61 / 96
4章 災厄日
第59話 王女として、一人の人として
しおりを挟む
私は、ミアスと共に私の部屋へと戻ってきた。
私に続き、ミアスが入り、扉が閉まる。
それと同時に、部屋にあるソファへと腰掛けた。
「はぁ……疲れたわね…。」
「ああ…本当にな……。お疲れ、リアラ。」
「ミアスこそお疲れ様。今頃、お兄様達はまだ王都近くを凱旋しているところなのでしょうね。」
「だろうな。」
ほぼ歩兵の討伐隊が王都へと着くまで、もう少しかかるだろう。
窓の外を眺めながら、今回の戦いを振り返る。
死人が出なくて本当に良かったと思う。
私は魔法好きな人である前に、一国の王女だ。
民を想い、守る義務がある。
『災厄日』を事前に察知できたにも関わらず、もし死者が出たとなれば、それは私の失態となるだろう。
父ヴィライユは責めないと思うが、それでも私は自分自身を許せない。
「……。」
「どうした?」
「私は……今まで好きなように生きてきたわ。」
「急にどうしたんだよ…?」
「大好きな魔法を極めて、魔物と戦って……。」
「?」
「私が今まで好きなことをだけをして生きてこれたのは、全てお父様をはじめとする家族のおかげなのだと、今回改めて感じたのよ。」
「……そうか。」
「ええ…。民の為とは言え、結局私が望んだものは『自由に魔法の研究ができること』。お父様はそんな私の望みを、ずっと叶えてくれているわ。」
「確かにそうだな……。お茶会でアピールをしてくる貴族はいたが、縁談は今までなかったな。」
「そうなのよね…。」
そろそろ自分で何とかするべきだと感じていた。
王族という立場にも関わらず、成人して婚約者がいないという状況は普通に考えておかしいものだ。
第二王女レイアネスは別として……。
私に関しては、おそらく父が断っていたのだろう。
とはいえ、結婚する気は無い。
ミアスと魔法を研究できるのならば、他は何もいらない。
末の王女だからこそ、あまり重要視されていないということもある。
しかし本来ならば政略結婚などをするはず。
父であり国王でもあるヴィライユが私の意思を尊重してくれているのだ。
本当にありがたい…。
私は考えた。
まずは授かった二つ名を活用し、さらに功績を上げる。
隣には必ずミアスにいてもらうようにし、2人で魔物討伐などを行えば、噂が立つはすだ。
どのような噂になるかは分からないが。
そしてお茶会などには適度に参加し、結婚する気がないということをそれとなく広める。
その他も色々と考えたが、あとは行動あるのみだと思う。
「……ふふっ。」
「急に笑ってどうしたんだ?」
「考えても実行しなきゃ意味がない……か。」
「?…それはそうだろう。」
「私はもう15歳で成人している。これ以上家族に迷惑はかけられないわ。結婚をしなくて済むように、立ち位置を確立しないとね。」
「リアラがそう望むのなら、どんなことでも協力するよ。まぁ俺ができることなんて、限られてるけどな。」
「ありがとう。隣にいてくれるだけで嬉しいわ。どこにも行かないで頂戴ね?」
私は何気なく言った。
すると何故かミアスは、口を半開きにして固まった。
それも一瞬のことで、すぐに目を閉じて少し俯く。
顔を上げると同時に私を真っ直ぐと見た。
「どこにも行かないさ。リアラは俺の主人であり、大せ……。…これ以上は言ってはいけないな。」
ミアスが何を言いたかったのか、私は分かった。
初めてミアスの気持ちを知った。
今まで気が付かなかったなんて、どれほど自分が鈍感なのかと思う。
隠すのが上手いということもあるだろうが、言い訳に過ぎない。
ミアスは『それ以上言えない』が、ギリギリのところまで言い、私に気付いてくれという想いがあったのだと感じた。
……本当に立場をわきまえている。
自分のことは常に後回し。
好きな人がいてもその相手に気持ちさえ伝えられないなど、私は耐えられないだろう。
私には勿体なくて、でもずっと傍にいてほしいと思う人。
王女と側近の関係だが、一人の人としてミアスと一緒に居たい。
「……『どこにも行かない』。その言葉、忘れないわよ。」
