禊ぎを終えたから自由に過ごせるようになった

かざみねこ

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第2章

第25話 凄い!激しい!え、まだ続けるの!?

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 僕が呆然としている間にも曲は佳境を迎えたのか激しいテンポになり、それに合わせて踊っているブラートも、より扇情的な感じに踊っているが僕の目ではやはり筋肉質のおっさんが踊っているようにしか見えない。筋肉質な分、先程よりキレがあるようにも見える。
 おかしいな、さっきまで色々興奮してたはずなのに、もの凄く色んなものが萎えた。

「どうかなさいましたか?」
「リナ、知ってて言ってるでしょ」
「申し訳ありません」

 何も反省してない風にリナに謝られてしまった。鼻の下を伸ばしていた罰としては、これは少し重すぎないだろうか。

「それにしてもリナはよくブラートだと気づいたね。もしかしてずっとトゥルーサイト使ってるの?」
「いえ流石に常時発動をしていますと、相手の性別すら変わって見えますので色々と支障が出てしまいます」

 なるほど、確かに。今の僕みたいに呆然とならなくても日常会話とかで困りそうだ。

「ブラートさんが天界で踊り子などの結果を引いていたのを、あの方が踊り始めてからふと思い出したので、念のためスキルを使ってみました」
「あぁ、そういえばそうだった」

 僕も一緒に見ていたのに思い当たりもしなかった。これが禊ぎをしている人が分かるスキルか。スキルを貰って良かったのか悪かったのか。でも、ブラートが一生懸命禊ぎを頑張っているところが見られたと思ったら、それはそれでありかなと思えてきた。

 そんな話をしている間に、曲とダンスは終わり観客の冒険者や村人からの拍手や喝采を受けながら、ブラートたちは広場から去って行った。もうこれ以上トゥルーサイトを使っていてもしょうがないのでスキルを止めた。禊ぎ中が見られるなど勉強になったが、この落差に慣れるには相当時間が掛かるんじゃないかな。

 食事やお酒を楽しんで、そしてここに誘われた理由も終えたから僕はそろそろ部屋に戻ることにした。リナはどうするかと聞いてみたら一緒に戻ると言われ、周りに居た人たちに挨拶した後に宿屋へ戻った。

「あ、マサトさん!」

 宿屋に入るとロビーで何か打ち合わせでもしていたのか、何人かの村人とジュニアスさん、そしてブラート・・・いや、今は女性にしか見えないから、イリーナさんと確かレメイさんが皆で談話していた。そして僕を見つけたイリーナさんが手を振って僕を呼んでいた。

「どうでしたか?わたしのダンス!・・・と、レメイの音楽は!」
「おまけみたいに言わないでくれるかな?あ、自己紹介がまだだったね。私はレメイ。よろしくね」
「あぁ、こちらこそよろしくお願いします。マサト・カナエです。こちらはリナです。2人とも凄かったよ、イリーナさん誘ってくれてありがとう」

 僕が褒めたのが嬉しかったようで、やったねー!とイリーナさんとレメイさんはハイタッチをして喜んでくれた。そして今打ち合わせしていたのなら邪魔しているんじゃないかとジュニアスさんに聞いてみたら、僕たちと同じように褒めていただけだから問題無いと言われた。
 だけどこの後に報酬の話などをするらしいので、僕はもう一度2人に感謝を伝えてから、リナと2人で部屋に戻った。

「それにしてもブラートに出会えるとは思わなかったよ」
「そうですね、それなりに禊ぎを行っている方が居るとは言え、この地上の総人口に比べたら微々たる数のはずなのですが。それに私たちの知っている罪人にこうも早々出会うとは思っていませんでした」

 リナでさえそう言うのであれば、かなり珍しい確率で出会ったんだろうなぁ。

「それでどうなされますか?折角出会ったのですから行動を共にしますか?」
「う~ん、それは止めておこうかな。僕が一緒に居たらブラートの禊ぎの邪魔をしてしまいそうだし」
「畏まりました。・・・それに男女の仲になってトゥルーサイトで見てしまったら大変な事になりそうです」

