72 / 171
シーズン
第6ー3話 紡がれる記憶の断片
しおりを挟む
薄暗い部屋の中に差し込める淡い光りが、神族を照らしている。
日本神族の長おさは太陽の女神と言われているのは周知の事実。
天上界の正義を守るのは光りの神であるミカエルで、天王は雷の神だ。
皆を照らす光りとは素晴らしいものだ。
迷える者達の道標みちしるべになる。
記憶の戻った虎白は正室せいしつである恋華と、古くからの家臣である莉久と共に晩酌をしている。
そこに、過去を追求するために呼び出された天王ゼウスもまた酒を浴びるほど飲んで夜を明かした。
淡い朝日の光りが部屋に差し込める中、虎白はうとうとしながらも天守閣の窓を開けた。
「ほら朝が来たぞみんな」
「ああ、恋華は可愛いのお・・・」
「天王起きてください」
虎白が指でゼウスの体を突くと、ふにゃふにゃと口を動かしながら長身を立ち上がらせた。
眠そうに目を擦りながら立ち上がったゼウスの指の周りには、小さな雷がばちばちと白い髭を駆け巡る様に動いていた。
大きなあくびをしながら、畳の上に座り込むと酒を再び飲み始めたではないか。
虎白が女の様な顔を近づけて酒を取り上げると、頭をふさふさと撫でている。
「わしはただお前を息子の様に思っていた・・・皇国へ戻さなかった事は許してくれ」
「せめてその気持ちをもっと早く伝えてほしかったです」
ゼウスの親心から虎白を、長年側に置いていた。
だが霊界から天上界へ来た虎白は、過去の記憶が消えていたのだ。
事の経緯だけでも話さなくては納得がいかないというもの。
腕を組んで黙っている虎白の頭を撫で続けているゼウスは、優しく微笑むと立ち上がった。
「とはいえ、血の繋がった息子がわしを探しに来る頃だ。 帰らねば」
「天王最後に一つだけ聞かせてください、俺が下界へ降りて人間に封印されていた時の記憶が戻りません。 どうして俺は人間に?」
それは全ての始まりとも言える。
天上界にいた事は、大陸大戦を経て未熟な虎白を可愛がっているがために側に置いておいたのだとわかった。
だが何があって人間の体に封印されていたのか。
それだけがどうしてもわからなかったのだ。
問いかける虎白の顔を見ているゼウスは、頭をぼりぼりとかきながら困惑した表情をみせている。
「わしが聞きたいぐらいだ。 突然いなくなったお前を心配していたのだ・・・だがそれもテッド戦役の後であった。 友を亡くしたお前は下界へと逃げたのだろう・・・そこをハデスやルシファーに封印されたのではないか?」
冥府の王であるハデスと、魔族の王であるルシファーは何度も口にしている。
それはアルテミシアやウィッチにまで厳命している事であった。
鞍馬虎白は生け捕りにしろと。
なんらかの方法と理由があって、人間に封印していた虎白が天上界に戻ってきてからは冥府の動きも活発になっていた。
邪悪なる王達は虎白を殺さずに捕まえようとしている事も不可解だ。
ゼウスの話しを聞いた虎白も、冥府の不可解な動きに困惑している。
「連中はどうして俺を生け捕りにしようとするのか・・・アルテミシアは俺を生け捕りにすると話していた」
「連中はわしの大切にしている者を奪うのだ・・・デメテルという、わしの側室の娘まで誘拐したのだ」
デメテルとはゼウスの愛人として知られるが、本人は側室だと主張して妻という形になっている。
そしてゼウスとデメテルとの間の子供がコレーと呼ばれる女神だ。
彼女はなんと冥王ハデスによって誘拐され、妻にされてしまったのだ。
今ではコレーではなく、ペルセポネと名乗っている。
この様にハデスは異常なまでにゼウスに対して、嫌悪感をあらわにしているのだ。
手口は強引で挑戦的とも言える。
そんなゼウスが可愛がっている虎白もまた、ハデスにとっては手に入れたい存在というわけだ。
ハデスには子供がいない。
誘拐して妻にしたペルセポネとの間に子供ができるはずもないが、それ故にゼウスにとって息子的存在だが血の繋がりのない虎白は好都合だったのだろう。
