事に成功していく。優越感すら感じているのかもしれない。
騎士道精神には反するが、敵を欺き、意表を突いて勝利する。この男の恐ろしさはそこにある。しかしこのような戦い方は私にはできない。
「色々考えるところもあるんだろアルデン」
「え!? い、いえ......」
「お前の祖父とも一緒に戦ったんだ。 スタシア王国の騎士道精神に反するんだろ?」
「......反しています。 ですが、承知の上で同盟を結びました。 騎士道精神も大事ですが、何より大事なのは、か弱き民が苦しまない世界です」
この一点が、アルデン王と虎白を結んだのだ。騎士道を大切にして、敵を欺く行為を恥と思うスタシア王国の伝統は、虎白の戦術とは相容れないものだ。
しかし恥を忍んでも、貫きたいのは、民が穏やかに暮らせる国家である。アルデン王は、虎白が参戦するよりも前からツンドラと戦っていた。
圧倒的に兵力で勝るツンドラ軍を前に、騎士道を貫くことは困難であったのだ。
「気にするな。 もしスタシアの民がお前に怒るなら、全ては俺が行った戦術だと直接話してやるから」
「決してそんなことは。 私の国は、私が治めます。 そんなことまで助けていただくわけには」
「いつだったか、お前の祖父も同じようなことを言っていたよ」
アルデン王の肩をポンポンと叩いた虎白は、ノバ皇帝が身を隠しているであろう宮殿への突入作戦の準備を始めた。
ノバグラードから少し離れた集落に陣地を作った虎白らは、遂に作戦の準備を整えた。
緊張した面持ちで、歩いてきたのは、メルキータ皇女だ。
「やはりどうしたって、この戦いで重要なのはお前だ」
「は、はい! 言われた通りに!」
「よしやってやるか!」
メルキータ皇女は、虎白から作戦を伝えられると、周辺の民を呼び集めた。中には、武装解除したツンドラ兵も大勢いる。
そしてデモ隊と化したメルキータ一派は、ノバグラードへ進み、帝都で暮らしている民までも吸収して、何万にも膨れ上がっている。
見かねたノバガードが続々と集まってきて、宮殿への入口を塞いだ。そう、ここまでは虎白の読み通りだ。
「ノバ皇帝の圧政にはもう、うんざりだ!」
「メルキータ皇女様を女帝に即位させろー!」
「お前ら政府のためには、もう働かないぞ!」
宮殿の前で、大騒ぎするデモ隊は、叫び続け、高々とプラカードを掲げている。ノバガードは、表情こそ変えることはなかったが、命令があればいつでも斬り捨てるといった静かなる殺気を放っている。
そんな時、ノバガードに届いた知らせは、彼らを苛立たせるものであった。
「おい! このデモ隊は陽動作戦だ! 宮殿の壁を破壊して、敵が入り込んだそうだ!」
「卑怯な作戦ばかりしやがって! おい破壊された壁へ急げ! デモ隊を抑えるのは、僅かな兵士でいい!」
メルキータ皇女率いるデモ隊は、虎白らが壁を破壊して突入するための囮。それを知ったノバガードは、苛立ちを抑えながら、壁へと大多数の兵士が向かった。
その時だ。
「今だ! 手薄な敵を斬り捨てて宮殿へ突入しろ! 宮殿内へ入れば、ノバガードは兵力を武器には戦えねえぞ!」
デモ隊の中から飛び出してきたのは、虎白を含む全ての攻撃隊だ。アルデン王と王立近衛兵、莉久、竹子、笹子、夜叉子もこの場にいる。
では、壁の破壊とは、何が起きたのか。
メルキータ皇女に作戦を話している虎白は、壁の破壊の説明をしている。
「いいか。 油、火薬、を集めて燃やす。 ガラス、レンガ、小石などで爆発を凄まじく見せる。 そして砂をかき集めて、爆風に乗せて視界を断つ」
「そして突入ですか?」
「ツンドラ軍を抜けた一般兵達に、突入させて少しだけ騒ぎを起こせ。 ノバガードが気がついたら、直ぐに撤退するんだ。 その時に、道が開いたぞ鞍馬! と、叫ばせろ」
つまり陽動作戦は、壁の破壊であって、意表を突いてデモ隊がいる正面から突入をしたのだ。
なぜ、この作戦がこうも上手く行ったのかは、秦軍がツンドラの主力と睨み合っていることにある。
大軍を集めておいて、戦わず少数の部隊で入ってきた。今回も同じ手口なのだろう。というツンドラ側の先入観があったからだ。今までの虎白なら、デモ隊を使って騒ぎを起こし、壁を破壊して突入してきても不思議ではない。
だからこそ、あえて正面から突入することに最大の効果があったのだ。
「迅速に突入しろ! 三人一組でノバガードを斬れ! 宮殿内は入り組んでいるから、兵力差は気にしなくて済む」
デモ隊から抜けて、同行するメルキータ皇女が案内を務める。そして騒いでいたデモ隊は、虎白らが突入すると、我先に帝都から抜け出していったのだった。
全ての都市を通過した虎白らは、遂に敵国の心臓部にまで到達したのだった。
「着きましたね虎白殿」
「ノバの宮殿にまで行かねえとな」
「作戦はありますか?」
アルデン王は心に決めていた。この戦いでは、虎白の作戦に従おうと。彼の戦い方は、奇想天外だ。スタシアにある騎士道精神とはかけ離れているが、彼の戦う理由はスタシアと同じ。
民が穏やかに暮らせる世の中こそ、真の平和である。
「そうだな作戦か。 あるぞ!」
