天冥聖戦 伝説への軌跡

くらまゆうき

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第6ー7話 盟友からの静かなる悲鳴

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 破片とは元は、何か一つの形をなしているものだ。


それは物であっても、記憶であっても。


記憶を失った虎白は、断片的に記憶を回復させていった。


 そして今では記憶はほぼ、完全に回復したと言える。


かつて火星から降り立った神族は地球で、先住神のシュメール神族と戦いかの土地を勝ち取った。


虎白はゼウスの配下として、長年従事していたがテッド戦役での惨劇を目の当たりにした事で下界へ逃げ去った。


 そこを冥府の手によって人間に封印された。


蘇った記憶とゼウスらの証言で納得した虎白は、今後は戦争のない天上界のために生きていこうと決意した。


 竹子との痴話喧嘩を経て、前を向く神族は布団の中で目を覚ました。


着物すら着ていない虎白がむくっと起き上がると、隣では同じ様に白い肌を露出して眠っている竹子の愛おしい姿があった。


寝顔を眺めて微笑むと、静かに頬に口づけをして部屋を出ていった。



「さてと。 白陸をより強国にしなくては。 サラの加入によって兵器の生産が始まったな」



 アーム戦役という未曾有の危機は、白陸を苦しめた。


多くの犠牲者を出したかの激戦だが、得たものも多かった。


まずは何よりも恋華と皇国軍の存在だ。


 そしてエヴァによる近代戦闘の知識とサラによる新型兵器の生産。


冥府軍の総大将であった、ウィッチの戦術は近代的で危険なものであった。


戦い方を変えなくてはならないと、痛感した虎白は帰国後すぐに大号令を発令したのだ。


 近代技術導入令である。


そしてサラによって設計図化された新型兵器を、多くの作業員達が生産している。


一方でエヴァは白陸軍へ近代戦闘を伝授すべく、日々夜叉子や甲斐と言った将軍らと話し合っていた。


 そして皇帝である白陸の最高責任者の虎白は、天守閣の部屋に入ると天上界の地図を見ていた。


腕を組んで険しい表情をする皇帝は地図から目を離して、隣りにある書類を手に取った。



「また北側領土が騒がしいなあ」



 狐特有の細くて鋭い瞳で、見ている書類は手紙だ。


送り主は盟友であるスタシアのアルデン王からではないか。


手紙にはアルデンからの頼み事がいくつか、書かれていた。


一つは北側領土でスタシアの統一事業を邪魔する二つの大国による、反撃に手を焼いているという内容だ。


 そしてもう一つは、複雑な北側領土において政治的優位性を確立するための、アルデンからの提案であった。



「婚姻同盟かあ」



 白陸とスタシアの重鎮を結婚させる事によって、身内関係となる。


つまる所、先の二つの大戦に勝利して一躍有名になった影響力のある白陸を後ろ盾にしたいというアルデン王の狙いがあったのだ。


 だが婚姻同盟とは言い方を変えれば、強制結婚というわけだ。


国家間の都合によって愛のない結婚をするのだ。


それは虎白が何よりも嫌悪する内容でもあった。



「アルデンのやつ・・・結婚をなんだと思ってんだよ」



 つい先程まで自身も結婚について、頭を抱えていた所だ。


どうしても竹子を愛するがために、恋華を正室せいしつとして迎える事ができなかった。


結婚とはそういうものだ。


 スタシアからの一方的な縁談えんだんに対して、不快感をあらわにする虎白は側近の莉久を部屋に呼び出した。



「失礼致す」
「スタシア行くぞ」
「はは!! では護衛の武士を用意致します」



 虎白はアルデン王に対して、直接話し合いを求めるために莉久を連れて北側領土へ向かおうとしていた。


すると髪の毛を綺麗に整えて、鮮やかな着物に身を包む竹子が部屋に入ってきた。


 どこか安心した様な表情で穏やかに微笑む竹子は、虎白の隣に座ると地図を見ていた。



「スタシア?」
「ああ、俺は莉久と護衛を連れて行ってくる。 留守を頼んだ」
「わかった。 気をつけてね」
「話し合ってくるだけだ」



 竹子はアルデン王からの手紙や、北側領土の地図を見ながら気をつけてねと発した。


健気で虎白が好きでたまらない竹子なら外出するだけでも、気をつけねと発しても不思議ではない。


 だが虎白は竹子の真剣な表情を見ると、着始めていた外出用の着物の紐を結ぶ手を止めた。



「何か思う所があるか?」
「うんまあね・・・たぶんスタシアは苦しい状況にあるのかな。 だから一方的に婚姻同盟の話しを持ちかけたのかな」



 竹子はそうつぶやくと、地図に書かれているスタシアと隣接する二つの大国を指さした。


その大国からの侵攻や政治的圧力を受けているのではと話す竹子は、聡明で礼儀正しいアルデン王の強引な同盟話しを疑問に感じていた。


 アルデン王が誰かを結婚させるなら、白陸に挨拶ぐらい来るはずだと話すと愛する虎白の着物の紐を結び始めた。



「護衛は多めに連れて行ってね」
「百ぐらいで考えてたが」
「いや千は連れて行ってね」



 虎白は大げさではないかと、眉間にしわを寄せたが竹子の真剣な眼差しを見るに断る予知はないと悟った。


静かにうなずくと皇国武士を千柱も召集した。


こうして虎白と莉久による北側領土への視察が始まったのだった。
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