 そんなことにはならないだろうけど、言われて想像・・・するまでもなく完全にBLだ。仮にそういう仲になったとして、最中にトゥルーサイトを使わなければ良いんだけど、興味本位で使ってみたら・・・ダメだ、怖くて想像したくない。

 まぁ、それ以前にブラートにそんなことをするつもりは更々無いけどね。こっちは一方的にブラートの禊ぎの事を知っている状態なのに、そんなことをしてしまったら酷い裏切りをしたことになると僕は思っている。

「それにしてもどうやらご主人様は地上に降りてからは、感情に強く影響が出ているようですね」
「え?!あ~、そうなのかな。確かに自分の意識を持った状態で地上に降りたから三大欲求が強くなってるのかもしれない。お酒を飲んだときも妙に感動してしまったし」

 ハナが言っていたみたいに発狂するほどではないけど、やはり天界で感情を抑制されていたときと地上では全然違うみたいだった。これは気をしっかり持たないと、折角サポートするために付いてきてくれたリナに欲情してしまうかもしれない。

 今はお互いそれぞれのベッドに座りながら会話しているけど、もし同じベッドで喋っていたらガバッと襲いかかっていたかも知れない。

「ですので、私がご主人様のお相手を致します」
「は?!」

 リナはベッドからすっくと立ち上がると、メイド服のエプロンドレスを脱ぎ捨てボタンを外してワンピースから肩を出し腕に掛け、リナは自分を抱きしめるように腕を抱いた。腕に押し上げられたふくよかな胸を覆い隠す清楚な白のブラジャーと、ワンピースから肩を出す際引っかけたのだろうかブラジャーのヒモが肩から外れて、より扇情的に見えた。

「え・・・っと?リナ、冗談じゃ無いんだよね?多分僕は一度始めたら止められないと思うよ?」
「勿論です。存分にお使い下さい」

 リナにそう言われた後、僕は気づいたらリナを自分のベッドに上げて押し倒していた。

「1600年間のいつからなのかは覚えていませんが、お慕いしていました」
「あぁ、僕もリナを好ましいと思っていた」

 僕たちは自然と唇を合わせていた。

                    ◇


 わたしはジュニアスさんたちから今回の踊りと演奏の報酬を貰ってからレメイと部屋に戻り、用意して貰ったお湯で汗を流した後にレメイにちょっと用事があってと適当な理由を言ってマサトさんの部屋へ向かった。

 部屋の近くまで来ると女性の嬌声が聞こえてきて、その声が聞こえてくるのがマサトさんの部屋だと分かると、わたしは廊下の壁にもたれ掛かり力を抜いた。

(あ~あ、やっぱりそういう仲だったんだ)

 この気持ちが単に助けて貰ったからなのかは分からないけれど、マサトさんを初めて見たときから妙に彼が気になってしまった。一目惚れだったのかもしれない。

 もしかしたら2人は恋仲なんかじゃなくて、単に主従の延長線上の関係なのかもしれない。だけどリナさんは女の自分でも物凄く美人で、それに盗賊を相手にする彼と共に戦って、それ以外の日常でも常に寄り添っていて、端から見ても彼女が自分の意思で彼と共に居ることが分かってしまい、とても敵いっこないと思ってしまった。
 わたしには夢があって、彼女のように彼だけを選択出来るかと言われたら躊躇してしまうだろう。最初から勝負にもならなかったんだなぁとため息が出た。

(初恋は実らないとは言うけれど、だけどこの仕打ちはないと思うよ?神様)

 わたしは音を立てないよう気をつけて、お酒でも貰ってレメイと一緒に飲んで慰めて貰おうと宿屋のロビーに足を向けた。


                    ◇


「リナにしては大胆に迫りましたね。見て下さい、あのリナの乱れよう。そしてお兄様、猛々しいです」
「はい、凄いですね・・・。普段のリナからは想像もつきません。ですが宜しいのですか?お二人を覗き見して」
「これは神として見守っているだけです。何の問題もありません」
「あの~、お二人とも~?仕事が滞っていて大変な事になっているんですが~」

 この後、結局三人で凄い!激しい!え、まだ続けるの!?と散々騒ぎ立てながら地上に降りた2人を最後まで見守っていた。
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