天冥聖戦 伝説への軌跡

くらまゆうき

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第6ー6話 神族と人間の愛

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 痴話喧嘩とは、微笑ましくも馬鹿馬鹿しい内容だ。


家にあった食べ物を勝手に食べられた、自身以外の異性と会話したなどなど。


他人からすれば、どうでもいい内容だが本人らは真剣だ。


 そんな唯一無二にして、恋人関係だからこそできるのが痴話喧嘩だ。


世界神族の話しを聞いた虎白は、蘇った記憶に困惑しつつも恋華の出現で傷心している竹子の元へと足を運んだ。


 恋華は虎白の許嫁いいなずけとして妻になる事が決まっていたが、夫婦としての関係性はまるでなかった。


方や恋華もまだ立派な夫として見ていないのが、言動から良く分かる。


竹子の部屋に入る前に立ち止まった虎白は、不安げな表情をしていた。



「あいつを失いたくねえ・・・竹子がいなくなったら俺は生きていけねえよ・・・」



 声を震わせて小さく言葉を発した虎白は、扉に手をかけた。


今にも扉を開けようとした時だ。


恋華が虎白の手に添える様に被せると、顔を接近させている。


 なんだよと眉間にしわを寄せた虎白だったが、恋華はどこか不敵な笑みすら浮かべていた。



「一つ断っておくよ。 私は形上の妻、貴方は長年私には及ばなかったね」
「そうだな、俺は所詮神々の中では無能だろうよ」



 ゼウスから話されたシュメール神族との戦いでは、虎白は逃げ惑っていた。


幼少期のうちに地球へ降り立った神々だが、虎白の成長の遅さは日本神族だけではなく世界神族からも揶揄やゆされる始末であった。


 その笑声しょうせいを嫌でも浴びる事になったのは、許嫁の恋華であった。


無能な虎白の妻とはおいたわしやと、鼻で笑われるのは日常茶飯といった所だ。


 だが虎白とていくら一所懸命に取り組んでも、何もなし得ない事に悔しさや恥ずかしさを感じてはいたが、どうする事もできずに苦しんでいたのだ。


そんな虎白は神々から小馬鹿にされていたが、彼を見守り続けてくれた存在がいた。


 その神は来るラグナロクによって、壮絶な最後を遂げた北欧神族だ。


あまりの美しさに様々な神々から求婚されていた、女神フレイアだ。


彼女だけは無能な虎白に寄り添い、見守り続けてくれたというわけだ。


 ラグナロクを知った後に虎白は失意のまま、ゼウスの元で天上界と冥府の戦いに加わってから人間に封印されてしまった。


そんな転落人生を経験した虎白の前にある日、現れたのが竹子だ。


 人間という神々によって大量生産された生き物だが、竹子の瞳はフレイアの如き優しく、色白の肌は神々の様に美しかった。


そしていかなる窮地でも味方でいた竹子は、虎白にとって生きる理由であり、戦争のない天上界を作ると決めた何よりもの原動力だったのだ。


 恋華が自身を立派な夫と認めていなくても、竹子は認めている。


ならば許嫁に縛られる事なく、竹子を愛そうと決めた虎白は扉を開けた。


その姿を見届けた恋華はどこか満足げな表情で、その場を立ち去った。


 扉を開けると、畳の上で体を小さく丸めて座っている竹子がぽつりと寂しそうな表情で暗い部屋にいた。



「竹子!!」
「どうしたの・・・」
「愛してるんだ。 神族と人間でも構わねえ。 恋華は俺を認めちゃいねえけど、お前はずっと俺を信じてくれたじゃねえか!!」



 日頃は冷静な虎白が、声を大きくして話している。


真剣な眼差しで訴えかける、虎白の言葉は竹子の胸に突き刺さっているのだ。


しかしどうしても、許嫁の存在が気になって仕方がない竹子は素直に喜ぶ事ができずにいた。


 虎白の言葉を聞いて、目に涙を浮かべている竹子は下唇を噛んで、泣くのを必死に堪えている。


彼女のこの顔を見たくないがために、必死に白陸を建国して戦ってきたのだ。


崩れ落ちる様に竹子の前で両膝をついた虎白は、力一杯小さな体を抱きしめた。



「お前はずっと味方でいてくれた。 今思うと、怖い事が多かった・・・魔族からの追撃もメテオ海戦もアーム戦役も・・・」
「私も怖かったよお・・・でも虎白がいるから頑張れたよ」
「それは俺もだ!! 世界中が敵に回っても味方でいてくれよ・・・」



 世界中とは随分と大きく言ったが、虎白はそれほどまでに竹子を愛していた。


壮大な包囲網を想像した竹子も実現してほしくはないと思いつつも、腕の中で小さくうなずいた。


 互いに顔を見合わせる恋仲は、目に涙を浮かべている。


だがやがて互いに笑い合った。


「泣いちゃったね」
「お前があんな顔するからだよ」
「ねえ虎白、私を拾ってくれてありがとうね」
「馬鹿言うな。 俺と出会ってくれてありがとうな」



 そう、互いに感謝しつつ微笑み合う二人の光景は神族と人間という圧倒的な種族の差を乗り越えて愛し合った。


目に浮かんでいる涙を拭き合い、見つめ合っている。


徐々に接近していく顔が、密着する直前に竹子が目を閉じると、静かに口づけをした。


 滑らかに絡み合う神族と人間の唇は、やがて激しくなり竹子の着物の中に白い手を入れた。


すりすりと着物が脱げていく音と、唇が絡み合う音だけが暗い部屋で奏でられると二人は愛を育んだ。


感情のままに。


 こんな日々を守るために戦争のない天上界を作るのだ。


いかなる者であっても、幸せになる義務があるという事だ。
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