私に続き、ミアスが入り、扉が閉まる。
それと同時に、部屋にあるソファへと腰掛けた。
「はぁ……疲れたわね…。」
「ああ…本当にな……。お疲れ、リアラ。」
「ミアスこそお疲れ様。今頃、お兄様達はまだ王都近くを凱旋しているところなのでしょうね。」
「だろうな。」
ほぼ歩兵の討伐隊が王都へと着くまで、もう少しかかるだろう。
窓の外を眺めながら、今回の戦いを振り返る。
死人が出なくて本当に良かったと思う。
私は魔法好きな人である前に、一国の王女だ。
民を想い、守る義務がある。
『災厄日』を事前に察知できたにも関わらず、もし死者が出たとなれば、それは私の失態となるだろう。
父ヴィライユは責めないと思うが、それでも私は自分自身を許せない。
「……。」
「どうした?」
「私は……今まで好きなように生きてきたわ。」
「急にどうしたんだよ…?」
「大好きな魔法を極めて、魔物と戦って……。」
「?」
「私が今まで好きなことをだけをして生きてこれたのは、全てお父様をはじめとする家族のおかげなのだと、今回改めて感じたのよ。」
「……そうか。」
「ええ…。民の為とは言え、結局私が望んだものは『自由に魔法の研究ができること』。お父様はそんな私の望みを、ずっと叶えてくれているわ。」
「確かにそうだな……。お茶会でアピールをしてくる貴族はいたが、縁談は今までなかったな。」
「そうなのよね…。」
そろそろ自分で何とかするべきだと感じていた。
王族という立場にも関わらず、成人して婚約者がいないという状況は普通に考えておかしいものだ。
第二王女レイアネスは別として……。
私に関しては、おそらく父が断っていたのだろう。
とはいえ、結婚する気は無い。
ミアスと魔法を研究できるのならば、他は何もいらない。
末の王女だからこそ、あまり重要視されていないということもある。
しかし本来ならば政略結婚などをするはず。
父であり国王でもあるヴィライユが私の意思を尊重してくれているのだ。
本当にありがたい…。
私は考えた。
まずは授かった二つ名を活用し、さらに功績を上げる。
隣には必ずミアスにいてもらうようにし、2人で魔物討伐などを行えば、噂が立つはすだ。
どのような噂になるかは分からないが。
そしてお茶会などには適度に参加し、結婚する気がないということをそれとなく広める。
その他も色々と考えたが、あとは行動あるのみだと思う。
「……ふふっ。」
「急に笑ってどうしたんだ?」
「考えても実行しなきゃ意味がない……か。」
「?…それはそうだろう。」
「私はもう15歳で成人している。これ以上家族に迷惑はかけられないわ。結婚をしなくて済むように、立ち位置を確立しないとね。」
「リアラがそう望むのなら、どんなことでも協力するよ。まぁ俺ができることなんて、限られてるけどな。」
「ありがとう。隣にいてくれるだけで嬉しいわ。どこにも行かないで頂戴ね?」
私は何気なく言った。
すると何故かミアスは、口を半開きにして固まった。
それも一瞬のことで、すぐに目を閉じて少し俯く。
顔を上げると同時に私を真っ直ぐと見た。
「どこにも行かないさ。リアラは俺の主人であり、大せ……。…これ以上は言ってはいけないな。」
ミアスが何を言いたかったのか、私は分かった。
初めてミアスの気持ちを知った。
今まで気が付かなかったなんて、どれほど自分が鈍感なのかと思う。
隠すのが上手いということもあるだろうが、言い訳に過ぎない。
ミアスは『それ以上言えない』が、ギリギリのところまで言い、私に気付いてくれという想いがあったのだと感じた。
……本当に立場をわきまえている。
自分のことは常に後回し。
好きな人がいてもその相手に気持ちさえ伝えられないなど、私は耐えられないだろう。
私には勿体なくて、でもずっと傍にいてほしいと思う人。
王女と側近の関係だが、一人の人としてミアスと一緒に居たい。
「……『どこにも行かない』。その言葉、忘れないわよ。」
2
あなたにおすすめの小説
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる