永久の独奏曲

不知火黒刃

文字の大きさ
16 / 19

16.また耽る

しおりを挟む
それを意味するのは、『純潔の死神』。
「百合」と呼ばれる白い花弁を持つその美しい花を英語に、死神はドイツ語から来ているそうだ。
彼女には人間達の文明の詳細や、言語に至るまで全てをこの永遠に等しい月日をかけて全てからこそ、彼女には神にも等しい知識がある。何も持たなかった自分に出来たのはそれしかなかったのだ。
最初は使命感で彼らを見ていた。死という概念に結びついていた彼女は、その「死」というものに真摯に向き合わなくてはならない、と魂をただ永遠に送り出すだけの_簡潔にいってしまえば作業である。
リリィという存在は人間でもなければ神でもない。故に感情もそこに存在しなければ、魂もない。
人の言葉を借りると、「ロボット」であった彼女は、その作業になんの思いもなく繰り返していたのだが_ふと、何故か彼女はその魂に質問をしていたのだ。
その質問の内容はもう彼女自身覚えてはいないが、何より感情も存在しないはずの彼女が疑問をもった事自体がおかしかった。という事実を彼女は後から気づく事になる。

ああ、そうだ。彼女はもうその時既に感情が、心が芽生えていたのだ。果てしない時を過ごしていくうちに人間の持つ、醜いものの中にある誰もが持つ尊い何かに感化されたのかもしれない。
彼女はそれからまた数えきれない程の魂を送り出していくが、以前の彼女とは明確に変化していた事があった。
それは「会話」だ。
彼女は人間という存在に惹かれ、興味を持ちいつの間にか彼らと直接会話をするようになっていたのだ。彼らの生い立ちや、何を感じて何を思って生きてきたのか。それを彼女は必ず聞き、共感を得るようになったり不思議に思った事は彼らに包み隠さず聞くようにした。勿論彼女は彼らが何をして何の為に生を終えたのかを把握している。
だがしかし、上から見る景色と彼ら自身の見てきた景色とでは情報量も違う。何よりその行動の動機を知ることが出来るものである。だから彼女はその魂と、心と向き合うようになった。
時に励まし、時に泣いたり、時に怒り、時に笑い__彼女は人間と通じ合う事によって、成長する事ができた。
何よりも人に寄り添い、何よりも彼らを理解する努力をする。そうして彼らを解し、魂を送り出す事が彼女のやるべき事なのだと彼女は学んだ。



故に、今回起きた事全てが彼女にとってはイレギュラーだったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

令嬢失格な私なので

あんど もあ
ファンタジー
貴族の令息令嬢が学ぶ王都学園。 そこのカースト最下位と思われている寮生の中でも、最も令嬢らしからぬディアナ。 しかしその正体は……。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

遊鷹太
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...