転生魔法伝記〜魔法を極めたいと思いますが、それを邪魔する者は排除しておきます〜

凛 伊緒

文字の大きさ
31 / 96
3章 異魔眼と瞬滅

第29話 企み

しおりを挟む
バジュス・ルドゥーリズ侯爵の監視を初めて4日目。

バジュスが怪しげな者達と会い、計画を詰める日だ。
朝食を取り、いつも通り監視を始めた。
黒服の者達と話し合っているようだ。



『さて、前回の続きをしよう。前にも話した通り、今回は少し危険が伴うだろう。』

『ああ。だがこれが成功しなければ、我々の願望が叶う日は遠ざかることだろう。』

『そうだな。では計画についてだが、先ずは穏便に交渉からしよう。弱みは握っている。』

『ほう?交渉からとは、珍しいな。てっきり、いつも通り殺るのかと思ってたぜ。』

『いくらお前達が強いと言えど、相手を侮っていると痛い目を見るぞ?
それに、あの女をこちら側に引き入れた場合、得しかないという訳だ。ただし、交渉を拒否したのならば、無理矢理にでも従わせよう。最悪、殺すことになるだろうがな。お前達は近くに待機し、いつもの合図で突入してくるといい。』

『了解。結局脅すのかよ。まぁいつもの事だ。それで、いつ実行するんだ?』

『私は今夜と考えているが……どうだ?』

『まだ朝だしな。準備する時間は十分にある。』

『ああ。構わないさ。』



その後のバジュスは、 特に目立った行動をしなかった。
資料をまとめ、夜までは自身の屋敷で過ごしていた。



「さて、誰を脅しに行くのかしら?女と言っていたけれど……。」

「まさかリアラを狙っているんじゃ…。」

「有り得なくもないわね。以前招待された時も、私を取り込もうとしていたようだし。」

「警戒をするに超したことはないな。」

「ええ。」



午後7時。あたりは日も落ち、真っ暗になっていた。
バジュス1時間前に行動を開始していた。



「まさか、本当に来るとわね…。」

「気が抜けないな。」



嫌な予感ほど、当たるものだ。
監視対象が向かう先は……


──今私達がいる第三王女邸…



「居ないふり……は良い手とは思えないわね。仕方ない、待ちましょうか。」



確実にこちらに向かってきている。
下手に動くよりも、待っていた方が良いと私達は考えた。
監視していることに、 気付かれる可能性があるからだ。

少しして、勢いよく扉が叩かれる。



「リアラ様、ディジェガです!緊急のご報告が!」

「入りなさい。」

「はっ!」



ディジェガとは、この第三王女邸を守っている騎士団の団長だ。
私は厚く信頼していた。
そんな彼が緊急と言うのだ。
しかし、その内容は言われずとも知っている事だった。



「失礼致します。」

「要件は?」



ミアスが鋭く聞く。
まだ子供だというのに、大人にも負けない威圧感があった。
騎士団長であるディジェガですら、少し驚く程だった。



「ミアス、控えなさい。訪問者達に悟られる訳には行かないのだから。」



私はミアスにのみ聞こえる声で警告する。
それを聞いたミアスは、小声ですまないと言い、いつもの調子に戻る。



「失礼致しました。それでディジェガ殿、どうされたのですか?」

「はっ!正門にて、バジュス・ルドゥーリズ侯爵が訪問なされました。如何なさいましょう?」

「応接室へと通しなさい。私も直ぐに向かうわ。」

「承知しました!失礼致します。」



ディジェガが部屋から出て行った後、私は支度を済ませ応接室へと向かう。
無論ミアスも一緒だ。



「お待たせしたわ、ルドゥーリズ侯爵。」

「リアラ王女殿下。急な訪問、誠に申し訳ありません。」

「気にしていないわ。でも今は休暇中だと、噂では聞いたのだけれど。」

「その通りでございます。国王陛下より、1週間の休暇を頂いております。ですが、どうしてもリアラ殿下とお話ししたい事がありまして…。」

「そうなのね。そんなに重要な事なのかしら?」

「ええ。それはとても。」

「分かったわ。内容を聞きましょうか。」



そうして、黒い交渉が始まったのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...