ダークサイド勇者はもはや勇者なのか?

甘栗

文字の大きさ
17 / 48
6章 冥界の三人の……ごめん、名前忘れた。

冥界への道のり

しおりを挟む
~前回までのあらすじ~
なんか気が付いたら、異世界にいた。
なんか、ダーク勇者になった。
なんか、仲間が増えた。
なんか、カジノ行った。




何百年も前の星の光が空にチカチカと光っていた夜、私達は冥界に向かうため、(仮)ハウスを出発した。

木が生い茂った森の中からは、「ほぉ……ほぉ……」とフクロウの声が聞こえた。

「やけに、モンスターの気配がしませんね……いつもなら、少しはするはずなんですが……」
闇の商人がポリポリと頭を掻きながら言った。

「いや、モンスターだけじゃない……猪や
熊の気配もしないぞ……」
「ふむ……これが"嵐の前の静寂"というやつか……」
「んー……多分、この森のどこかに、"オリュンポス十二神"の誰かが居るからだと思うよー」
「マジか」
私達は、他愛もない話をした。




それから三時間後……
私達は、森を抜け、山岳地帯に来た。

「ここを越えて、川を渡れば、"冥界"
に着きます……着くんですが……」
闇の商人は言い淀んだ。

「その"川"が、色々ありまして……
舟で川に入ると、面倒なことになります……そこで、私は考えました。
"魔法の絨毯"を使って、迂回ルートで、"冥界"に侵入すればいいんじゃないかと……皆さん、分かりました?」
闇の商人が尋ねてきた。

「ああ、分かったぞよ」
「うん、了解~」
「大体分かった」
「どうでもいいけどマカロン食べたい」
「勇者……はぁ……」
なぜか私だけ、溜息をつかれた。
なぜに?なにゆえに?




「今日の晩御飯なにかな~ふっふふーん!」
「秋刀魚の塩焼きです」
「えーヘスティアは魚嫌いー」
「勇者も嫌いー」
「貴方達、片方居るだけでも厄介なのに、
二人いたら三倍厄介ですね」
「ぶーぶー!厄介じゃないもーん!」
「同意ー同意ー!」
「もう……いいです……はぁ」
闇の商人は、今日二百回目の溜息をついた。

まぁ、そんな感じでとりとめのない話をしていると、目の前に山賊が現れた。

その山賊は、右手に短剣を持っており、頭に緑色の古びたバンダナを着けており、左目にキズがあり、鋭い目が一番の特徴の、髭が生えたオッサンだった。

「お前ら……金を出……ドファ!……つ、強い」
私とヘスティアは、力を合わせて山賊を殴った。

「今日の晩御飯を狙う、悪い輩は」
「俺達、"晩御飯食べたいズ"が」
「成敗してやる!」
最後のセリフだけ、二人同時に言った。

「おのれぇぇぇ!貴様らなんぞ、この妖短剣マサムネで……ってあれ?マサムネがない!?」
山賊が手に持っていた短剣をオロオロとしながら探す。

「ありがとー!山賊さん!この短剣貰うね!勇者ちゃんが欲しいらしいから!」
「ありがとう!ヘスティア!よーし!行くぞぉ!」

私は、精神統一をした。
「3……2……1…………はぁぁぁぁ!"ヘスティア・ディナー斬り"!」

短剣に"深淵の闇"を纏わせて、山賊の"存在を切った"。

すると、山賊は消えた。
"消滅"したわけではなく、ただ、ただ、消えた。

「どや!夜な夜な練習した剣技は!」

仲間が全員(ヘスティア以外)唖然としていた。

「ありえない」
「ありえない」
「ありえない」
三人は声を揃えて言った。

そしてヘスティアは……というと、
「やったね!勇者ちゃん!いやぁ……私も
眠りながら、教えたかいがあったよ!」
「うん!ありがとう、ヘスティア!」
とパチンとハイタッチしてくれた。

山岳地帯には、ただ、ただ、二人の嬉しそうな声だけが響いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...