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シーズン
第8ー12話 英傑達の前夜祭
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青く壮大な天空からは、天上界の景色を見渡せる。
天王ゼウスが有する大空には、彼を邪魔する者などいない。
可愛い虎白が自身の意見を聞き入れてくれなかった事を、悲しむには大空が一番である。
誰にも見られる事のないゼウスだけの世界が広がっているのだ。
そんな圧倒的な力を持つゼウスは、空から可愛い虎白とその仲間達が北へ進んでいる様子を見下ろしていた。
見事なまでに綺麗に整列して歩いている大軍勢は、虎白の夢のために集まった有志達。
方やゼウスに見下されてるとも知らずに、虎白はルーシー国境付近に到着するとアルデン王とスタシア軍に合流してその数をさらに膨らませた。
野営地で出迎える赤き王と四聖剣らの表情は、勇ましく闘志に満ちている。
「度々申し訳ない虎白・・・」
「いや、これは俺達にとっても大切な戦いだ。 半獣族を救出するのは、俺の義務だ」
虎白が滅ぼしたツンドラ帝国が、か弱き半獣族を守っていたとは知らなかった。
そうとは知らず、栄光に酔いしれていた自身をどうしても許せない虎白は、必ず半獣族を救出するんだと勇んでいる。
野営地に漂う暑苦しいまでの闘志を落ち着かせるかの様に、一同の嗅覚を刺激したのはなんとも美味そうな匂いだ。
竹子ら白陸の将軍が振る舞う手料理である。
「まずは腹ごしらえをして、明日の侵攻に備えましょう」
こうして明日の攻撃に備えて行われた宴は、とてつもなく盛大だ。
気がつけば、太陽も沈み夜になっている。
月の女神アルテミスというゼウスの娘が仕事を行うために夜空を照らし始めた。
三日月が美しく有志を照らす中、彼らの輪に入らずに二人で酒を飲んでいる者らが虎白の視界に入った。
「明日は、お前らの仲間が大勢倒れる。 覚悟はいいのか?」
「仲間達は敵である鞍馬達と戦って倒れるんだ・・・みんな戦士だから戦場で死ぬ事はむしろ誇らしい」
そう小さい声で話したのはゾフィアだ。
隣で静かに酒をすするユーリもまた、同じ心境だろう。
ルーシーの民は戦闘民族としての誇り高き最期を喜んで迎える。
しかしユーリとゾフィアにとって今から行われる戦いが、自身らにとって誇り高いのかと考えていた。
それは言葉に出さなくても、虎白には良く理解できている。
彼女らの隣に座ると、共に酒を豪快に喉を鳴らして飲んだ。
そして大きく一息つくと、三日月を眺めた。
「お前らは辛いだろうな。 だけど、誰かが正さないとな」
「わかっている。 そのために仲間達を犠牲にする自分が許せない・・・」
「お前は悪くねえよ。 人の上に立って不正をする奴が悪いんだ・・・お前も明日死んでいくルーシー兵もみんな被害者だよ」
フキエの腐りきった貧困ビジネスを破壊して、ルーシー大公国を元の姿に戻す。
それがユーリとゾフィアの願いであり、亡き父が志したルーシーの正しい形。
頭の中で理解できていても、仲間を殺す事がどれほど辛いのか。
虎白は彼女らのそんな胸の内を察すると、哀れみの念で溢れている。
純白の唇を微かに震えさせ、瞳を三日月で輝かせると立ち上がった。
「だから奪ってやりてえんだ戦争なんてよ・・・お前らみたいな奴が悲しむから終わらせてえんだ」
その時虎白は、改めて気がついた。
戦争のねえ天上界を創ると豪語している自身は、民のためや平和のためなんて口にしてきたが、本心はもっと身近な存在のためだった。
目の前で今日までに多くの者が、ユーリの様に壮絶な経験を持って白陸へ来ている。
かつて下界で仲間を失った友奈や、あと一歩の所で夫を失った鈴姫。
実の姉と別れて、敵の元へ来る事となった魔呂やレミテリシア。
変わり果てた元夫を自らの手で殺害した夜叉子や、実の兄と戦う定めとなったメルキータやアニャ皇女。
誰もが望んでこの様な顛末てんまつとなったわけではないのだ。
虎白は偶然にも、そんな悲しき者を近くで見続けてきた。
だからこそ、戦争のない天上界を創りたいと心底思う様になった。
輝いていた瞳を指でさっと拭くと、ユーリの肩に手を置いた。
すると突然の事だったからか、手に持っていた酒瓶を落としてしまった。
慌てて虎白が空中で、酒瓶を掴もうとした刹那。
第八感が放たれて、時間が停止した。
「あ、危ねえ・・・ユーリに悪いことしちまったな」
「いや、大丈夫だ・・・ありがとうな鞍馬」
「な、なに!?」
時間は停止している。
世界は動きを止めて、隣にいるゾフィアも視線を酒瓶に向けて動いていない。
酒瓶を手にした虎白は、ユーリの手に指先が触れている事に気がついた。
それはまるでユーリを引き入れたかの様だ。
「そんな事ができるのか!?」
「何を言っているんだ? なあゾフィア?」
ユーリも異変に気がつくと、状況が理解できずに困惑している。
方や驚きを隠せない虎白は、第八感を収めるとゾフィアに触れた。
彼女の肩を触った状態で再び、第八感を放った。
するとユーリは動きを停止させ、ゾフィアだけが動き始めたのだ。
「そ、そういう事か・・・触れば一緒に停止した世界を動けるんだな・・・」
天王ゼウスが有する大空には、彼を邪魔する者などいない。
可愛い虎白が自身の意見を聞き入れてくれなかった事を、悲しむには大空が一番である。
誰にも見られる事のないゼウスだけの世界が広がっているのだ。
そんな圧倒的な力を持つゼウスは、空から可愛い虎白とその仲間達が北へ進んでいる様子を見下ろしていた。
見事なまでに綺麗に整列して歩いている大軍勢は、虎白の夢のために集まった有志達。
方やゼウスに見下されてるとも知らずに、虎白はルーシー国境付近に到着するとアルデン王とスタシア軍に合流してその数をさらに膨らませた。
野営地で出迎える赤き王と四聖剣らの表情は、勇ましく闘志に満ちている。
「度々申し訳ない虎白・・・」
「いや、これは俺達にとっても大切な戦いだ。 半獣族を救出するのは、俺の義務だ」
虎白が滅ぼしたツンドラ帝国が、か弱き半獣族を守っていたとは知らなかった。
そうとは知らず、栄光に酔いしれていた自身をどうしても許せない虎白は、必ず半獣族を救出するんだと勇んでいる。
野営地に漂う暑苦しいまでの闘志を落ち着かせるかの様に、一同の嗅覚を刺激したのはなんとも美味そうな匂いだ。
竹子ら白陸の将軍が振る舞う手料理である。
「まずは腹ごしらえをして、明日の侵攻に備えましょう」
こうして明日の攻撃に備えて行われた宴は、とてつもなく盛大だ。
気がつけば、太陽も沈み夜になっている。
月の女神アルテミスというゼウスの娘が仕事を行うために夜空を照らし始めた。
三日月が美しく有志を照らす中、彼らの輪に入らずに二人で酒を飲んでいる者らが虎白の視界に入った。
「明日は、お前らの仲間が大勢倒れる。 覚悟はいいのか?」
「仲間達は敵である鞍馬達と戦って倒れるんだ・・・みんな戦士だから戦場で死ぬ事はむしろ誇らしい」
そう小さい声で話したのはゾフィアだ。
隣で静かに酒をすするユーリもまた、同じ心境だろう。
ルーシーの民は戦闘民族としての誇り高き最期を喜んで迎える。
しかしユーリとゾフィアにとって今から行われる戦いが、自身らにとって誇り高いのかと考えていた。
それは言葉に出さなくても、虎白には良く理解できている。
彼女らの隣に座ると、共に酒を豪快に喉を鳴らして飲んだ。
そして大きく一息つくと、三日月を眺めた。
「お前らは辛いだろうな。 だけど、誰かが正さないとな」
「わかっている。 そのために仲間達を犠牲にする自分が許せない・・・」
「お前は悪くねえよ。 人の上に立って不正をする奴が悪いんだ・・・お前も明日死んでいくルーシー兵もみんな被害者だよ」
フキエの腐りきった貧困ビジネスを破壊して、ルーシー大公国を元の姿に戻す。
それがユーリとゾフィアの願いであり、亡き父が志したルーシーの正しい形。
頭の中で理解できていても、仲間を殺す事がどれほど辛いのか。
虎白は彼女らのそんな胸の内を察すると、哀れみの念で溢れている。
純白の唇を微かに震えさせ、瞳を三日月で輝かせると立ち上がった。
「だから奪ってやりてえんだ戦争なんてよ・・・お前らみたいな奴が悲しむから終わらせてえんだ」
その時虎白は、改めて気がついた。
戦争のねえ天上界を創ると豪語している自身は、民のためや平和のためなんて口にしてきたが、本心はもっと身近な存在のためだった。
目の前で今日までに多くの者が、ユーリの様に壮絶な経験を持って白陸へ来ている。
かつて下界で仲間を失った友奈や、あと一歩の所で夫を失った鈴姫。
実の姉と別れて、敵の元へ来る事となった魔呂やレミテリシア。
変わり果てた元夫を自らの手で殺害した夜叉子や、実の兄と戦う定めとなったメルキータやアニャ皇女。
誰もが望んでこの様な顛末てんまつとなったわけではないのだ。
虎白は偶然にも、そんな悲しき者を近くで見続けてきた。
だからこそ、戦争のない天上界を創りたいと心底思う様になった。
輝いていた瞳を指でさっと拭くと、ユーリの肩に手を置いた。
すると突然の事だったからか、手に持っていた酒瓶を落としてしまった。
慌てて虎白が空中で、酒瓶を掴もうとした刹那。
第八感が放たれて、時間が停止した。
「あ、危ねえ・・・ユーリに悪いことしちまったな」
「いや、大丈夫だ・・・ありがとうな鞍馬」
「な、なに!?」
時間は停止している。
世界は動きを止めて、隣にいるゾフィアも視線を酒瓶に向けて動いていない。
酒瓶を手にした虎白は、ユーリの手に指先が触れている事に気がついた。
それはまるでユーリを引き入れたかの様だ。
「そんな事ができるのか!?」
「何を言っているんだ? なあゾフィア?」
ユーリも異変に気がつくと、状況が理解できずに困惑している。
方や驚きを隠せない虎白は、第八感を収めるとゾフィアに触れた。
彼女の肩を触った状態で再び、第八感を放った。
するとユーリは動きを停止させ、ゾフィアだけが動き始めたのだ。
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