そしてテッド戦役で傷心した虎白が、下界に降りた際に封印してゼウスの元へ戻れなくしたと推測された。
しかし下界という人間が第一の人生を歩む過酷な世界には、霊界という別の世界もある。
下界で死した者が、天上界、冥府に行かずに彷徨う世界だ。
人間に封印された虎白は結果として、そこで竹子達に出会う事になった。
その際に彼らが目の当たりにしたのは、魔族による過激な動きだ。
虎白を封印した彼らは何が理由で、暴れていたのか。
「魔族は下界で何をしていたのか・・・」
「それはお前の部下である皇国武士を殲滅しようとしていたのだ。 到達点の守り手は下界の守り手でもあるからな」
それは下界にいる頃に出会った、厳三郎や土屋達も話していた。
狐の軍勢が、かつては守っていたと。
しかし虎白が人間の体から出た際には、皇国軍の姿はなかった。
つまり魔族の動きが活発だったというわけだ。
虎白は隣にいる恋華に皇国下界軍について尋ねた。
「天王の話すとおりよ。 連中は人間には関心がなく、我ら武士を狙っていたの」
「だから危険だから撤退させたのか?」
「そう貴方が天王の元に行って以来、皇国第九軍はずっと私が指揮していたからね」
下界で厳三郎達が困惑していた理由は、これだったというわけだ。
魔族による異常なまでの皇国武士への攻撃を危険視した、恋華の決定だった。
まさか人間の中に夫の虎白がいるとは知らずに、魔族を警戒したがための結果だ。
次第に繋がれてきた疑問と真実は、冥府軍という邪悪な存在によって引き起こされた事となった。
立ち去ろうとしたゼウスに虎白は、再び最後の質問をした。
「冥府の統治を行うって言ったのはハデス本人ですか?」
「それはわしが兄上を嫌っているから追いやったと言いたいのか?」
「ええ、まあ」
「そんな事はない。 これはシュメール神族の罠とも言えたのだ」
ゼウスは帰る事を止めて酒を飲み直し始めると、大陸大戦での出来事を話し始めたのだった。
日本神族の長おさは太陽の女神と言われているのは周知の事実。
天上界の正義を守るのは光りの神であるミカエルで、天王は雷の神だ。
皆を照らす光りとは素晴らしいものだ。
迷える者達の道標みちしるべになる。
記憶の戻った虎白は正室せいしつである恋華と、古くからの家臣である莉久と共に晩酌をしている。
そこに、過去を追求するために呼び出された天王ゼウスもまた酒を浴びるほど飲んで夜を明かした。
淡い朝日の光りが部屋に差し込める中、虎白はうとうとしながらも天守閣の窓を開けた。
「ほら朝が来たぞみんな」
「ああ、恋華は可愛いのお・・・」
「天王起きてください」
虎白が指でゼウスの体を突くと、ふにゃふにゃと口を動かしながら長身を立ち上がらせた。
眠そうに目を擦りながら立ち上がったゼウスの指の周りには、小さな雷がばちばちと白い髭を駆け巡る様に動いていた。
大きなあくびをしながら、畳の上に座り込むと酒を再び飲み始めたではないか。
虎白が女の様な顔を近づけて酒を取り上げると、頭をふさふさと撫でている。
「わしはただお前を息子の様に思っていた・・・皇国へ戻さなかった事は許してくれ」
「せめてその気持ちをもっと早く伝えてほしかったです」
ゼウスの親心から虎白を、長年側に置いていた。
だが霊界から天上界へ来た虎白は、過去の記憶が消えていたのだ。
事の経緯だけでも話さなくては納得がいかないというもの。
腕を組んで黙っている虎白の頭を撫で続けているゼウスは、優しく微笑むと立ち上がった。
「とはいえ、血の繋がった息子がわしを探しに来る頃だ。 帰らねば」
「天王最後に一つだけ聞かせてください、俺が下界へ降りて人間に封印されていた時の記憶が戻りません。 どうして俺は人間に?」
それは全ての始まりとも言える。
天上界にいた事は、大陸大戦を経て未熟な虎白を可愛がっているがために側に置いておいたのだとわかった。
だが何があって人間の体に封印されていたのか。
