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4章 災厄日
第57話 治癒魔法
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「ヴィルガお兄様。」
「リアラ、感謝するよ。治療を手伝ってくれて。」
「いえ……それよりも、事後処理はもう済んだのですか?」
「ああ。後は国王陛下に報告するだけさ。今回はリアラのおかげで、魔物の死体の処理が少ない。まさかとは思うが、それも考慮していたのか?」
「も…勿論ですっ…。……このような厄災時において最も大変なのが、討伐後の魔物の処理ですから。それを踏まえて、今回の罠にしようと、ミアスと決めたのです。そうよね、ミアス?」
「…リアラ殿下のおっしゃる通りです。爆発系の罠は、広範囲かつ獲物を粉々にします。それが故に、今回のような事態には最適と判断したのです。」
「なるほどな。常に先のことを考えているとは…。」
「……。」
ミアスの視線が痛い。
実際は魔物の数をどれだけ減らせるかにのみにこだわっていた。
その為、事後処理など考えてもいなかったのだ。
咄嗟に『勿論です』なんて答えてしまったので、適当なことを言ったのだが、感心されてしまった。
「それにしても、こんな短時間で治療が終わったのか?」
「ヴィルガ王太子殿下!」
「何だ?」
「お話中申し訳ありません。ご報告よろしいでしょうか。」
「構わない。」
「はっ。重傷者10名、軽傷者100数名の容態ですが、全員が無事に治療が終わりました!傷一つありません!」
「そうか。かなり早いな。」
「はい。リアラ王女殿下が、重傷者を優先して治癒魔法をかけてくださりました。さらに、『広範囲治癒魔法』により軽傷者を一気に治癒してくださったのです。」
「なっ!?『広範囲治療魔法』だと?」
「はい。リアラ殿下がそう唱えておりました。」
「……。」
報告に来た者の言葉を聞いて、ヴィルガは驚きつつも疑うかのように私を見る。
回復系の魔法は、中級魔法までは『回復魔法』と呼ばれるが、上級魔法以上の魔法は『治癒魔法』と呼ばれるようになる。
上級の回復系魔法は病気すらも治す為、『治癒』という言葉に変わるようだ。
《広範囲治癒魔法》、それは上級魔法よりも上の、超級魔法に該当する。
国のトップクラスのみが扱える魔法が『超級魔法』。
そして回復・治癒魔法自体が高度な魔法である以上、超級ともなれば、使える者など今のフィールア王国にはいなかった。
それ故に、ヴィルガは驚きを隠せない。
今でも、半信半疑といったところだろう。
「リアラ。本当…なのか……?」
「……。」
私は答えるべきか迷った。
回復・治癒魔法の使い手は少ない。
つまり、貴重であるが故に利用しようとする者が大勢いることも事実だ。
今王国内にいる回復魔法が使える者は、上級魔法である治癒魔法を使えない者達ばかりだ。
病気などは直せない為、貴族達に利用されることはなかった。
私が答えるべきか迷っていると、ヴィルガは察したように声をかけてきた。
「無理に答えなくていい。大体分かるよ、リアラの気持ちはな。」
「……申し訳ありません。」
「謝ることではないさ。もし治癒魔法が使えると知られれば、貴族達が取り込もうと躍起になるだろう。
今のリアラは攻撃魔法が凄いということのみが知れ渡っているが、治癒魔法の使い手だという噂などが広まれば、面倒事に巻き込まれる。それを避けたいと思うのは当然だ。」
「ありがとうございます……。」
「僕も出来る限り、リアラを守りたい。今出来ることはしておこう。」
「?今…出来ること?」
「ああ。とりあえず、皆が集まっているところに行こう。」
「…なるほど……。『口止め』ですね。」
「その通りだ。」
シンプルだが、確かにその必要性は高い。
私達は討伐隊が集まる場所へと向かうのだった。
「リアラ、感謝するよ。治療を手伝ってくれて。」
「いえ……それよりも、事後処理はもう済んだのですか?」
「ああ。後は国王陛下に報告するだけさ。今回はリアラのおかげで、魔物の死体の処理が少ない。まさかとは思うが、それも考慮していたのか?」
「も…勿論ですっ…。……このような厄災時において最も大変なのが、討伐後の魔物の処理ですから。それを踏まえて、今回の罠にしようと、ミアスと決めたのです。そうよね、ミアス?」
「…リアラ殿下のおっしゃる通りです。爆発系の罠は、広範囲かつ獲物を粉々にします。それが故に、今回のような事態には最適と判断したのです。」
「なるほどな。常に先のことを考えているとは…。」
「……。」
ミアスの視線が痛い。
実際は魔物の数をどれだけ減らせるかにのみにこだわっていた。
その為、事後処理など考えてもいなかったのだ。
咄嗟に『勿論です』なんて答えてしまったので、適当なことを言ったのだが、感心されてしまった。
「それにしても、こんな短時間で治療が終わったのか?」
「ヴィルガ王太子殿下!」
「何だ?」
「お話中申し訳ありません。ご報告よろしいでしょうか。」
「構わない。」
「はっ。重傷者10名、軽傷者100数名の容態ですが、全員が無事に治療が終わりました!傷一つありません!」
「そうか。かなり早いな。」
「はい。リアラ王女殿下が、重傷者を優先して治癒魔法をかけてくださりました。さらに、『広範囲治癒魔法』により軽傷者を一気に治癒してくださったのです。」
「なっ!?『広範囲治療魔法』だと?」
「はい。リアラ殿下がそう唱えておりました。」
「……。」
報告に来た者の言葉を聞いて、ヴィルガは驚きつつも疑うかのように私を見る。
回復系の魔法は、中級魔法までは『回復魔法』と呼ばれるが、上級魔法以上の魔法は『治癒魔法』と呼ばれるようになる。
上級の回復系魔法は病気すらも治す為、『治癒』という言葉に変わるようだ。
《広範囲治癒魔法》、それは上級魔法よりも上の、超級魔法に該当する。
国のトップクラスのみが扱える魔法が『超級魔法』。
そして回復・治癒魔法自体が高度な魔法である以上、超級ともなれば、使える者など今のフィールア王国にはいなかった。
それ故に、ヴィルガは驚きを隠せない。
今でも、半信半疑といったところだろう。
「リアラ。本当…なのか……?」
「……。」
私は答えるべきか迷った。
回復・治癒魔法の使い手は少ない。
つまり、貴重であるが故に利用しようとする者が大勢いることも事実だ。
今王国内にいる回復魔法が使える者は、上級魔法である治癒魔法を使えない者達ばかりだ。
病気などは直せない為、貴族達に利用されることはなかった。
私が答えるべきか迷っていると、ヴィルガは察したように声をかけてきた。
「無理に答えなくていい。大体分かるよ、リアラの気持ちはな。」
「……申し訳ありません。」
「謝ることではないさ。もし治癒魔法が使えると知られれば、貴族達が取り込もうと躍起になるだろう。
今のリアラは攻撃魔法が凄いということのみが知れ渡っているが、治癒魔法の使い手だという噂などが広まれば、面倒事に巻き込まれる。それを避けたいと思うのは当然だ。」
「ありがとうございます……。」
「僕も出来る限り、リアラを守りたい。今出来ることはしておこう。」
「?今…出来ること?」
「ああ。とりあえず、皆が集まっているところに行こう。」
「…なるほど……。『口止め』ですね。」
「その通りだ。」
シンプルだが、確かにその必要性は高い。
私達は討伐隊が集まる場所へと向かうのだった。
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