「本当に多くの作戦を持っていらっしゃいますね虎白殿」
不敵な笑みを浮かべる虎白は、アルデン王の耳元に口を近づけた。話しを聞き終えたアルデン王は、驚きのあまり目を見開いた。
「ほ、本気ですか?」
「ああ、絶対上手く行くって!」
アルデン王は思った。もはや虎白殿は、この戦いを楽しんでおられるように見える。ご自身が考える作戦が、見事に成功していく。優越感すら感じているのかもしれない。
騎士道精神には反するが、敵を欺き、意表を突いて勝利する。この男の恐ろしさはそこにある。しかしこのような戦い方は私にはできない。
「色々考えるところもあるんだろアルデン」
「え!? い、いえ......」
「お前の祖父とも一緒に戦ったんだ。 スタシア王国の騎士道精神に反するんだろ?」
「......反しています。 ですが、承知の上で同盟を結びました。 騎士道精神も大事ですが、何より大事なのは、か弱き民が苦しまない世界です」
この一点が、アルデン王と虎白を結んだのだ。騎士道を大切にして、敵を欺く行為を恥と思うスタシア王国の伝統は、虎白の戦術とは相容れないものだ。
しかし恥を忍んでも、貫きたいのは、民が穏やかに暮らせる国家である。アルデン王は、虎白が参戦するよりも前からツンドラと戦っていた。
圧倒的に兵力で勝るツンドラ軍を前に、騎士道を貫くことは困難であったのだ。
「気にするな。 もしスタシアの民がお前に怒るなら、全ては俺が行った戦術だと直接話してやるから」
「決してそんなことは。 私の国は、私が治めます。 そんなことまで助けていただくわけには」
「いつだったか、お前の祖父も同じようなことを言っていたよ」
アルデン王の肩をポンポンと叩いた虎白は、ノバ皇帝が身を隠しているであろう宮殿への突入作戦の準備を始めた。
ノバグラードから少し離れた集落に陣地を作った虎白らは、遂に作戦の準備を整えた。
緊張した面持ちで、歩いてきたのは、メルキータ皇女だ。
「やはりどうしたって、この戦いで重要なのはお前だ」
「は、はい! 言われた通りに!」
「よしやってやるか!」
メルキータ皇女は、虎白から作戦を伝えられると、周辺の民を呼び集めた。中には、武装解除したツンドラ兵も大勢いる。
そしてデモ隊と化したメルキータ一派は、ノバグラードへ進み、帝都で暮らしている民までも吸収して、何万にも膨れ上がっている。
見かねたノバガードが続々と集まってきて、宮殿への入口を塞いだ。そう、ここまでは虎白の読み通りだ。
「ノバ皇帝の圧政にはもう、うんざりだ!」
「メルキータ皇女様を女帝に即位させろー!」
「お前ら政府のためには、もう働かないぞ!」
宮殿の前で、大騒ぎするデモ隊は、叫び続け、高々とプラカードを掲げている。ノバガードは、表情こそ変えることはなかったが、命令があればいつでも斬り捨てるといった静かなる殺気を放っている。
そんな時、ノバガードに届いた知らせは、彼らを苛立たせるものであった。
「おい! このデモ隊は陽動作戦だ! 宮殿の壁を破壊して、敵が入り込んだそうだ!」
「卑怯な作戦ばかりしやがって! おい破壊された壁へ急げ! デモ隊を抑えるのは、僅かな兵士でいい!」
メルキータ皇女率いるデモ隊は、虎白らが壁を破壊して突入するための囮。それを知ったノバガードは、苛立ちを抑えながら、壁へと大多数の兵士が向かった。
その時だ。
「今だ! 手薄な敵を斬り捨てて宮殿へ突入しろ! 宮殿内へ入れば、ノバガードは兵力を武器には戦えねえぞ!」
デモ隊の中から飛び出してきたのは、虎白を含む全ての攻撃隊だ。アルデン王と王立近衛兵、莉久、竹子、笹子、夜叉子もこの場にいる。
では、壁の破壊とは、何が起きたのか。
メルキータ皇女に作戦を話している虎白は、壁の破壊の説明をしている。
「いいか。 油、火薬、を集めて燃やす。 ガラス、レンガ、小石などで爆発を凄まじく見せる。 そして砂をかき集めて、爆風に乗せて視界を断つ」
「そして突入ですか?」
「ツンドラ軍を抜けた一般兵達に、突入させて少しだけ騒ぎを起こせ。 ノバガードが気がついたら、直ぐに撤退するんだ。 その時に、道が開いたぞ鞍馬! と、叫ばせろ」
つまり陽動作戦は、壁の破壊であって、意表を突いてデモ隊がいる正面から突入をしたのだ。
なぜ、この作戦がこうも上手く行ったのかは、秦軍がツンドラの主力と睨み合っていることにある。
大軍を集めておいて、戦わず少数の部隊で入ってきた。今回も同じ手口なのだろう。というツンドラ側の先入観があったからだ。今までの虎白なら、デモ隊を使って騒ぎを起こし、壁を破壊して突入してきても不思議ではない。
だからこそ、あえて正面から突入することに最大の効果があったのだ。
「迅速に突入しろ! 三人一組でノバガードを斬れ! 宮殿内は入り組んでいるから、兵力差は気にしなくて済む」
デモ隊から抜けて、同行するメルキータ皇女が案内を務める。そして騒いでいたデモ隊は、虎白らが突入すると、我先に帝都から抜け出していったのだった。
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