それだけがどうしてもわからなかったのだ。
問いかける虎白の顔を見ているゼウスは、頭をぼりぼりとかきながら困惑した表情をみせている。
「わしが聞きたいぐらいだ。 突然いなくなったお前を心配していたのだ・・・だがそれもテッド戦役の後であった。 友を亡くしたお前は下界へと逃げたのだろう・・・そこをハデスやルシファーに封印されたのではないか?」
冥府の王であるハデスと、魔族の王であるルシファーは何度も口にしている。
それはアルテミシアやウィッチにまで厳命している事であった。
鞍馬虎白は生け捕りにしろと。
なんらかの方法と理由があって、人間に封印していた虎白が天上界に戻ってきてからは冥府の動きも活発になっていた。
邪悪なる王達は虎白を殺さずに捕まえようとしている事も不可解だ。
ゼウスの話しを聞いた虎白も、冥府の不可解な動きに困惑している。
「連中はどうして俺を生け捕りにしようとするのか・・・アルテミシアは俺を生け捕りにすると話していた」
「連中はわしの大切にしている者を奪うのだ・・・デメテルという、わしの側室の娘まで誘拐したのだ」
デメテルとはゼウスの愛人として知られるが、本人は側室だと主張して妻という形になっている。
そしてゼウスとデメテルとの間の子供がコレーと呼ばれる女神だ。
彼女はなんと冥王ハデスによって誘拐され、妻にされてしまったのだ。
今ではコレーではなく、ペルセポネと名乗っている。
この様にハデスは異常なまでにゼウスに対して、嫌悪感をあらわにしているのだ。
手口は強引で挑戦的とも言える。
そんなゼウスが可愛がっている虎白もまた、ハデスにとっては手に入れたい存在というわけだ。
ハデスには子供がいない。
誘拐して妻にしたペルセポネとの間に子供ができるはずもないが、それ故にゼウスにとって息子的存在だが血の繋がりのない虎白は好都合だったのだろう。
そしてテッド戦役で傷心した虎白が、下界に降りた際に封印してゼウスの元へ戻れなくしたと推測された。
しかし下界という人間が第一の人生を歩む過酷な世界には、霊界という別の世界もある。
下界で死した者が、天上界、冥府に行かずに彷徨う世界だ。
人間に封印された虎白は結果として、そこで竹子達に出会う事になった。
その際に彼らが目の当たりにしたのは、魔族による過激な動きだ。
虎白を封印した彼らは何が理由で、暴れていたのか。
「魔族は下界で何をしていたのか・・・」
「それはお前の部下である皇国武士を殲滅しようとしていたのだ。 到達点の守り手は下界の守り手でもあるからな」
それは下界にいる頃に出会った、厳三郎や土屋達も話していた。
狐の軍勢が、かつては守っていたと。
しかし虎白が人間の体から出た際には、皇国軍の姿はなかった。
つまり魔族の動きが活発だったというわけだ。
虎白は隣にいる恋華に皇国下界軍について尋ねた。
「天王の話すとおりよ。 連中は人間には関心がなく、我ら武士を狙っていたの」
「だから危険だから撤退させたのか?」
「そう貴方が天王の元に行って以来、皇国第九軍はずっと私が指揮していたからね」
下界で厳三郎達が困惑していた理由は、これだったというわけだ。
魔族による異常なまでの皇国武士への攻撃を危険視した、恋華の決定だった。
まさか人間の中に夫の虎白がいるとは知らずに、魔族を警戒したがための結果だ。
次第に繋がれてきた疑問と真実は、冥府軍という邪悪な存在によって引き起こされた事となった。
立ち去ろうとしたゼウスに虎白は、再び最後の質問をした。
「冥府の統治を行うって言ったのはハデス本人ですか?」
「それはわしが兄上を嫌っているから追いやったと言いたいのか?」
「ええ、まあ」
「そんな事はない。 これはシュメール神族の罠とも言えたのだ」
ゼウスは帰る事を止めて酒を飲み直し始めると、大陸大戦での出来事を話し始めたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる