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ファイナルシーズン最終話 愛の言の葉
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竹子達は霊界という全てを奪われた虎白と出会い、一から白陸建国まで歩みを始めた。
敵であった魔呂やレミテリシアに桜火や呂玲と次々に家族へと迎え入れた、かの者の懐の大きさは計り知れない。
何もかもがゼウスによる計画だったのに虎白は諦める事なく戦い続けた。
味方の神族が全て到達点に送られている中でも屈辱に耐えて愛する者を自らの家族へと受け入れていった功績やそのカリスマ性には憎きゼウスですら嫉妬したであろう。
やがてゼウスを退けて自らが天王になってからはそのカリスマ性と影響力から長年の悲願であった「戦争のない天上界」を実現させた。
だがそんな彼も今はいない。
愛する夫の部屋を掃除している竹子は未来を失った様な表情で寂しく作業をしている。
「おーい竹子、もうすぐ葬儀が始まるぞー。」
竹子が愛してやまないもう一人の存在である甲斐の声が聞こえる。
白くて細い腕の中にはまだ小さい息子の甲介が抱かれて、甲斐の豊満な胸に顔をうずめている。
天上界の英雄にして妻達の人生の支えでもあった虎白の葬儀が間もなく始まろうとしているのだ。
棺の中には虎白の体はないが、着物や遺品を入れて到達点へと送る。
そのために竹子は部屋を掃除して夫が大切にしていた物を探しているのだ。
すると机の引き出しから手紙が出てきた。
「こ、これは・・・遺書・・・」
一枚の手紙には鞍馬虎白からの最後の言葉が書かれていた。
「愛する妻達へ」と書かれた手紙を開いてみると、書き出しには「俺がいないから読んでいるんだ」と書かれていた。
虎白はあの最終戦争に出陣する前に万が一にも自身が戦死してしまえば天上界は大きく揺れる事になると考えていたのだ。
手紙には妻達への愛の言葉と自身が戦死した後の天上界の舵取りを示した内容が書かれている。
それはこうだ。
俺がいない天上界で愛する皆に未来を託したい。
まずは周辺国を落ち着かせて、恋華に俺の代わりに舵取りを任せたい。
そしてここからが重要だ。
もう俺達は十分に戦ってきたよな?
世界は平和なんだ。
子供達には戦争の仕方よりも国の治め方を教えてほしい。
まだ赤子だが、白斗とメリッサはもう大きい。
恋華に頼みがある。
白斗の面倒を見てやってくれ。
俺と血が繋がっているわけではないが、あいつは俺の長男だと思っている。
あいつに白陸を率いる覚悟があるなら鍛えてやってほしい。
そしてもし。
あいつにそのつもりがないなら紅恋に継がせろ。
まだ赤子の我が娘が大人になるまでは恋華と竹子達で協力して頑張ってくれ。
お前らなら大丈夫だ。
最後に一言。
お前らの事を思うと俺は、幸せだ。
どうかお前らも幸せであってくれ。
例え俺がどこに行こうとも永久に愛している。
鞍馬虎白。
薄暗い部屋の一室で泣き崩れている竹子は手紙を丁寧に机に置くと「私も愛しているよ」と声を震わせていた。
甲斐が近づいてくると手を差し出して部屋から出ていった。
城の外に出ると、城門に整列する白王隊が棺を囲んでいる。
「我らの皇帝は我らに未来を託した。 なすべき事は皇帝の作った世界を守る事だ。」
恋華がそう話すと白王隊は一糸乱れぬ動きで棺に向かって一礼した。
竹子が棺の前に立つと「いつかまた会おうね」と涙ながらに話すと霊界から天上界に訪れる時まで使用していた刀を棺に入れた。
そして竹子が丁寧に作った着物も共に。
傍らで見守る恋華にうなずくと隊列は棺を運んで、ためらいの丘へ向かった。
城門が開かれると、白陸の臣民達が涙を流していた。
虎白に守られていた臣民達は栄華を極め、皆が幸福に生きていたのだ。
