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冬の訪れとリベンジデート side J
しおりを挟む学園の庭の景色は秋から冬に変わりつつある。彼女とは仲の良い友人のままだ。
今思えば、秋の収穫祭のデートは、思い描いてたものとは違っていた気がする。まさかあんなに食べ物屋台の近くに居続けるとは……。女の子の好みそうなアクセサリーや雑貨を見て、何か贈るつもりだったのに……。
あれでは男同士の祭りの楽しみ方に近いかも知れない。むしろ、男だけの方が他の女の子と話す分、色気があると言えるのかも。
……でも、間違いなく彼女とは仲良くなれたと思う。あの日から彼女の僕に向ける眼差しに、親しみのような柔らかさを感じるようになったから。
それにしても、学園での彼女を見ていると、あの日、ふわふわのツインテールで両手に串焼きを持ち、次々と頬張っていた姿は夢だったんじゃないかと思えてくる。
教室で友人達と話している彼女をじっと見ていると、こちらに気づき、小首を傾げて穏やかな笑みを向けてきた。可愛い。うん。きっとこっちの姿が本来の彼女なのだろう。
デートを仕切り直そう。
まず王都を散策しよう。彼女に似合うアクセサリーとか一緒に選んでプレゼントしよう。秋にオープンしたカフェに寄ってから、雰囲気のいい場所で想いを伝えよう。
最近クラスでは、彼女の一番近くにいるのは僕だという認識がされてきているけど、それでも彼女を諦めていない男はいると思う。だって彼女は一番可愛い。
次の朝、いつもより早起きして学園に向かい、エントラスホールのソファで彼女を待つ。程なくして伯爵家の馬車が停まり、彼女と兄君が下りて来るのが見えた。声は聞こえないけど、彼女が笑顔で何かを言うと、兄君は指先で彼女の額を軽く触れたあと、手を振りながら離れていった。兄妹の仲が良さそうだ。
彼女は兄君の背を見送った後、エントランスホールを教室棟に向かって歩きだした。僕は立ち上がり、近づいて挨拶した。
彼女は兄君との会話の余韻なのか、いつもよりも楽しそうだった。誘うのは今しかない。
「よかったら休みの日に、うちの店に来てくれない?若い年齢層向けだから、ぜひ意見を聞かせて欲しいんだ」
少し言い訳がましい気もするけど、とにかく彼女をデートに誘う。
「次の休日は家の予定があるけど、その日以外なら喜んで」
やった!今度こそ頑張ろう。
早速カフェに予約を入れるよう手配し、ひとりで彼女を連れて行く予定の店に行った。父の商会の中でも若い女性向けの雑貨が主で、高級ではないけどそれなりに質の良いアクセサリーも置いている。
彼女に似合いそうなものはないかと店内を回っていると、店の奥から出てきた男に声を掛けられた。
「坊ちゃま、何かお探しですか?」
父にこの店を任されている男はロブと言い、僕の子供の頃から商会に勤めているため、いまだに『坊ちゃま』と呼ぶ。思わず苦笑が漏れるけど、何も言わずに話を進める。
「ここに招待したい友人がいて、今日はその下調べだよ」
僕の言葉に一度驚いた顔をしたあと、目尻に皺を作って笑う。
「ご友人ですか。なるほど。ご希望等はございますか?」
「聡明で慎ましい感じの人だから、派手ではなく繊細なデザインがいいと思うんだ」
「それでは……」
そう言いながら店の奥のショーケースに近づき、いくつかのアクセサリーをトレイにのせて戻ってきた。
僕はその中で、小さなダイヤがいくつも飾られた華奢なデザインの指輪を迷わず手に取った。彼女にぴったりだ。これならきっと制服の時でも着けられる。
あまり高級なものだと渡す意味が重くなってしまいそうだけど、今の気持ちを伝えるのには丁度いい。
「これ、石をいくつか青いものに替えることはできるかな?」
「勿論でございます」
「それで用意しておいて欲しい」
「かしこまりました。ご友人とのご来店、心よりお待ちしております」
扉まで見送られて店を出た。
彼女は笑顔で受け取ってくれるだろうか。なんとなくふわふわした気分で家まで帰った。
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