棺を運ぶ一行は喪服に身を包んだ妻達と共に帝都を進み、ためらいの丘へ向かう道中で小高い丘の上に赤い甲冑に身を包んだ一団を目撃した。
ふと竹子が目をやるとそこには霊界を拠点にしている厳三郎と土屋がいるではないか。
霊界で虎白達のために囮になった勇敢なる赤備えはあの死地を脱したのだ。
それは虎白の復活を知った皇国軍が急いで霊界に戻った事が彼らの未来を繋いだ。
だがそんな虎白は既にいない。
厳三郎と土屋以下赤備えの一同は下馬すると、丘の上で正座をしては丁寧に頭を地面すれすれにまで下げている。
彼らの馬までもが、足を畳んで首を下に下げているのだ。
さらにその先では棺を運ぶ隊列を「秦」と書かれる旗印の一団が出迎えた。
「我が親友とこの世界の守護者に拝手!!」
彼らの仕来りで敬意を込めて行う右拳を左手で覆う仕草を秦国の始皇帝である嬴政が秦軍の前で行った。
それに続いた秦軍もかつて虎白と共に戦った経験のある者ばかりだ。
始皇帝は表情こそ勇ましいが、溢れるほどの涙が流れている。
「さらばだ友よ・・・」
嬴政の隣には孫策や義経までいた。
やがて隊列がためらいの丘へ到着すると、霊園を警護でもしているかの様にスタシア王国軍が整列している。
赤き王にして虎白の盟友であるアルデン・フォン・ヒステリカは自身の剣を抜くと顔の前で縦に構えた。
背後にいる近衛騎士団も彼に続いた。
「あなたが作った世界を守ります。 どうか安らかに虎白・・・」
凛々しくも気高い赤き王の美しい顔もまた勇ましき表情をしている。
しかしその頬を静かに光り輝くものがつたっていった。
やがて葬儀が行われて虎白の棺はためらいの丘へ埋葬された。
新時代を築き上げた男はこうして世界から姿を消したのだった。
残された者達は彼の意思を引き継いで戦争のない天上界を守っていく。
まずは虎白の血を引いた子供達を育てる事からだ。
彼の功績は聖なる伝説としてこの先も語られていくのだった。
天冥聖戦~聖なる伝説への軌跡 完
敵であった魔呂やレミテリシアに桜火や呂玲と次々に家族へと迎え入れた、かの者の懐の大きさは計り知れない。
何もかもがゼウスによる計画だったのに虎白は諦める事なく戦い続けた。
味方の神族が全て到達点に送られている中でも屈辱に耐えて愛する者を自らの家族へと受け入れていった功績やそのカリスマ性には憎きゼウスですら嫉妬したであろう。
やがてゼウスを退けて自らが天王になってからはそのカリスマ性と影響力から長年の悲願であった「戦争のない天上界」を実現させた。
だがそんな彼も今はいない。
愛する夫の部屋を掃除している竹子は未来を失った様な表情で寂しく作業をしている。
「おーい竹子、もうすぐ葬儀が始まるぞー。」
竹子が愛してやまないもう一人の存在である甲斐の声が聞こえる。
白くて細い腕の中にはまだ小さい息子の甲介が抱かれて、甲斐の豊満な胸に顔をうずめている。
天上界の英雄にして妻達の人生の支えでもあった虎白の葬儀が間もなく始まろうとしているのだ。
棺の中には虎白の体はないが、着物や遺品を入れて到達点へと送る。
そのために竹子は部屋を掃除して夫が大切にしていた物を探しているのだ。
すると机の引き出しから手紙が出てきた。
「こ、これは・・・遺書・・・」
一枚の手紙には鞍馬虎白からの最後の言葉が書かれていた。
「愛する妻達へ」と書かれた手紙を開いてみると、書き出しには「俺がいないから読んでいるんだ」と書かれていた。
虎白はあの最終戦争に出陣する前に万が一にも自身が戦死してしまえば天上界は大きく揺れる事になると考えていたのだ。
手紙には妻達への愛の言葉と自身が戦死した後の天上界の舵取りを示した内容が書かれている。
それはこうだ。
俺がいない天上界で愛する皆に未来を託したい。
まずは周辺国を落ち着かせて、恋華に俺の代わりに舵取りを任せたい。
そしてここからが重要だ。
もう俺達は十分に戦ってきたよな?
世界は平和なんだ。
子供達には戦争の仕方よりも国の治め方を教えてほしい。
まだ赤子だが、白斗とメリッサはもう大きい。
恋華に頼みがある。
白斗の面倒を見てやってくれ。
俺と血が繋がっているわけではないが、あいつは俺の長男だと思っている。
あいつに白陸を率いる覚悟があるなら鍛えてやってほしい。
そしてもし。
あいつにそのつもりがないなら紅恋に継がせろ。
まだ赤子の我が娘が大人になるまでは恋華と竹子達で協力して頑張ってくれ。
お前らなら大丈夫だ。
最後に一言。
お前らの事を思うと俺は、幸せだ。
どうかお前らも幸せであってくれ。
例え俺がどこに行こうとも永久に愛している。
鞍馬虎白。
薄暗い部屋の一室で泣き崩れている竹子は手紙を丁寧に机に置くと「私も愛しているよ」と声を震わせていた。
甲斐が近づいてくると手を差し出して部屋から出ていった。
城の外に出ると、城門に整列する白王隊が棺を囲んでいる。
「我らの皇帝は我らに未来を託した。 なすべき事は皇帝の作った世界を守る事だ。」
恋華がそう話すと白王隊は一糸乱れぬ動きで棺に向かって一礼した。
竹子が棺の前に立つと「いつかまた会おうね」と涙ながらに話すと霊界から天上界に訪れる時まで使用していた刀を棺に入れた。
そして竹子が丁寧に作った着物も共に。
傍らで見守る恋華にうなずくと隊列は棺を運んで、ためらいの丘へ向かった。
城門が開かれると、白陸の臣民達が涙を流していた。
虎白に守られていた臣民達は栄華を極め、皆が幸福に生きていたのだ。
棺を運ぶ一行は喪服に身を包んだ妻達と共に帝都を進み、ためらいの丘へ向かう道中で小高い丘の上に赤い甲冑に身を包んだ一団を目撃した。
ふと竹子が目をやるとそこには霊界を拠点にしている厳三郎と土屋がいるではないか。
霊界で虎白達のために囮になった勇敢なる赤備えはあの死地を脱したのだ。
それは虎白の復活を知った皇国軍が急いで霊界に戻った事が彼らの未来を繋いだ。
だがそんな虎白は既にいない。
厳三郎と土屋以下赤備えの一同は下馬すると、丘の上で正座をしては丁寧に頭を地面すれすれにまで下げている。
彼らの馬までもが、足を畳んで首を下に下げているのだ。
さらにその先では棺を運ぶ隊列を「秦」と書かれる旗印の一団が出迎えた。
「我が親友とこの世界の守護者に拝手!!」
彼らの仕来りで敬意を込めて行う右拳を左手で覆う仕草を秦国の始皇帝である嬴政が秦軍の前で行った。
それに続いた秦軍もかつて虎白と共に戦った経験のある者ばかりだ。
始皇帝は表情こそ勇ましいが、溢れるほどの涙が流れている。
「さらばだ友よ・・・」
嬴政の隣には孫策や義経までいた。
やがて隊列がためらいの丘へ到着すると、霊園を警護でもしているかの様にスタシア王国軍が整列している。
赤き王にして虎白の盟友であるアルデン・フォン・ヒステリカは自身の剣を抜くと顔の前で縦に構えた。
背後にいる近衛騎士団も彼に続いた。
「あなたが作った世界を守ります。 どうか安らかに虎白・・・」
凛々しくも気高い赤き王の美しい顔もまた勇ましき表情をしている。
しかしその頬を静かに光り輝くものがつたっていった。
やがて葬儀が行われて虎白の棺はためらいの丘へ埋葬された。
新時代を築き上げた男はこうして世界から姿を消したのだった。
残された者達は彼の意思を引き継いで戦争のない天上界を守っていく。
まずは虎白の血を引いた子供達を育てる事からだ。
彼の功績は聖なる伝説としてこの先も語られていくのだった。
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